第4話 冬のお泊まり

自分の部屋を見渡して、私はふう、と息をつく。


あとはお布団の準備もしなくては、と私は午前中のうちにベランダに干していた布団を部屋に戻す。

よく晴れていたのでふかふかな仕上がりになった。


今日は心花ちゃんが私のお家にお泊まりにくる日だ。

汚い部屋に迎え入れることは断じて許されない。


お菓子も飲み物も用意したし、テーブルもオッケー……掃除もしたし、あとは心花ちゃんを待つだけだ。


心花ちゃんを待つ間、スマホをいじってみたりちょっと物の位置を変えてみたりしてみたけれど、そわそわがおさまらない。

彼女を家に、しかも自分の部屋に招くのはこれが初めてだし、しかも初がお泊まりだ。

落ち着いていられるはずがなかった。


「お迎え行こうかな」


部屋の中をぐるぐる何周かしたあと、私はスマホ片手に家を出る。


家でじっと待っているよりこっちから会いにいった方がそわそわが減る、はず。


17時をまわった頃に私の家の最寄り駅に着く予定だと昨日の夜メッセージがあったので、その時間に間に合うように私は足を早める。

早めに駅についても、どうせまたそわそわしてしまう気がしたので、スマホで時間を確認しながら歩く速度を調節した。


ちょうど駅が見えるところに私が来たとき、電車から降りてくる心花ちゃんが見えた。

遠目でもあの輝きは見間違えない。


「心花ちゃん」


改札から出てくる彼女に声をかける。

ラフな格好なのに妙に様になっている。


「燕ちゃん!迎えに来てくれたの?」

「家で待ってるの落ち着かなくて。荷物持つよ」


私は自然に心花ちゃんの荷物を受け取る。

もっとたくさん持ってくると思っていたのに、実際の量は想像よりも少なかった。


「楽しみだなぁ燕ちゃんのお家」

「至って普通の家だよ?」

「燕ちゃんのお家だから楽しみなの!」


そう言われてしまえばなにも言い返せない。

私だって心花ちゃんのお家に行くのは楽しみだしドキドキする。


「お泊まり、緊張するね」

「心花ちゃんも?」


まさかこの子も私と同じく緊張していたなんて。


「好きな子のお家でお泊まりだよ?緊張しちゃうよ」

「ふふ」


意外な一面につい微笑う。

最近、心花ちゃんも私と同じ、女の子なんだなぁと実感する。

付き合う前は心花ちゃんのこと、完璧最強美少女だと思っていたけれど、それだけではなかった。

私が好きって言うと照れたような素振りをするし、今日だってこうして緊張してくれる、可愛い女の子。


だからだろうか。

前よりもずっと心花ちゃんと話せるようになった気がする。




***




「燕ー!心花ちゃんと一緒にお風呂入ってきちゃいなさーい!」


階段下からお母さんの声。


「ひ、ひとりずつ入るからっ!」


2階の部屋から叫ぶ。


心花ちゃんと一緒にお風呂?無理すぎるよ水着越しで精一杯なんだから!!

お母さんってば、初めて心花ちゃんに会うのにいきなりハグするし、いつの間にか買っていた高級ケーキをご馳走するし!

私との馴れ初めなんて聞いちゃうし!

心花ちゃんも心花ちゃんで楽しそうに話すから止められなくて、今日の夜ご飯は赤面しっぱなしだった。


「私は一緒にお風呂でもいいんだけどなー?」

「狭いからだめっ」

「え〜」


不満げな心花ちゃんをお風呂場まで連行する。

脱衣所に着くなり服を脱ぎ始めたので私は慌てて外へ出る。


「ばか!!」


危うく見えてしまうところだった。


「燕ちゃんってば恥ずかしがり屋なんだから〜」


中からそんな声がする。


「一緒に入れるわけないよ……」


扉の外にしゃがみ込みながら小さく呟く。

一緒に入りでもしたら、我慢なんてできそうになかった。




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大好きなあの子は世界で1番可愛いの! 十坂すい @10s_akaSui

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