「遺失物窓口×あやかし」という舞台設定が秀逸です

駅という日常の象徴的な場所に、裏木戸という“境界”を置くことで、現実と異界が自然につながっていて、導入からすっと物語に入れました。終電後の静けさや照明、構内放送の音などの描写も映像的で、情景がはっきり浮かびます。

志歩の人物像が特に魅力的です。
「規定」「勤務中」という言葉を盾にしながら、実はとても優しく、責任感が強く、不器用に感情を抱えている。その揺れが、星の欠片のエピソードや海斗とのやり取りで丁寧に描かれていて、胸に沁みました。最後に“勤務中に温かさを認める”という一文が、彼女の小さな変化を静かに示していて印象的です。

昌之もいい存在感でした。軽薄で金にがめついのに、現場対応は的確で、人の心の機微をちゃんと見ている。そのギャップが物語にユーモアと安心感を与えています。深呼吸ポスターの場面は、笑えて、同時に少し泣ける名シーンだと思います。

規定では処理できない感情を、仕事として拾い上げてしまう人の物語
になっていて、タイトル通り「笑って、少し泣ける」読後感でした。