第三章:あの日、止まった時計

 日を重ね、中学校の卒業式の日―。


 私たちは『高校生になったら付き合おう』と約束していた。つむぐと一緒に登校するはずだったが、「お揃いのネックレスを忘れたから」と、一人で家へ引き返した。


「私もついていく!」かえでは強く叫んだが、紡はニコッと笑って叫び返した。

「今日は寒いから、先に行ってて!すぐ追いつくから!」


 それが、紡の最後の言葉になった。忘れ物を取りに走った曲がり角。彼は飛び出してきた自転車を避け、車道へ――。



 卒業式はお葬式に変わった。私の時間は、あの日、あの場所で粉々に砕け散った。それからの二十年、私はただ"生存"していただけだった。空を見上げても、明けない夜の中にいるような心地。どれほど願っても、過去は捻じ曲げられない。


 時間だけが過ぎていき、気がつけば三十五歳。私は、もうボロボロだった。

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