第2話 逃亡

 いつからか、逃げるようになった。その声に、一日ずっと捕らわれているように感じてしまって。

「ねぇ、あの子知らない?」

友達がはぐらかした。「知らない」と。その間、僕は教卓の陰に隠れていた。息を殺して、ちょうど見えない角度で。彼は探し続けていた…と思う。その日の終わりはよく覚えていない。一週間は逃げた。申し訳ないとか考えていたときも、もちろんあったが。精神がとにかくすり減る音がしていた。「話すこと」は僕にとって、ストレスになってしまっていた。その理由は、僕がただ知ったかぶりをしていたから。そう言えるのは、今があるからだ。相手の知らない話に、ついていこうと無理をしたのだ。だから、勝手にキャパオーバーして、勝手に離れていた。__きっと、その時の僕は申し訳ないとあまり思っていなかったと思う。「自分にだけ話しかける彼」が悪い、とイライラしていた。今は、申し訳ないと思っている。__まぁ、多少。

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残らない体温、残る感情。 エニグマ @ENIGMA_5555

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