一般前衛冒険者の憂鬱
呉ヰえら
第1話
はじめまして、呉井と申します。初投稿なので色々と不手際はあると思いますが、よろしくお願いします。
ちなみにですが、この作品はストックが5話までしかなく、筆も遅いため投稿頻度は恐ろしくのろまで、そもそもエタる(久しぶりに使ったこの言葉)可能性も大いにあることをご了承ください。
とはいえ、キリのいいところまでは1章として書き切りたいと思っているのでどうぞよろしくお願いします。
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少し高級な酒場で飲む酒は不味くない。少なくとも冒険者ギルドの隣にあるやっすい酒場よりはマシである。酒はギャングからせしめたブートレグほどではないが飯との組み合わせによってはうまいと言ってもいいだろう。
個室席の端。パーティメンバーから一席空けて俺は一人ちまちまと晩酌していた。エール片手に豆と豚肉のトマト煮込みと硬いパン、うさぎの香味ソテー、付け合せのマッシュポテトにはフライドオニオンがパラパラと散りばめられている。酒はイマイチだが、飯がうまい。飯がうまいと酒もうまく感じるのはおれだけだろうか。
ふと相棒を見やる。相棒と目が合う。今に始まった話ではない。気が合うのだろう。「ふと」のタイミングが合致することはよくある。次の瞬間には横にいる女と目を合わせてイチャイチャしだすため、そっと目をそらすのだが…
相棒は美女に囲まれている。もちろんここはそういう店ではない。一応彼女らもパーティメンバーなのだ。
おれの相棒はハイエルフだ。故に容姿が優れており、よくモテる。美しく艶のある淡い金髪は女性のように腰まで伸ばしており、後ろで束ねている。特徴的な長い耳とくっきりとした顔立ちは、おれと同じ冒険者という不安定な職についていながら周りには求婚してくる美女で溢れている。
相棒はひとりひとりに愛を囁いたりキザなセリフを吹いてまわっている。顎クイなんてした日には女性陣の金切り声で鼓膜が破れそうだ。
コイツの名前はユリア・エルフィグル。ファンクラブまでできてる大人気冒険者だ。B級らしからぬ人気っぷりは強さを求めてない女性陣からの熱烈な支持があるからだろう。同じパーティ、同じ男としてここまで差をつけられたら恨みつらみすら出てこない。
まったく以て羨ましくなど無いが、こういう光景を見るたびにそろそろ俺も将来について考えるべきだなと思う。せめて彼女ぐらいは作るべきだと思う。まったく羨ましくなど無いけどね。
とはいえ、俺の見た目は悪いわけではないだろう。人並みだ。相棒との対比のせいで悪く見られがちだし、相棒のハーレムメンバーからは疎まれているが、きっと新しい土地で心機一転、ソロ活動でもしてみればいい感じの雰囲気になれる異性だっているかも知れない。
元はといえば、彼が火力役の後衛で俺がフロントを貼る前衛のタッグだったわけだが、今や彼のことを愛して止まない前衛系女子が三人もパーティ内にいるため、俺はもはや必要ないだろう。むしろ邪魔まである。
どこに行こうか、南国でバカンス気取りでも良いかもしれない。金なら使い道がないから溜め込んである。多少赤字でも1年は悠々自適に暮らせるだろう。金が無くなればまた稼ぎの良いこの街に戻ってこれば良い。
相棒に話すのは…まぁ、後でもいいか。別に、素っ気ない反応がかえってきたらショックだからとか、ビビってるわけではない。
「ちょっと考えたいことができた。先に宿に戻る」
「もう飲まないのかい? きみは酒が強いじゃないか」
おれは席を立ち相棒に先に帰る旨を話しつつ外套を羽織る。すると相棒が前髪をかきあげながら呼び止めてくる。その仕草に女性陣は湧く。余裕たっぷりって感じの表情に若干イラっとするが、今更である。こいつはモテ始めてからずっとこういう感じだ。嫌味や当てつけではないのだろう。
「あぁ、あまり飲みすぎちゃあ筋肉が溶けるからな。筋肉馬鹿ってわけじゃないけど、前衛職として資本たる身体を蔑ろにすべきじゃないだろうし」
「そう…じゃ、じゃあ、またあとで一緒に一杯だけ…どうかい?」
食い下がってくるとは思ってなかったから、少し驚いた。何かを不安に思うような表情を見せ、俺の目をじっと見る。エルフ特有の宝石のように澄んだ碧眼が上目遣いでこちらをじっと見つめている。表情は依然としてどこか不安げでいつもとは打って変わって弱々しく感じる。
断りを入れるやいなや、しゅんとされると断りきれないではないか。
なんだこいつは。俺に気でもあるのか?
「…まぁ、一杯なら。部屋でいいな?」
「うん…すぐ、行くから」
普段、かなりナルシストの気質がある相棒だが、こういう時に表情にすぐ出るから憎めない。女性ウケが良いのもそういうのが一因だろうな。こいつだって1人の人なんだから淋しくなることだってあるんだろう。
「彼女達が寂しがるぞ。ちゃんとサービスしてやれ。」
「わ、分かってるさ。君に言われなくてもね。」
そうかい。そう口にするのすら億劫だったため代わりに肩をすくめて個室から出る。
「6番の個室だ。まとめて勘定を」
「かしこまりました。…23000ネカです。」
おれは金貨3枚を取り出し、店員に渡す。
「この後から注文した分もここから引いて、余ったらエルフの男に渡してくれ」
「承りました。ご利用ありがとうございました。またのお越しをお待ちしてます。」
「あいよ、美味かったよ。ごちそうさん」
そう言うと、店の外に出る。冷たい風が吹いているが、冷静に物事を考えるにはちょうどいい。
少し遠くに酒場や賭博場、風俗店が乱立する地区が見える。欲望ひしめく魔導ネオン街を遠目にみながら
(あそこに行って金使うのは…ちょっと、な)
などと思いながらバカンス計画を企てるのだった。
………………………
【世界観説明コーナー】
N番煎じのハイファンタジー世界。魔法とかもあるし、腕とかも取れても断面くっつけながら最上回復魔法的なやつでくっつけれる。死んでも2時間以内で脳と心臓がつぶされてなければ教会の魔法陣を使った蘇生魔法で生き返れる。生命保険が適用されるがそれでも五十万ネカかかる。
1円=1ネカ。某ゲームの単位をそのまま使ってるため怖い
冒険者
世界各地にあるダンジョンを探索したりモンスターを狩ったりする仕事。モンスターがドロップする魔石は現代における化石燃料のような役割を果たすほか、モンスターを野放しにしているとダンジョンの外に出てくるスタンピードが起こり得るため、需要が消えることはない。実力と名声がついてこれば、企業や貴族がバックに付くことがあるため安泰。その地域のマフィアがバックに付くこともあるがギルドは黙認しているらしい。
冒険者タグ
冒険者は階級ごとに材質の異なるドックタグ(認識票)を持っていて、階級に関わらず、身分証として高い信頼性を持つ。タグは2枚で一セット、両方首から下げておく事が義務付けられており、死亡時にのみ身元確認用に遺体から1枚回収し、遺体確認用に1枚付けたままにする。また特別な業績を挙げたりなどの偉業を遂げた人物のタグは、魔力を込めると行いに応じた刻印が光って浮かび上がる。逆に不良行為を行う続けるとタグ全体がオレンジ色に光るようになり、犯罪行為を行うと赤色になる。レッドタグは討伐対象となるだけでなく拘束呪縛により着脱不可能になり、あらゆるデバフをつける。
ドックタグはひとつひとつが魔道具のため発行料金がかなり高い。失くすとひとたまりもない。
絵柄/柄持ち
刻印が出るドックタグやそれを持つ冒険者を指す言葉。柄持ちを公表している冒険者は絵柄に合わせた二つ名を持つ。柄持ちは基本的に手練であることから本当に柄持ちかに関わらず猛者という意味でも使われる。マフィアや情報屋のようなアングラの人間は柄持ちであるか否かよりも柄の内容を吟味するため、柄持ち冒険者だからといっても裏稼業にまで幅を利かせられるわけではない。
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