これは、ひとりでは眠れない夜を知っている少女の物語。
少しも特別なことではないと思いますわ。
握った手の温もりに、それが恋だと気づいても。
叶わぬ願いと知っていても、どうしても諦めることができなかった。
そんな初恋のお話なのですもの。
もしも熱い恋だったなら、いつか冷めたのかもしれませんね。
でも、あたり前にあった温もりだったのですもの。
穏やかな思いほど、失い難いものでしょう?
結末をお知りになりたいの?
困りましたわ。
わたくし、あからさまな言葉は苦手でしてよ。
そうですわね。
クッションを抱くときの感触。
薔薇が美しく咲き続ける理由。
この事柄を、お考えになって?
でも言葉には、なさらないで?
内緒だから、変わらずにいられることもありましてよ。
まだ、おわかりになりませんの?
では、このお話をご覧になってはいかがかしら?
なにも難しくはありませんのよ。
だって、誰にも覚えがある初恋のお話なのですもの。
おそらく自分の体験した「恋」の話を発表し合う……という会での話なのでしょうな。
そしてここはおそらく、
主人公の家です。
主人公も、自分の体験した恋の話をするわけですが……
なんでも使用人の孫で、その方のことを「お兄さん」と呼んで親しんでいたそうで、
子供の頃、不安で寝付けないでいると、
主人公が眠るまで「お兄さん」は手を繋いでくれていたのだとか。
それが、主人公が体験した恋でした。
しかし、初恋というものは往々にして実らないものが世の常でございます。
お兄さんは別の方と結婚が決まりました。
もう、ここから先、言えることがありません。
読んでください。
なんでしょうな。
江戸川乱歩的……なのでしょうか?
初恋が実らないなら、初恋を咲かせちまえという……まあ、
この会場に居た人全員の安全を祈るとしか言えませんな……。
ショッキングではありますが、グロな表現はありません。
(ないから逆に、というのはありますが……)
ご一読を。
わたくしは、今日はご友人の皆さんと恋のお話をする集まりを開きました。
次々と秘めた恋物語を打ち明け、とうとうわたくしの番になりました。
わたくしは夜眠る時に怖くなる時がありました。でもお兄さまの手で握ってもらうと、すぐに眠りに落ちることができたのです――。
作者さまの筆致と相まって、優美なお嬢様たちの情景が目に浮かぶようでした。詳細な説明はないのに、目に鮮やかに浮かぶようなのです。
そこがもう凄いと思いました。
切ない片想い。身分違いの恋。
使用人の孫であるお兄さまと、お嬢様であるわたくしの縁は絡まる運命にはありませんでした。
けれど。
お兄さまの自分より太く逞しい手が、わたくしにとっては、何よりも安心できるものだったのです。
切なく幼い恋心は、やがてある想いを孕みます。
この先はご自身の目でお確かめ下さい。
耽美で優雅。
けれど、きっと誰よりも純真で真っすぐな愛をご一読下さいませ。
きっと、わたくしの虜になっているはずです。
オススメです…! ぜひ…!!