誇張しすぎた異世界転生

宴懐石(旧:本懐明石)

やったろやないかい! ええやんええやん!

 金玉のシワで迷路遊びしとったら五十万台のトラックに轢かれましたわ! 終わったな。


 僕の名前は針人はりうど・ザ・子牛。ミドルネームなんて入ってやがんの。巷では初恋泥棒だとか、単に泥棒だとか呼ばれている。物を盗んだりするからだな。


 その天誅ということらしい。視界いっぱいに迫る金属の塊。次に僕が目を覚ました時には、僕は雲の上の世界にいた。


「お前が針人か。私は神だ」

「俺も神だ」

「拙者も神でやんす」

「あなたト〇ロっていうのね!」

「ジム行く?」

「豆腐ハンバーグ豆腐抜きで」

「私はマジで何も知らないわよ。マジで何も知らないだけ」

「婆さん飯は、……ああ、そうか。婆さんはもう…………」


 色んな話し声が四方八方からめちゃくちゃ聞こえてくる。というのも、雲の上には神様みたいな感じの人が八十三億人くらい犇めき合っていて、それぞれが一斉に喋るものだからぶっちゃけ何も聞こえない。空気読めって思う。マジで。


 で、二千時間くらいぶっ通しで話を聞いていると、どうやら僕をどこかの世界に転生させると同時に、二千三十四兆個のスキルまでくれるという話であるらしいことが分かったのだけど、


「一つもいらねえよ。逆にな」


 と突っぱねてやった。これには八百万の神々も「逆張りオタクキモ過ぎて草」と口々に罵倒せざるを得ず、僕はあまりの悔しさに号泣してしまった。失禁もした。流れる体液が足元の雲を溶かし、僕は下界に墜落した。


 それから色々あって、僕はとある国の王城に呼び出され、国王じきじきにこう告げられた。


「お前をこの国から追放する」と。


「なんでやねん!」僕は大声で呟いた。まあまあのボリュームである。


「僕は何もしてへんやろが! なんで追放されなあかんねん!」

「何もしてないからだろ。何が初恋泥棒だバカバカしい。スキルの一つも持ってないくせに…………」


 王は曲がりなりにも転生者である僕に対して失望しきっており、同時に失禁もしていた。正直、嫌な臭いである。いくら王といえど…………。


 このようにして僕は国を追放された。そこで待ち構えていたのは魔王の軍勢だった。


 というのも、国を追い出されて心に傷を負っていた僕は、気分転換がてら丘の上でピクニックでもしようとサンドイッチ片手にぶらついていたのだが、どこもかしこもブルーシートが広げられており、「どこでピクニックすればええねん」と適当なブルーシートを蹴飛ばしたところ、その一帯は魔王軍が場所取りをしていたという塩梅だった。知らねーよそんなもん。マナーってもんがあるよな。


 僕はもう、ボロ雑巾みたいにされてしまった(牛乳をかけられて床を拭くのに使われるなど)。そんな時だった。


「お前ら全員死ね!」


 怒号と共にどこからか放たれた超弩級の火炎魔法が、地上を余すことなく燃やし尽くした。見渡す限りの地平線。生物らしき生物は皆無の、死の星となり果ててしまった。


「立てるか?」


 既に直立している僕に対し、手を差し伸ばしてくる女。

 顔が良く、胸が大きく、背はボチボチで全裸であった。


「なぜすべてを燃やし尽くした。こんなの横暴だ」


 僕は女と握手を交わしつつ問い質す。視線は両の乳房にのみ注がれていた。


「失礼だな。純愛だよ」


 そう、僕は初恋泥棒である。

 この、素性の分からない最強の女に見初められ、長い夜が始まった。具体的には六十八年と四カ月二十日七時間二十九分ほどである。


 僕たち二人を始祖とする人間社会が徐々に形成されつつある。文明らしきものが確立されるのも時間の問題だろう。


 だからこれは序章に過ぎないのだ。これから始まる人類賛歌の第一頁。


「言うなれば、……針人はりうど・ザ・子牛章、といったところか」


 終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり終わり!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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