第2話 妖と噂
学校が終わった僕は一度家に帰ることにした。
ガチャ
ドアの取手に手を掛け、重たい扉を開けた。
「ただいまー」
「おかえりー」
「おかえり」
俺がそう言うと、そう返事が帰った来た。
靴を脱ぎ、リビングに入る。
「入学式、どうだった?」
母がそう聞く。
「んー、まぁ、楽しかったよ」
予想外の返しだったのか、母親が目を見開いて言った。
「え?嘘!普通だった、とか言うと思ってた」まぁ、そうだろう。
「ニャー!」
家猫のねりねが鳴く。
もうだいぶ歳をとったのか、最近はあまり走り回らなくなった。
「俺もそう思ってたんだけどね」
俺はネリネをなでながら晴のことを思い浮かべながらそう言った。
「ほっほっほ」
「これはこれは、なんていい笑顔を」
声が低く、低い場所からそう聞こえてくる。
「あ、家守さん(けがみ)」
俺の目線の先には、手に乗るほどの背丈しかない老人がいた。
「入学、おめでとうございます、獅音殿、」
そう言いながら微笑むこの人は、人間では無く、妖だ。
この地区では、妖が人間の家に、人間が妖の家にいることもある。
この妖はといい、家守といい、家族や家を、災いを守ると言われている。
家守さんは、僕が生まれるずっと昔から、この海鏡地区に住んでいたらしい。
昔は共存地区では無く、結界のようなもので妖と人間は隔てられていたらしい。
そんな僕たちが知らないようなことを知っている家守さんは、もう250歳ほどになるらしい。
「ありがとう、家守さん」
「ほっほっほ!若者はいいな」
そう言いながら壁に溶け込み、どこかへ行ってしまった。
寝転がっていたネリネも、猫用の扉でどこかへ行ってしまった。
「家守さん、俺のこと見ててくれたんだな。」
俺はそう言った。
「まぁ、獅音は知らないか。」
親父が口を開く。
「獅音って名前、家守さんがつけたんだぞ」
「え?まじで?」
「まじ」
「まじよ」
親父と母が、口を揃えて言った。
「なんか、意外だったな、」
俺は言った。
「んー、俺達も名前つけたかったんだけど、」
「ねー」
親父と母が目を合わせながらそう話した。
(なるほどね)
不器用なこの二人は、多分ネーミングセンスがなかったのだろう。
「んー、でも、この名前結構気に入っててさ」
俺は心の底から思ったことを言った。
「俺もね」
「私も」
俺たちはそう話しあったあと、晴の店に向かった。
晴が送ってきた店のマップをみながらやってきた俺は店の扉を開けた。
チリンチリン
扉にかかっていた鈴のようなものが鳴り、店主の熱い声が俺を向かい入れてくれた。
「いらっしゃい!」
「何名様で?」
「えっと、猿川晴って人と、」
僕がそう言った瞬間、店主の目が開いて細くなった。
「んー、、、」
ジロジロ俺の体をみつめる。
「あんた、獅音って名前か?」
細い目のままそう言った店主。
「あ、はい、」
(え、え?な、なんだ?)
そう思っているのもつかの間。
「おーー!あんたがあの獅音君か?」
「、、、え?」
店主が急に声を出しそう言った。
その瞬間、店内にいた妖達や人達が俺の方を見て呟き始めた。
「あれが晴の、」
「ふーん、、」
「ちょっとイケメン、」
(ちょっとかよ)
(って、え?なに?俺噂されてんの?)
「晴は2階にいるよ!注文は受け取ってるから、ちょっと待っててな」
奥の階段を指差し、笑顔でそう言った。
(んー、メニュー見たかったんだけどな、)
(まぁ、この人に合わせればいっか)
「はい、ありがとうございます」
まだ聞きたいことはあったが、人や妖が多く、忙しそうだったため、俺は二階に行った。
急で一人しか通れなさそうな階段を登った先には、少し驚いた。
2階から見える窓の外には、広く太陽の光が反射している海が見え、人がいなかったのだ。
「あ、獅音ー、」
呼ばれた方向を向くと、獅音がテーブルに座っていた。
「お、晴」
「なんかこの店いいな」
そういうと晴は目を輝かせて言った。
「いやそうなんだよー!こっから見える海もそうだけど、この店は料理が一番うまいんだよ!」
「うん、食べたことないけど、もう腹やばい」
俺は笑いながらそう言った。
2階からでも伝わる中華料理の匂い。
香辛料やニンニク、何かをやく音までが、俺の腹を刺激していた。
「にしてもなんでここだけ人いないの?」
俺は疑問になったことを聞いた。
「ん?あー、俺も断ったんだけど、」
「何断ったの?」
「今日入学式ってこと、俺の親がこうさんに言っちゃっててさ、」
(こうさん?)
「こうさんって?」
「あ、ここの店長やってる人だよ」
「あの、いらっしゃいの声大きい人。」
(あー、あの人か)
「あの人か」
俺は晴の言葉をすぐに理解した。
「そうそう」
「で、今日食べる店ここにしたんだけど、」
「ん?今日高校で出来た友達とここでご飯食べていい?」
晴はこうさんにお願いしたらしい。
「いいにきまってんだろー」
て言う感じで承諾されて、
「ついでに二階貸切にしといてやるよ」
ついでに貸切にしてもらって、
「え?いやそんなこ、、」
遠慮したけど、
「遠慮なんかすんなよー」
「晴の大事な友達なんだろ?」
断られたらしい
「めちゃくちゃいい人だな、」
俺は感心しながら言った。
「でしょ」
そう言いながら親指を立てる晴。
そして俺はさっきの噂?のようなことを思い出した。
「ていうか、話変えるけどさ、」
「うん」
「俺って、なんの噂されてんの?」
「ん?噂?」
「いや、さっきこうさんなんか俺のこと知ってるみたいだったし、」
「あー!そういうことか」
何かを思い出したかのように言った晴。
「高校で出来た初めての友達が、バスケ部に入るんだよーって話だと思う」
「ふーん、」
「、、、」
「、、、」
「え?」
「ん?」
俺は思ってもいなかった。
あの最後の試合以来、バスケに触れてなかった自分が、またバスケをやるかもしれない。
そう思った瞬間、少しだけ心が揺れた気がした。
隠世の先からの贈り物 クリトクらげ @kuragetoneko
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