火の出所

白川津 中々

◾️

「家が火事で面接に遅れます!」


 そんなわけあるかと呟く昼下がり。待ちぼうけにて茶を啜りながらテレビを観る。言い訳にしてももっと色々あるだろうと思いながらも「お気をつけていらしてください」と返答してしまうあたり、私も人が良過ぎる気がする。まぁ、落選確定だが……


「お世話になります! 本日13時から面接の予定を入れていただいておりました、所沢から参りましたタナカでございますぅ!」


 勢いよく開くドア。どうやらご来場いただけたようだが礼節もなにもない。こりゃいよいよ落選だなと思った矢先、飛び込んできたタナカと名乗る男の姿に絶句。焼け切れた服と焦げついた肌。そして昭和のコントでしか見た事のない、アフロのようになった髪の毛。マジィ?

という感想が思わず口から出そうなる。


「すみませんすみません! 火事で! 火事で遅れてしまいました!」


「……帰った方がよろしいかと」


「申し訳ございません申し訳ございません! なんとか……なんとか面接を……!」


「いや、病院とか行った方が……」


「大丈夫です大丈夫です! お願いです! 受けさせてください! こちらの弁護士務所で働く事が夢なんです! 法科大学出て司法試験にも合格してます!」


「落ち着いてください。なんでうちの事務所がいいんですか?」


「いや、こちら主に離婚裁判や調停なんかを引き受けていらっしゃるじゃないですか」


「はい」


「家裁(火災)に縁があるなと思い」


「帰れ」


「冗談です冗談です! 働かせて……働かせてくださいよ!」


「面接で冗談いうんじゃないよ! だいたい……」


 言葉を続けようとした瞬間、付けっぱなしのテレビから流れるニュースが目に入った。


「所沢市で放火。犯人逃走中」


 テロップと同時に犯人と思われる人間の似顔絵が公開されている。その顔は……!


「君……これ……このニュース……」


「あ、早いな報道されんの」


 タナカが、ニヤつきながらこちらを見る。


「これがホントの、法科(放火)出身という事で」


 色々な意味で、笑えなかった。

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