何か変な味がする

静かな地方の博物館から始まる物語は、湿度と匂いを伴って進行する。

本作の恐怖は、突然何かが襲ってくる類のものではない。

むしろ、記憶が曖昧になり、確かだったはずの過去が周囲から静かに否定されていく過程そのものが恐ろしい。

飼っていたはずの猫、確かに存在したはずの恋人――それらを覚えていないと言われたときの、足場が崩れる感覚が生々しい。

香炉の描写は特に秀逸で、極彩色の紋様と煙の動きが視覚的に強く印象に残る。

説明しすぎず、意味を一つに固定しないまま、最後まで引き込まれていきます。