第1話 自分が幽霊かわからない?地獄
「ただいまー。いやあ、10年ぶりの島は変わらないなあ」
俺、秋月蓮(24歳)は、軽い足取りで実家の敷居を跨いだ。
10年前、事故で意識を失い、本土の病院でずっと眠っていた――はずの俺だ。
だが、出迎えた母親は、俺の顔を見るなり
「ヒッ……!」
と短い悲鳴を上げて白目を剥いた。
「母さん? そんなに感動しなくても……」
「幽霊……! 蓮の幽霊が出たあああ! 湊! 湊を呼んで! 塩! 伯方の塩持ってきてえええ!」
駆けつけた親友の湊は、相変わらずの筋肉ダルマだったが、俺を見るなり号泣しながらプロテインの粉末を撒き散らした。
「蓮……! お前、成仏してねえのか! 10年前、俺が泣きながらお前の墓にぶち込んだエロ本、まだ根に持ってるのか!?」
「何の話だよ! 墓ってなんだよ! 俺は生きてるって!」
騒ぎを聞きつけた袖が、境内の奥から現れる。
10年前の可憐な面影はどこへいったのか知らんが、手には血のついた獲物(イノシシ)を握りしめている。
彼女は俺の胸ぐらを掴み、鼻先が触れそうな距離で睨みつけた。
「……アンタ、誰?」
「誰って、蓮だよ。幼馴染の……」
「嘘ね。蓮くんは10年前、私の目の前で死んだわ。あの日、海から上がったのは、アンタの片方の靴だけだったもの。……アンタ、蓮くんの皮を被った『何か』でしょ?」
袖の瞳は、狂おしいほどの愛と、それを否定しようとする絶望で濡れていた。
俺は、自分のポケットを探る。そこには、病院の退院許可証があるはずだった。
だが、取り出したのは――10年前に発行された、古びた「死亡診断書」だった。
100年後の君へ贈る、忘却の処方箋。〜死んだ僕を人間にするために、君は世界を人質に取った〜 するめ まる @y89356288
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