第2話

 なろうみたいにまえがき欄がないので今後ここで少し前説を挟ませてもらいます(強制)。何処ぞのよくわからん男の話なんざ要らないという方は区切りまで飛ばしてもらっても構いません。


 ラノベを読む経験も少なければ書いたことなんてもっと無いわけですから、ラノベ系の作風がいまいち掴めずにいます。執筆面においても個人的な日記や大学のレポートや論文ぐらいでしか筆を執らないので、もしかしたら文法的に不自然な箇所があるかもしれませんがそういうときはお教えいただけると助かります。

 少々長くなりましたが、要するにお手柔らかによろしくお願いします、ということです。それでは…



………………………………



 ドアをノックする音が聞こえた。間髪入れずドアが開かれる。ノックの意味などもはや無い。


「ただいま」

「おかえり」


 相棒の手にはラベルの無い瓶。中には透明な液体が瓶の半分ほど入っている。

 エルフのムーンシャイン。密造酒という意味ではない。そもそもエルフの村はどこも排他的で国に属さないために法律も食料供給も全てスタンドアローンなのだ。

 この酒はエルフの伝統的な方法で作られた、月明かりの下で作られた秘酒。村の外に持ち出されることなんてめったに無いわけだから、エルフ以外の人間が口をつけることなんてもっと無い。奇跡的に市場に出たとしても小国なら傾くレベルの価格でやり取りされる。そんな貴重な酒を俺は気兼ねなく飲める立場にいた。


「また、村から1本送られてきてさ」

「そりゃ有難い限りだな」


 俺はただの人族だ。それも冒険者とかいう荒くれ者の一人。普通ならそんな酒を飲ませてもらえるタイプの人間じゃない。

 俺が心のなかで感謝していると相棒が口を開く。


「…夢を見たんだ」

「…それは、どういう?」


 ユリアの見せる辛そうな顔を見て、心配が声色に乗る。ついでもらった酒に口をつけ、唇を湿らす。果物由来のほんのり甘い味の後にアルコール感が通り抜け、緊張と共に体に熱が灯りだすのを感じる。


「君がパーティを抜ける夢だ」


 おいおい、嘘だろ。正夢ってやつか。

 正夢は口に出したら実現されないとかいう迷信もあるが、現に離脱を告げにくい雰囲気になってしまった。どうしたものか。


「どうして、その話を?」

「不安になったからじゃあ理由は足りないかな?」

「……」



 ユリアは話を続ける。


「これは君に言ってなかった権能だが、ハイエルフには予知夢のようなものを見ることがある。自分じゃ自覚するのも、意図して発動するのも無理だから普通の夢と区別つかないんだけどね。僕が昨日見た夢はただの夢だったかもしれないし、予知夢だったかもしれない。どっちだろう?」


 俺はこういう場合、堂々と本当のことを言うのが正解だと知っている。


「後者だろうな」

「ッ…そうか」


 ユリアは少しの間、口を噤む。自分の頭の中から必死に心当たりを探すかのように。


「理由を聞いてもいいかい?」

「…大した理由じゃないし、ユリアや他のメンバーが悪いわけじゃない。ただ…一人になる時間がほしいだけだ」


 自分の口からはこれまで心のなかで反芻していた建前とは別の、本当の理由がでた。他所に行ったらモテるだなんて可能性はごく僅かに過ぎないことぐらい分かっていたんだ。

 今後このままだと、遅かれ早かれ独身隠居生活が待っている。老い先長く、村に帰りさえすれば崇め奉られるハイエルフには分からない感覚かもしれないが、戦後うつ病とPTSDになってクワイエットルームに放り込まれた俺が当時の精神病棟で聞いた限りだと、こういう稼業で独身の手合いはロクな生活は送れていない。今のうちに一人でいることに慣れておくだけでも幾分か楽だろう。

 

「…ちなみにどこに行くつもりだい?」

「あまり強く決めてなかった。とりあえず海でバカンスができる地方にでも行こうと思っていた」

「そ、そうだ。休暇がてら皆でどこか行くのはどうだい? 我々パーティとしてもかなり金銭面では余裕がある。少し冒険者稼業から距離をおいてさ」


 別に向こうでも活動自体は続けようと思ってたしなぁ…俺がユリアとプライベートをともにしてると無条件についてくるハーレムの女性陣から煙たがられるし、ユリアも女性陣に掛かりっきりのときは俺も一人で暇を持て余すことになるし。


「うーん。あまりおまえの彼女たちを悪く言いたくないんだが、彼女らは俺を煙たがってるからあたりも強いし、よく使いっ走りにされるし、一緒にいて心休まる気がしないんだよな」

「じゃ、じゃあ、僕ら二人だけでも」


 なんで男二人でいかなきゃならんのだ。彼女らも冒険者としては実力派だから稀有な存在であるハイエルフのボディガードとして一躍買っていたのに、離れてしまっては俺が一人でこいつを守らねばならなくなるではないか。なにより、彼女らは否応なしについてくるだろう。そこに我々の意志は無い。


「悪いが俺は一人で行きたい。もちろんユリアに非があるわけじゃない。ただ、羨ましくなるからさ…お前が。」

「う、羨ましい? 僕が?」


 驚きを見せるユリア。いつもの自信満々な振る舞いが嘘みたいに驚く。やはり根は謙虚で良いやつなんだよ、コイツは。


「そうだとも。お前は俺に無いものを持っている。」

「それは…派手で強力な魔法? 研ぎ澄まされた弓の腕前? エルフの中でも秀でて美しい容姿?」


 自分でそれをいう胆力をそこに加えろ。


「そこじゃない。俺が云っているのは…ハーレムだ」

「は?」

「羨ましいんだよ! 毎日違う女を連れてきて、挙句、全員パーティ加入。俺にユリアがついてくると連中も必ずついてくるしな!」


 ちょっとキレてる雰囲気を出す。そもそもこんなみみっちいことでキレるタマでは無いのだが、説得を優位に進めるには必要なことだ。決してストレス発散しようとしているわけではない


「そ、それは僕の勝手だろう? 君もちゃんと努力したらどうなんだい?」

「もちろん努力するとも、努力が実るものにするためにお前みたいな邪魔なイケメンを引き剥がすとこから始めてんだよ」

「ッ…そうかい、そこまで言うならもう口出ししないよ。せいぜい頑張るんだね!」


 思いの外、キレ返してくるユリア。地雷を踏んだか?


「おうとも、それなりに貯金もあるからな。半年は戻らねぇだろうよ。」

「えっ、は、半年!?…あ、いや………ふんっ、勝手にすればいいさ。」


 そう言って自分のグラスを飲み干し、部屋から出ていくユリア。ここまですれば、流石に彼も罪悪感を抱いたりはしないだろう。気にかけることもなくなったし、そろそろ寝るか。明日にでも長距離汽車のチケットを見に行こうかな。そんなことを考えるシグ。


 これまで幾度となく衝突を繰り返した二人はこの程度の口論なぞ軋轢になり得ないとお互い了解している。シグは今回もその程度の認識だった。ただし、ユリアからしてみれば今回の言い合いは只事では無かった。

 長命種であるにも関わらず、ユリアにはシグがいない半年という期間はとても長く感じた。

 そうとも知らないシグはただ、月夜を眺めながら月光を煽った。

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一般前衛冒険者の憂鬱 呉ヰえら @Laurel0825

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