エピローグ

「くわーっ」


大きな欠伸をする。暑い日なたも、木陰は涼しい。吾輩はお気に入りの昼寝ポイントで惰眠を貪っていた。


悟のその後はソラから聞いている。というより、一方的に話してくるのだ。


どうやら陽向は児相(児童相談所)に連絡し、悟を連れて学校に行ったらしい。児相立会いのもと、担任が悟の身体を確認したところ、虐待の事実が明らかになった。

そのまま緊急措置として悟は児相に保護され、今ではそこから学校に通っているという。


「それにしても、猫又様!

医療の技術を身につけ、人間の少女を救ったというあの伝説の噂が本当だったなんて…!

そして、その伝説の少女に僕が出会うなんて、まるで夢のようです!」


ソラは鼻の穴を倍に広げ、だいぶ興奮した様子で捲し立てた。


「吾輩くらいになれば、そのくらい朝飯前よ。」

と、悪い気はしなかった。


「その少女が悟を救ってくれたなんて、本当に奇跡です。

それとも、奇跡ではなく必然だったのですか?

ま、まさか、ここまで見越してこの地にやってきたとか⁈」


ソラはかなり一人で盛り上がっている。

(このまま放っておいたら、また一つ吾輩の偉大なる噂話が勝手に出来上がっていくのだろうな…)

そう思いつつ、陽向のことを思い出した。


確かに三十年前、陽向に誘拐され、好奇心に駆られてこの家の猫となった。

病気の匂いの正体を突き止めるべく、Yahoo!で調べまくったっけ。

この地に来たのは偶然のこと。ただ、なんとなく乗ったトラックがここに辿り着いただけだ。

そんなある日、懐かしい匂いがした。それが陽向だった。

何となく気づいてもらえるかと、遊び心で昔とそっくりな三毛猫になってみたのだ。


「意外と嬉しいものなのだな…覚えてくれているというのは…」


ほんのりと胸が温かくなった気がした。

まぁ、同じ猫だと思われていたら、完全に化け猫扱いだけどね。


(そうか、陽向は元気で、子供まで産んだのか…)


夏の暑さはまだまだこれからだ。

「そろそろ、涼しいところに行こうかなぁ」

そう、吾輩はそっと呟いた。


吾輩は猫又である。名前は死ぬほどある。知性と数々の武勇伝を持つ猫、そして何より so great なのである。

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