おまけ

悟のいなくなった部屋では、毎夜、母親が「児相に悟を取られた」と言って泣いている。


脱ぎ散らかされた服、コンビニの弁当パック、ありとあらゆるものが床に撒き散らされていた。


「あの子がいないと、誰がこの部屋を掃除するのよ!」


そう言って母親は怒鳴る。


呆れたものだな。


「こんなんじゃ、彼氏も家に呼べないじゃないのよ。

あの子さえ奪われなかったら、私は幸せに暮らせていたのに!」


悟は母の為に、今も寂しい思いをしながら頑張って耐えているというのに……。


だんだん腹が立ってきた。

この女は、自分が悪いことをしていたとは一ミリも思っていない。

変わらなければいけないとも、思わないだろう。


ユラユラと怒りが尻尾を割っていき、毛がウニのように逆立ち、身体が何倍にも膨れ上がっていく。


そこにはもう、cuteな三毛猫の姿はない。

禍々しい色をした猫又が、そこに佇んでいた。


スーッと音もなく、窓をすり抜ける。

突っ伏して泣いている女の耳元に、口を寄せる。


「悪い女は……食べてしまおうか……」


地面を這うような声で、そう囁いた。


驚いた悟の母親は、ガバッと顔を上げ、吾輩を一瞥すると、声も出ないまま、そのまま固まってしまった。


「吾輩の好物は、人間の欲だ。

特に、誰かのせいにしながら生きている女は……うまそうだ……」


そう言って、よだれを垂らしてみせる。


ニヤリと笑うと、そのまま姿を消した。


母親は白目を剥くと、そのまま後ろに倒れ、失神してしまった。


(これくらいが、薬になるだろう)


「さてと……らしくないことをしてしまったな。」


そう呟くと、夜の闇に溶けていった。


辺りでは、吾輩の妖力に尻尾を巻いた犬たちの鳴き声だけが、こだましていた。

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吾輩は猫又である 〜子守編〜 八尾 遥 @hachio_haru

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