第3話 面接会場:牢屋

皆さんこんにちは。

主人公のミツキです。


僕は今、牢屋にいます。


「お前ついに痴漢でもしたのかよw」

そう思った人もいるかもしれませんが、違います。


カフェで会った美女から飴を貰い、気を失ってしまいました。

そして、気づいたら牢屋にいました。

皆さんも美女から飴を貰ったら、気をつけてくださいね。

あ、牢屋に入りたい人は別ですよ。


さて。

僕はなぜここにいて、これからどうなるのか。

その答えを探すところから、この物語は始まります。


──・・・・・・


「そ、そうせいかい?」


ミツキは不思議そうに言葉を繰り返した。


「創世会(そうせいかい)。古(いにしえ)の魔女を崇拝する異常者集団。あなたはそこに属しているの?」


鉄格子の前に立つ綺麗な女性が、静かに尋ねた。

この女性から貰った飴を食べた途端、意識を失い、気がついた時には牢屋の中にいたのだ。


ミツキは、聞き慣れない言葉に首を傾げる。


「そ、創世会なんて初めて聞きました。古の魔女を崇拝する集団なんて、噂でも聞いたことがありません」


アイドルや、好きな人物を崇拝する人はいるかもしれないが、魔女を崇拝している集団など聞いた事なんてない。


「そ、そもそも、僕が魔女を崇拝しているなんて証拠がないじゃないですか」


勘違いで、こんな目に遭う覚えはない。

慌てるミツキを見て、女性は少し考え込む。


「……嘘はついていないみたいね。なら、次の質問」


女性は鋭い瞳を向けたまま、そう切り出した。


「あなたは何者?」

「えっ……?」


質問の意味が分からず、ミツキは戸惑う。

そんなミツキの様子を見て、女性は言葉を続けた。


「あなたの着ている制服、見たことのないデザインだし、住んでいる家の住所も調べたけど存在しなかった」

「な、なんで僕の住んでる場所が……?」

「鞄の中に学生手帳があったの。そこに書いてあったわ。学校名も含めて、全部調べたけど該当なし」


確かに、ミツキの鞄の中には学生手帳が入っており、そこには自宅や学校の住所が記されている。


しかし、その住所はこの世界には存在しないと言われた。

ミツキは、現実感のない思いに包まれ、困惑していた。


「それにあなた、最初に会った時はあまり話してくれなかったのに、今はちゃんと会話してくれるのね。こういうの、慣れてるの?」

「ろ、牢屋に入れられることですか……?」

「尋問されることよ。おバカさん」


自分の勘違いに、顔が熱くなる。


「さ、さすがにこんな状況ですし……早く自分の身の潔白を証明したいじゃないですか」

「ここから出たら、どうするの?帰る家はあるの?」

「親に連絡して……」

「あなたのスマホに登録されてた、『お母さん』に連絡してみたけど、繋がらなかったわ」


女性の言葉に、ミツキは何も言えなくなる。


──やっぱり、ここは異世界なのかな……


そんな考えが頭をよぎり、ミツキは静かに覚悟を決めた。


「あ、あの……バカみたいな話なんですけど……」


思い切って、自分の身に起こった出来事を説明することにした。


~~~説明中~~~


「……牛に轢かれて異世界転生?本当にバカみたいな話ね」

「僕も、話していてそう思いました……でも本当なんです……」


言葉にして説明すると、改めてバカみたいな話だ。

学校の帰り道に牛に轢かれて死に、ゴリラ女神に会って異世界転生――。

実際に起こったことなのだが、あまりにも非現実的すぎて、信じてもらえな――


「あなたの話、信じるわ」

「ひょおっ!?」


驚きすぎて、変な声が出た。

女性は一度だけ視線を横に逸らしたが、すぐにミツキへと視線を戻す。


「嘘はついてないみたいだし、別の世界から来たというなら、存在しない住所や、その見たことの無いデザインの制服にも納得がいくわ」

「あ……うすッ」


どうしてもっとまともな返事ができないのか。

我ながら、少し恥ずかしくなる。

でもまさか、信じてもらえるとは思わなかった。


「あ、じゃあ、ここから出してもらえますかね?」


疑いも晴れ、ミツキが何者なのかも分かった。

もはや牢屋に入れられている理由はない。


ミツキは当然のように出られるものと思い、鉄格子へ近づく――


「まだ出さないし、鉄格子から離れて」

「へっ……?」


女性の鋭く冷たい声に、ミツキは驚いて足を止めた。


「聞こえなかった? 鉄格子から離れて、って言ったのよ」

「あっ、はい!」


ミツキは慌てて鉄格子から離れる。

もしかしたら、鉄格子に電流が流れているのかもしれない。

そう思うことにした。


「あの……なんで出してくれないんですかね?」


ミツキは恐る恐る尋ねてみた。


「出たあと、どうするの? 帰る家もないのに」


女性の言葉に、ミツキは少し考えた。


「あ、もしかして、牢屋に住めってことですか?」


考えた末に出した答えが、それだった。


女性からの返答はなく、代わりに心底呆れ返ったような顔を向けられる。

どうやら違うらしい。


ミツキは、もう一度考えてみた。


「……ちょっと、分からないです」


よく考えてみたが、やはり何も分からなかった。

そんなミツキを見て、女性はため息をつく。


「今の状態で外に出てフラフラしていたら、創生会に捕まって、人体実験されるだけよ。それがお望みなら、止めないけど」

「お望みじゃないです!お望みじゃないです!」


ミツキは首を、扇風機の首振り以上の速さで左右に振りながら言った。


「創生会じゃなくても、あなたのその目は、くり抜けば闇市で高く売れるでしょうから、狙われる可能性もある」

「くり抜く必要あります?」


拉致して、そのままオークションに出した方が、価値がありそうな気がした。


「えっと……じゃあ、僕はどうすればいいんですかね?」


外に出ても帰る場所はなく、危険な目に遭う可能性も高い。

かといって牢屋に住む、という選択肢も違うようだ。

元の世界に戻る方法は分からないし、そもそも死んでこちらの世界に来ている以上、戻れるのかどうかも不明だ。


「二つ、選択肢をあげる。一つ目は、私の実験体として解剖される」


ミツキの疑問に、女性は指を一本立てて答えた。

そして二本目の指を立て、続ける。


「二つ目は、うちの組織で働く」


その言葉を聞いて、ミツキは思った。


──どちらを選んでも地獄だな。


だが、解剖されるのだけは御免だった。


「は、働かせてください……」


こうしてミツキは、消去法でこちらの選択肢を選ぶことになった。

ミツキの選択肢を聞いた女性は、どこか嬉しそうに笑いながら「よろしい」と言い、服のポケットから鍵を取り出した。


「能力者の集まりの組織、天衡隊(てんこうたい)へようこそ」


そう言いながら、女性は牢屋の鍵を開ける。


この選択肢が正しかったのかどうかなんて、今の僕にわかるはずがなかった……。

まあ、解剖されるよりはマシだけど。

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