第3話:どうやろうか…。



紬との昼ご飯も食べ終わり、眠くなりそうな5時限目と6時限目をギリギリで生き残って放課後…。


「……眠い」

「それは私も思ったけど探偵部として、イアリングの捜索を始めよう」

「まぁそれもそうだな…ヨシ、始めようか」


クラスの人と帰りの別れを告げて、俺たちの教室に突撃ィイイ!!!してきて俺の胸に突撃ィイイ!!!!してきた紬を避けて、帰宅する生徒を避けながら廊下に出る。


コートを翻して俺の隣を歩く紬の綺麗な髪を見ながら、俺はふぅと息を吐いた。

俺たちは依頼者(勝手に自分達で依頼を受けただけだが)の教室へと足を進める。


依頼者女子生徒は俺と紬とは違うクラスなので、紬とは違って他のクラスに突撃しない俺は少しばかり周りを見渡した。

依頼者女子生徒には『放課後残ってて』という話をつけている。


ヨシ…生徒指導の先生はいないよな?

ちなみに朝、突撃してきた紬は生徒指導の先生にバレなかったらしい。


あの教師顔怖いんだよな〜……。


雑談しながら時間を潰していた俺たちは依頼主以外がいなくなったことを確認して、ゆっくりと教室へと足を踏み入れた。


依頼者と先ほどの依頼者と話していた女子生徒の二名だけが、茜色の夕暮れに染まった教室の中で残っている。

その彼女たちも俺たちが入ってくるのを見ると、話すのをやめてその場で立ち上がった。


あぁ〜っと、なんと切り出せば良いのか分かんねぇ……。


そんな俺の言葉の代わりに紬が、自分の髪を一瞬だけ触ると依頼者に告げた。


「…それで、昨日の動きについての話を聞かせてもらえるかな?」

「…えっとね?昨日は1限目から科学の授業があって理科2に移動して…その後は英語の授業で……」

「その後には…移動したと言えば昼休憩の時に中庭で食べたぐらいで…何もなかったよね?」

「うん!そうだよね?なかったよね?」

「なるほどなるほど…じゃああるとすれば『理科室2』と『この教室』と『中庭』だということだね?」

「……うん。でも…この3つは全て探して風紀委員会の忘れ物置き場も見たけど…見つかんなくて……」


我らが世永高校の風紀委員会には、多くの忘れ物が送り届けられる。

どこを探しても見つからなくて、風紀委員会の忘れ物置き場も見つかんないのなら、紛失…盗難の可能性もあるのだろうか。


「……なぁ、そのイヤリング、“失くした”って気づいたのはいつだ?」

「えっと…昼休憩の終わりかな…筆箱の中に入れていたはずなんだけど……」

「う〜ん……これは……」


なるほどなるほど…。


俺は一度頭の中の整理をやめると、紬へと視線を向ける。

彼女の瞳は全てを見通すほどの綺麗さを持っており、そして——————俺の好きな目をしている。


…『探偵』としてのスイッチがオンになったか……。

そしてその瞳のまま、胸元のメモ帳に情報を書き取ると、依頼者たちの目の前で優雅に礼をする。


「…ある程度の情報は集まった。…ありがとうね?残りは私たちが探しておくよ」

「本当に?お願いしても……大丈夫?」

「そりゃぁもう!!安心しておきなんしゃい!!私たち『探偵部』にお任せをっ!!」

「あぁ、俺たちに任せておいてくれ」


紬はそうやって格好良く切り上げようとする。

なんかいつもの通りの小さな背中だが、探偵をしている時の紬は本当に生き生きしており、そして大きく感じる。


依頼者たちは俺たちを交互に見た後に—————にやっとした笑顔を浮かべた。


「やっぱり、紬さんと真紘?君が付き合っているっていう噂は本当だったんだ!!」

「…確かに…もう夫婦って感じだもんねっ!?」

「……うへっ!?」


前言撤回。

先ほどの信頼感のある背中から一変、肩をビクッとさせて顔を真っ赤にさせる探偵様の姿があった。



◆◇




突然だが、世永高等学校とは大学の進出を視野に入れたこの地方で1番偏差値の高い、超マンモス校である。

スポーツ推薦やその他もろもろ…かなり能力の持った人物がここにやってくる。


まぁそれはともかく…今必要なのは、超マンモス校であるということだけだ。

1学年400人程度…A〜Jクラスまでの1クラス40人で10クラスのある。


そしてその分学校も大きくなる…ということで…まぁつまりクソ広くてクソ迷ってしまう。


「あれ?ここさっき通ってなかった?」

「…流石に違うだろ……え?違うかな?地図を見てもわかんねぇ……」


うん、…迷った。

流石に入学してハンパも立っていない俺たちにこの高校の全ての場所を覚えろとか無理に等しい。


だってしょうがないジャン!?

マジで下手な大学よりも明らかに広いんだぞ?

無理無理っ!?


探偵助手はその場で座って、少し歩き疲れた足を休ませる。

そして、そんな俺たちの前に人影が落ちてきた。


「……何してんだお前ら……」


俺と似た漆黒を染めたような髪を持っており、しかしながら紬と似たような水色に輝く瞳を少し細めて俺たちにジト目を向ける。


どこかの俳優と言われても違和感はないだろう。それほどの整いすぎた持った顔を持っており、その人物の名は————————。


「彰人さん……」

「…お兄ちゃん」


……空崎彰人。


空崎紬の実兄であり、俺と過ごす時間も紬ほどではないがかなり長い(2ヶ月)である。

ちなみに紬は(4ヶ月)だ…それだけは譲れない(使命感)。


S級美青年でもあり、運動も勉強も学年トップを走っている彼は、この学校の生徒会長でもあるため家では良く喋るが、学校ではあんまり話せれないだろうなぁ…と思っていのだが、まさかのここで出会えるとは……。


かっこいいイケメンという言葉を体現したような顔で地面で座る俺たちに引き攣った視線を送ってくる。

違うんです……疲れただけなんですぅ……。

夜ご飯はもっと美味しいやつを作りますからぁ…そんな瞳を向けないでよぉ………。


「…迷ったか?」

「…まぁ、そう…だね」


紬も少し申し訳なさそうに視線を外して自分の綺麗な頬を人差し指で掻く。

彰人さんはそんな俺たちの姿を見た後に「まぁいい、こんなところで座るな」と手を差し出して引き上げてくれた。

足の乳酸もある程度取れてきたかなぁ〜……。


それにしても…家では良く見る光景だが彰人さんと紬が制服姿で一緒にいるところを見るのは…こう考えると初めてかもしんない。

さすがS級兄弟……俺とは顔の格がちげぇぜっ!!


「…あ、彰人さんは今日氷室副会長とは一緒にいないんですね?」

「あいつはなぁんかカフェの新作が出ているらしくてそれを飲みに行ったぞ。今日は生徒会が何もない日だからな…」

「誘われたりはしなかったんですか?」

「誘われたけど…ちょっと先生に聞きたい問題があってな…少しパスした」

「…出雲ちゃん可哀想……」


前年の世永高校の文化祭のミスコンで優勝して『氷姫』の二つ名を得ている副会長が彰人さんに向ける恋愛感情は俺でさえ理解できる。

だって、視線がずっと彰人さんに向いているもん。

クラスメイトが『BSS』って言っていたし……。いやお前らは後続だろ。


紬は彰人さんの近くに寄るとTHE冷えた声と言わんばかりに彼に問いかけた。

やっぱり俺以外の男子と話す時の紬って…なんかマジで冷えた声出すよな……。


いや、兄くらいは優しくしてあげろよ。

泣くぞ?彰人さんは妹が好きだから泣くぞ?


「でね?お兄ちゃん…理科室2の場所を教えて?」

「あぁ…教えてやるが…良いかげん覚えろよ?」

「言われなくてもわかってるし…」


はぁ…とため息を漏らしつつもなんだかんだ言って俺たちの助けになってくれる彰人さんだった。

やっぱかっこいいっす。

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学校一のS級美少女と仲良くなった俺は何故か懐かれ、探偵と助手という名の甘々な生活を送れている件 おこのみにやき @Okonominiyaki

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