『天騎士』は雲が如く

水城みつは

『天騎士』は雲が如く

 『天騎士フォレキャスター』、そう呼ばれるAランク探索者シーカー

 天を駆け、先を読み、広い迷宮フィールドの先頭に立つ。


 誰もが知るトップ探索者シーカーにも不遇の時代が有ったと云う。


「僕の転機は二回、ああ、三回ありました。まあ、大きかったのは初めの二回ですかね」


 トップクランを率いる彼はにこやかにインタビューに答えてくれた。


「最初の転機は『役職ロール』が発現し、ステータスを得たときです。まあ、これは全ての探索者シーカーがそうなんじゃないかと思いますが――」


 この世界には迷宮ダンジョンが溢れている。

 フィクション小説を現実化したように、ダンジョンの中には怪物モンスターが生息している。

 そのモンスターを倒し、ダンジョン内の資源を持ち帰る人々の事を探索者シーカーと呼ぶ。

 そして、探索者シーカーと呼ばれるには『役職ロール』が発現し、モンスターに対抗する力を得る必要があった。


「――ただね、僕が取得した『役職ロール』は所謂ハズレ役職ロールだったんですよ」


 『役職ロール』には『制約ルール』がある。

 更に『役職ロール』にはその名の通り求められる役割ロールがあり、従わなかった場合にはデメリットが発生するのだ。

 

 例えば一般的な『剣士ソードマン』では剣による攻撃力が上がるが、剣以外での攻撃力が下がるような制約ルールが課される。


 通常、ハズレと呼ばれるまでの役割ロールはない。メリットとデメリットはそれなりに釣り合うようになっているからだ。


「僕の役職ロール制約ルールにね、空が無いところではステータスの恩恵を受けられない、みたいなデメリットが有ったんです。つまり、階層があり、迷路となっているダンジョンに潜ってモンスターを倒すにあたって、僕は何ら一般人と変わらず、無力だったんです」


 四半世紀前に突如現れたダンジョンは、まさにゲームで想像される石造りの迷宮で、階層があり、地下へと潜っていくものだった。

 つまりはタンジョンに空はなかった。


「――それでも探索者シーカーにしがみついていた僕に二回目の転機が訪れたのは数年経った頃です」


―― ああ、フィールド型ダンジョンの発見と発生ですか。


 ダンジョン発見当初は迷宮ラビリンス型、遺跡型だけだったが、ダンジョン内部に空があり、平原が広がっているようなフィールド型と呼ばれるダンジョンが発見された。また、時を同じくして迷宮ダンジョン発生スポーンと呼ばれる異界化現象も頻繁に起こるようになった。


「ええ、空のあるダンジョン。僕の役職ロールの独壇場でした。三回目の転機とも言える転職、いや、昇進が出来たのも良かったですね」


―― 『天騎士フォレキャスター』は昇進した役割ロールだったんですね。


「そうです。しかし、何度か言っているんですけど、私の役割ロールは『天騎士フォレキャスター』じゃないんです。格好良い二つ名ではありますけど」


 彼はニヤリと笑って続けた。


「元々の役割ロールは【天気予報士】、迷宮の天気を予測できるだけのハズレ役職ロールでした。そこから昇進して【天気士フォレキャスター】となったわけです。まあ、空気を踏んで空を駆けたり、数瞬先が予測できたりと色々やれることが増えて今があります」


「ああ、これからの探索者シーカーに言いたいことですか? 探索者シーカー役割ロールにハズレ役職ロールなんてない、いつかは晴れる。天気予報士でもある僕が保証しますよ、ってね」


―― ありがとうございました。以上でインタビューは終了させていただきます。


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