Chapter #0002 Dead or Hard Dead / Segment 3 この上なく不幸な奴ら
「お頭、ゴクラクジの切り通しで、王室の馬車が倒れていて、護衛が死んでいるそうです」
そう報告したのは、盗賊の一人のチンピラだ。
「そうか。誰が乗っていた? 金目の物は?」
お頭はあくびをした。
チンピラは素っ気ない。
「誰が乗っていたかは分からねえです。お頭、盗るのは護衛の武器・鎧くらいにしましょうか。でも、女がいたら『優しく』しましょうや?」
お頭は腕を組んだ。
「馬車が転げたら、女なら死んでいるか、大怪我だ。要らねえなぁ……俺たちがやったことにされたら藪蛇だ。追い剥ぎだけなら、俺が行くまでもねえ……お前らでやってみろ。勉強だ」
チンピラは頭を下げた。
「女が元気に生きていたらどうしますか?」
お頭は考えた。
「うーむ……無いと思うがなぁ……まぁ、丁寧にお迎えして恩を売れ……誤解するなよ、符丁じゃねえ。ちゃんとお持て成ししろよ? その方が安全に金になるからな?」
チンピラは、他のチンピラ達と合流するために、お頭の部屋から出た。そして、地面を蹴り飛ばした。
「お頭にゃぁ悪いが、そんな上品な仕事をすんのなら、盗賊なんて楽しくねえ。任されるんなら、女の顔を見てから現場で判断させてもらうぜ」
一方、お頭はため息をついた。
「近ごろ我ら、統率が悪い。言うことを聞かない奴がいるだろう……こっそり監督しよう」
*****
チンピラたち10人が現場に着いたときには、美味しい匂いが立ちこめていた。
ピピンさんが、無事だった調味料を使って(泣きながら)馬肉のステーキを焼いていたからである。
「ああ……いい匂いがする。こりゃぁ……上等な香辛料だなぁ」
一人のチンピラの独り言を、ストロベリーさんの耳は聞き逃さなかった。
料理の火に手をかざしていたストロベリーさんは、この上なく優しい声で言った。
「丁度人手が欲しかったところ、手伝っていただけるのであれば、馬肉のステーキをご馳走しますよ」
チンピラたちがどよめく。
「上等な女の声だ」
「二人居るぞ。どちらも女のようだ」
「カンテラの光を当てろ」
カンテラの光を当ててみれば、一人は上等な身なりで丸顔・小デブな娘。もう一人はメイドらしい服に身を包んだ、華奢なアゴが美しい、胸の大きな娘である。
チンピラの一人が叫ぶ。
「お……おで、こういう時のために盗賊をやっていると思う……料理している方はいい女だ」
もう一人が叫ぶ。
「バカを言え、女は顔でも胸でもねえ……ぽっちゃり最強だ。抱き心地が天国だぞ」
今回の指揮役が冷静に言う。
「お前ら、礼儀がなっていない。ご馳走を前にしたらまずは『いただきます』だろう。二人ご馳走が居るが、こっちは十人。穴兄弟できちまうなぁ……さあ、唱和しろ! いただきます!」
「「「「「いただきます!」」」」」
「ちぇすとぉー!」
そうストロベリーさんが縮地しながら叫んだとき、盗賊の一人の頭がはじけ飛んだ。
ストロベリーさんの、発勁で青白く光る15mm厚鉄甲正拳突きをまともに食らったのだ。
パアッ……盗賊の他の者は、はじけ飛んだ血液と
ストロベリーさんは冷静に数えた。
「
「ふんぬ!」
ストロベリーさんは気合いを込めてもう一人に同じ事をする。
「
血液と脳漿が飛び散る。
ストロベリーさんは一人のチンピラの頭を掴んで、握力をかけた。
「
その時、隠れて見ていたお頭が姿を現して叫んだ。
「貴様ら、失礼なことをするんじゃない! そのお方、ストロベリー王女だぞ! 胸のブローチと顔かたちで分からんのか!」
そして、両膝をついて、土下座した。
「姫様、護身術が凄まじいようで……死にかけは楽にしてやってください」
ストロベリーさんは、手を離した。
「嘘です。頭蓋骨にひびを入れた程度です……皆さんが作業を手伝ってくださるなら、メイドに回復魔法をかけさせます」
そのとき、チンピラの一人が斧を振りかぶった。
「女に舐められるくれえなら死んだ方がマシだ!」
ストロベリーさんは、そいつの頭をワシッと掴んだ。しばらくすると、そいつは鼻と耳から血をたれ流した。
ストロベリーさんは、慈愛に満ちた表情になった。
「Hard Dead」
ストロベリーさんが手を離すと、男はのたうちまわった。
「ガアッ! グギャワアァァ! ウオオォォォッ!」
口からは泡を吐いている。
盗賊のお頭が立ち上がってそいつに近づいて、短剣で頸動脈を斬った。切り口から血液が噴出して、男は動かなくなった。
お頭は両膝をついて、ストロベリーさんにかしづいた。
「このような者、苦しませる価値もありますまい」
ストロベリーさんは、お頭に笑顔を向けた。
「話が分かるお方がいて良かったです。馬肉はお嫌いですか? 一仕事していただきたいのですが、先に体力のつくお礼をしたく思います」
お頭は、部下に声をかけた。
「死にたい奴ぁまだあるか?……王女様、もう居ないようです。申し訳ありません。なんせ盗賊なので統率というものがない」
ストロベリーさんは、優しく微笑んだ。
「ではちょっと、拳を仕舞いますから、驚かないでくださいね」
そして、正拳突きを
「ふん! ふん! ちぇすとー!」
そして、両手でスカートの端を摘まんだ。
「佳い舞踏会でした。ありがとうございました」
お頭はニヤリとした。
(敵に回せばおっかねえが、何としても味方になりてえなぁ……)
一方、ピピンさんは、チンピラの頭がはじけ飛ぶのを見てしまい、その瞬間へなへなと座りこんで腰が抜け、抜けっぱなしだった。
「ここで残念なお知らせがあります」
その声は、真上から響いた。
「クライアントと協議した結果、ストロベリーさんは、千年に一度の逸材ゆえ、もう戦うなと命令されました……誠に申し訳ありません。死合えません」
その声は、魔術師・キウィさんのものだった。
ストロベリーさんはキウィさんに手を振った。
「あっ! キウィさ~ん! あの、いま奥さんや恋人、いらっしゃいますか~!」
流石にキウィさんも訳が分からない。
「どういうことですかな? 盗賊を討伐するお手伝いと思ったのですが」
ストロベリーさんは両手を広げた。
「私、キウィさん、だ~い好きで~す!」
キウィさんは頭が痛くなった。
(人と馬の死骸に囲まれてラブコールか、自由人すぎる……)
そして優しく言った。
「150年生きましたが、女とは無縁の人生でした。そういう欲はありませんね」
ストロベリーさんは目をキラキラさせた。
「まぁ……では殿方がお好きなのですか?」
キウィさんは頭をかいた。
「そういう訳ではありません。性欲そのものがありませんから」
ストロベリーさんは、明るく言った。
「あっ、子種が無いのなら、恋人じゃなくてお友達になりましょう~!」
キウィさんは、ストッとピピンさんの脇に降りて、ピピンさんの手を取った。
「大丈夫ですか? 立てますか? 馬肉、焦げ始めていますよ」
ピピンさんは、キウィさんが何をしたかは知らない。ただ単に、二十歳未満に見える、金髪のイケメンに手を握られた気持ちである。
「は……はわわわわ……(何? 何が起きているの?)」
ストロベリーさんは残念そうに目を点にした。
「あらあら、まあまあ。性欲がなくても、やっぱり胸が大きい方が良いのですね」
そして、両手で自分の平らな胸を温めた。
キウィさんは苦笑いだ。
「そういうのではありません……盗賊たちに死体や馬車の片付けをさせるために、馬肉を焼くのでしょう? 焦がしては礼に欠けますよ」
ピピンさんは訳が分からないが、一つだけ理解した。
(いま、ここには、頭がおかしい人しか居ない……!)
盗賊のお頭が、ピピンさんから菜箸を取りあげて、馬肉をひっくり返した。
「姫様、俺が焼いておきます。こう見えてもグルメなんでね、不味いよりは美味い方が好きなんですわ……名をフデガキと申します。覚えても覚えなくてもいいですよ」
そして叫んだ。
「ほれ、お前ら、肉食え、肉! 力仕事が待ってるぞ!……姫様、報酬が馬肉だけって事ぁありませんよね?」
キウィさんは冷たく笑った。
「ほう、殺されずに済んだだけでは足らないのですか」
フデガキさんはぼやいた。
「命が助かったのはありがてえが、だからただ働きをしろと言われたら、労働基準監督署に相談しますよ」
そして、シュッと動いて、キウィさんの喉元を手刀で軽く触った。
「落ちぶれましたが、これでも俺は忍者でしてね……雇う価値はあると自己推薦したい」
ストロベリーさんは、胸がトキンとした。
(フデガキさんと私が結婚したら、スピードとパワーを兼ね備えた強キャラの子どもができるのでは……!)
そして、目をつぶって、右手で自分の心臓の鼓動を感じた。幸せだった。
(一人目はキウィさんとの子、二人目はフデガキさんとの子、悪くないですね……賢者様も落としたいなぁ)
キウィさんは冷静だ。
「ほう、忍者……実に興味深い。その気になれば私の頸動脈を手刀で飛ばせたのでは? 錠前とかを開けるのは得意か?」
フデガキさんは微笑んだ。
「味方候補に攻撃は当てねえよ。
ネズさんは振り向いた。
「へへっ、錠前なら得意だがね……毎日寝る前にジンをワンフィンガー……給料とは別に、コレが保証されねえと仕事ぁしねえぞ。つまり、今は殆ど仕事はしてねぇ」
そこで、他の盗賊が声を上げた。
「お頭とネズが抜けたら、もう解散するしかねえです……」
フデガキさんはため息をついた。
「アジトに貯めたお宝を、全員に公平に分けるから、里にでも帰れ」
ストロベリーさんは、自然と身をくねらせた。
(まぁ! 突然有能な、ちょい悪系の殿方に囲まれました! コレがモテ期……賢者様には相手にされなかったけど、とうとう私にも!)
胸が温かかった。
*****
現在のパーティ
ストロベリー:14歳女性。格闘家。赤い髪、金色の瞳、日焼けした健康的な肌、緑色のティアラ。武器/防具は鉄のティアラ。手甲の部分は鉄が15mm厚あり、矢や槍・拳を受け止めることができる。趣味は功夫と肝練り。
ピピン:17歳女性。金色の髪、青い目、白い肌。メイド。伝統的な露出部の少ないメイド服を着用。武器も防具もなし。簡単な回復魔法が使える。料理が上手。メイドとしては優秀で、ドジっ子系ではない。
キウィ:150歳超えの男性。魔術師。ネクタイとスーツとベストが共布で、濃い紫色の四つ揃えを着ている。趣味はチェスプロブレムの作成。性欲は無いと言っているが……?
フデガキ:32歳男性。忍者。武器はダガー。防具は革鎧。趣味は仏像の彫刻。実は何も装着していないとき(ふんどし一丁レベル)が一番強い。
ネズ:28歳男性。盗賊。武器はダガー。防具は革鎧。ジンをロックでチビリとやるために生きている。斥候としても優秀。
*****
本作は、息抜きで冗談半分で書いた物なので、この先を何も考えていませんが、♡や★が多いようなら頑張って続きを書きます。
どうなんでしょうね。こういうの需要ありますかね。
撲殺王女ストロベリーさん 掬月 @kikugetsu
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