第4話 明日天気にな~れ

皆さんこんにちは~。

主人公のミツキで~す。


前回の僕は、半ば強制的に就職が決まりました。

「お前もワイらと同じ社畜になるんやでw」

……そんな声が聞こえてきそうですね~。


ちなみに僕、まだ十六歳ですよ?

働くにはちょっと早くないですか?


でも安心してください。

僕には、あのゴリラ女神から授かった“何か”があります。

きっとそれで、華麗に無双できる――はず。


さてさて。

物語、始めていきましょ~~う。


……え?今日の話し方は、いつもよりキモイ?

へっへっへっへっへへへへへ。


──・・・・・・


長い廊下が続き、壁には同じような扉が一定の間隔で並んでいる。

窓の外には、高いビルが立ち並ぶ見慣れない街並みが広がっていた。

外はまだ明るく、時刻は昼前だろう。


ミツキは、目の前を歩く女性――虚月(きょげつ)アノンの、綺麗な金髪をぼんやりと見つめていた。


牢屋から出され、「司令官に挨拶に行く」と言われて付いてきたものの、もうかれこれ数十分は同じような廊下を歩いている気がする。

エレベーターで上階まで上がり、そこから延々とこの長い廊下だ。

そろそろ嫌がらせか、あるいは何かの試練なのではないかと疑い始めた頃、アノンが扉の前で足を止め、「ここよ」と言った。


他の扉とデザインは似ているが、扉に掛けられたネームプレートには「司令室」と書かれていた。

アノンは横目でミツキを見る。


「くれぐれも、失礼のないようにね」

「はい…」


視線を前に戻すとアノンは扉をコンコンコンッと三回ノックし、

「第三部隊隊長、虚月アノンです。例の少年を連れてきました」

と告げる。


すると中から、「どうぞ」と、女性の声が一言返ってきた。


「ここからは、あなた一人で行って」


アノンにそう言われ、ミツキは驚いた。しかし、ここで渋れば首と胴体がお別れする可能性がある。ミツキは大人しくドアノブに手をかけ、扉を開けて中に入った。


部屋に足を踏み入れた瞬間、ミツキは目を見張った。

左右の壁際には天井に届きそうなほど本が積み上げられ、部屋の中央には一本の通路だけが残されている。


少し困惑しながら通路を進んでいくと、部屋の奥に椅子に座る女性の姿があった。


胸元まである茶色の髪。黒いワンピースに身を包み、両手を重ねて膝の上に置いている。


「あ、どうも。こんにちは……」


ミツキはとりあえず挨拶をしながら、女性の前に立った。


「初めまして、異世界からの来訪者。顔をよく見せていただけませんか?」


女性の言葉に、ミツキはわずかに戸惑った。

部屋は十分に明るく、顔どころか、目を凝らせば空中を舞う埃さえ見えそうなほどだった。


「申し訳ありません。視力が弱くて、かなり近づかないとぼんやりとしか見えないんです」


女性の言葉にミツキは納得し、腰を曲げて互いの唇が触れそうなほど顔を近づけた。


「す、すみません……近すぎです……」


そう言われて、ミツキは顔を真っ赤にし、大慌てで距離を取る。

女性の申し訳なさそうな声が、かえって彼の羞恥心を煽った。

このまま消えてしまいたい気分だった。


そんなふうに恥じるミツキをよそに、女性は静かに口を開く。


「私は天衡隊(てんこうたい)のトップ。司令官の、時雨 (しぐれ)スミです」

「甘城 光希(あまぎ みつき)です……」


女性――スミの名乗りに続くように、ミツキも名乗った。


「ミツキ少年、これから苦労する事が沢山あると思います。それでも……頑張ってくださいね」

「え、あ…はい!」


スミの言葉にミツキは返事をした。


──・・・・・・


「おかえり。早かったわね」


司令室から出ると、廊下の窓辺にアノンが立っていた。


「何を言われたの?」


アノンの問いに、ミツキは

「軽く挨拶しただけです」

と答えた。すると、なぜかアノンは少し意外そうな表情を見せた。


「『苦労することもあるけど、頑張ってね』とも言われました」


ミツキがそう付け加えると、アノンは「ふぅん」と短く返し、歩き出した。

慌ててミツキもその後をついて行く。


「次はどこに行くんですか?」

「あなたの体を調べる」

「えっ……え?」


思いがけない答えに、ミツキは戸惑った。

体を調べる――それはいやらしい意味なのか、それとも解剖のようなものなのか。

一瞬そんなことを考えたが、


「……まあ、なんでもいいか」

そう思って、深く考えるのをやめた。



しばらく歩くと、「第三部隊専用客室」と書かれたネームプレートが掛かった部屋に入った。

部屋の中央には長机があり、それを挟むようにいくつかの椅子が並べられている。

手前の椅子には女性が一人座っており、ミツキたちが入室すると、その女性は立ち上がった。


「初めまして、ミツキ少年。私は第三部隊副隊長、千里(せんり)アスカといいます」


黒髪をポニーテールにしており、少しつり目気味の桃色の瞳。黒の軍服に似た服装で、左腕には「第三部隊副隊長」と書いてある腕章をつけている。


「甘城光希(あまぎ みつき)です……」


相手はすでに自分の名前を知っているというのに、思わず名乗ってしまったミツキだった。


「握手をしましょう」


そう言いながら、アスカは片手を差し出した。

ミツキも手を伸ばし、アスカと握手を交わす。


「『日替わり能力』……一日ごとに能力が変わるようですね。今日の能力は、『明日の天気が分かる能力』です」

「え、明日の……えっ?」


アスカの言葉に、ミツキは耳を疑った。


「へぇ、明日の天気は何なの?」

「へ、え、いや、そんなこと言われても……」


アノンは椅子に腰掛けながら気軽に尋ねるが、ミツキは一人、困惑したままだった。


「この世界の人口の九割は能力者です。能力というのは、体内にあるエネルギーを、自身の持つ能力に変換して使うものなんです。私は『触れた相手の能力が分かる能力』です」


アスカはミツキから手を離し、言葉を続ける。


「物は試しです。能力を使ってみてください」

「まず、そのエネルギーをどうやって変化させるんですか?」

「感覚で分かりませんか?」

「全く分かりません」


ミツキの返答に、アスカは諦めたようにアノンを見る。

そもそもミツキは、エネルギーを感じるどころか、こちらの世界に来てから色々あったせいで、疲労感しか感じていなかった。


「じゃあ、『明日の天気はなんだろう?』って考えてみて」

「はい……」


アノンの言う通り、ミツキは目を閉じると「明日の天気はなんだろうか」と考える。

すると頭の中に、太陽のマークが浮かんできた


「あ、あっ、あっ、あ~~~……なんか、太陽のマークが頭の中に浮かんできました」

「それが、あなたの能力よ」

「…………ショボすぎません?」


ミツキはショックを受けた。


異世界転生した主人公に与えられる能力といえば、もっとド派手で、無双できそうなチート能力が定番だろう。


今後、敵と戦うことになったとしても、

天気が分かったところで、どうしろというのか。

明日の天気を知らされたくらいで負ける敵なんて、どこにいる?


「今日は一日その能力だけど、明日は違う能力に変化しているはずよ。明日も今日みたいにつまらない能力だったら、解剖された方が、まだ役に立ちそうね」

「なんで、解剖されるんですか……?」


ミツキの質問に、アノンは冷静に答える。


「異世界人よ?体の中身も私たちと同じなのか、調べてみたくなるじゃない」

「……同じだと思います」


ミツキの答えに、アノンは早口でまくし立てる。


「あなたのいた世界には、能力者がいなかったんでしょう?それなら、エネルギーを何に使っていたのか気になるし、もしかしたら、同じ内臓が入っていたとしても、位置や使用用途が違うかもしれないし、脳の構造も──」

「アノン隊長。少年がドン引きしていますので、そろそろやめた方が……」


アスカが止めに入ると、アノンの狂気じみた熱弁も止まった。


「あ、まぁ…はは。聞かなかった事にしておきます…」


とりあえず、ミツキはそう言っておいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こんな異世界転生は聞いていない! 春野ふみや @Haruhumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ