第2話 出会い

  「HR終わった^^」


吉田からのメッセージを見て昇降口へ向かう



下駄箱にはゴンだけしかいなかった。


「あれ、吉田は?」


ゴンは呆れた顔で首を振る。


「トイレか」


ゴンは基本的によっぽどのことがない限り口を開かない。

小さい頃からそうだったけれど、どうしてなのかは聞いたことがない。

慣れたもので何を伝えたいかは大体はわかるが、何を考えているのかはいまだにわからない。 


「待たせたな」


そう言ってベルトを触りながらやってきた吉田。おそらく洗っていない手で僕の肩に触れる。


「早くしろよ。日が暮れる前には帰るぞ」



ゴンの自転車の荷台に乗る吉田。ゴンは少し息を切らしている。

吉田は電車通学なのだ。


「お前帰りは一人で帰れよ。」


「ゲェ?なんで!送ってくれるよな?」


吉田は、ゴンの顔を覗き込むが、ゴンは苦しそうに首を横にふる。



やまの麓まできた。

あたりは薄茶色でもうすぐ日が暮れてしまうようだった。


吉田が僕とゴンの半歩後ろに下がったのは気のせいだろうか。


麓なのに、二列目あたりの木からはその奥が見えないほど暗かった。

妙な風も吹いている。


「きたけど、どうするんだよ」


「ああ、どうすんだよ」


吉田はゴンに話を振る。ゴンは困惑している。


「おい、話を持ちかけてきたのはお前だろ」


「いやでもさ、いざきてみると不気味なもんだな。丸腰で入っていいもんなのか?」


「はぁ」


吉田は少々怖気付いてるようだ。吉田らしいと言えば吉田らしい。


「僕は行くよ、ゴンは?」


ゴン、その場で下を向く。


「わかった。でも僕が降りてくるまで絶対帰らないでよ」


「もちろんもちろん」


吉田の声と共にゴンは何度も頭を縦に振る


吉田はそういうやつだからなんとも思わないが、僕はなんだか怖さと同時にワクワクしていた。これがスリルというものなのかはわからない。それに幼い頃に何度かきたことがある山で、そんなに大きくもないので道がなだらかな場所もなんとなくわかる。


しばらく歩いていると、何度も同じ所を歩いたことでできたような道を見つけた。

その道を辿ると、一つの小屋見えた。


案外簡単に見つかってしまった。

小屋を見つけたら帰ろうと思ったが殺人鬼というのが頭をよぎった。


一気に緊張が走った。小屋までの距離はほんの50メートル。

帰る事もできるが、好奇心と恐怖心が僕の中で混沌と入り混じる。


気がつくと小屋が目の前にあった。


近づいてみると小屋は意外にも大きかった。ざっと見たところ。15畳くらいだろうか。


そして小屋は僕らの他に肝試しでやってきたであろう人たちの落書きや、嫌がらせなどのあとがあった。消しきれていない落書きの上に新しい落書きがされていたりした。


僕は、がっかりしたというより虚しくなった。

何をしていたんだろうという気持ち、さっきまでの好奇心も馬鹿馬鹿しくなった。


小屋のドアノブには南京錠が鉄の鎖とともに厳重に巻かれていた。


ドアノブは右にひねって回すタイプのやつなので、僕は違和感を覚えた。


試しに捻ってみた。


開いてしまった。


いやだめだろと思ったが、こっちの方がだめだろと割り切って開けてしまった。

そうだ、僕は他の肝試しに来た連中とは少し違う。

これはおじいちゃんの山なのだ。




中に入ると、驚きの連続だった

まず、一番の驚きは最低限の家具が揃っている事だった。

ドアを開けたすぐ隣にキッチン、そして一つ奥にはローテーブルと、座椅子式のソファ、天井いっぱいの本棚そして一番奥にはベッド。その隣に綺麗な箪笥。内側からしか開けられない窓のようなものまでついている。

流石に色々な場所から寄せ集められた家具だが、妙な統一感に変に魅力を感じた。


極め付けは整理整頓。ホームレスとは思えないほどの余裕を感じた。

どうやら、僕らと同じように普通に暮らしているようだ。



おじいちゃんの知り合いなのか?



そんなことが頭をよぎる


ここにすんでる人は一体何者なのか。僕は恐怖やためらいなどを忘れ

部屋を少し物色する。

本棚には最近のものから筆で書かれたようなものまで揃っていて、読書好きと仮定した場合、この大きさの本棚なのだからかなり厳選されてい本たちなのだろう。


埃も落ちていない。綺麗に掃除されているんだ。


そんな中、箪笥視界に入る。


おじいちゃんの山という免罪符を手にした今の僕には、

プライバシーなんて考えもしていなかった。


箪笥は一番上のだんに小さい引き出しが二つ並んでいて

真ん中としたのだんは普通の細長く大容量の引き出しになっている。


最初に一番下の引き出しを開けた。

中には衣類が入っていた。どれも高価そうな衣類だった僕には服の価値など到底見当もつかないが、普段着でないことは確かだった。

真ん中の引き出しも同じように布や衣類などが入っていた。




一番上の引き出しの左の方を開けてみた。立て付けが悪く、開きづらかった。

しばらく開けていないのだろうか。


中を見ると

剥き出しで入っていた写真がごっそり積まれていた。全ての写真を一気に持ち上げた。写真はざらざらとしていて触ると指に埃のようなものがついた。


写真は色々な人と撮っている記念写真のようなものでほとんどの写真に写っている同じ人物から、この小屋の持ち主の顔が割り出せた。


髪型は色々変わっているが、目鼻立ちがはっきりしているせいか、顔はあまり変わっていない。若い頃の写真なのだろうか。でも不思議とどれも違う人のように見える。


全て見終えて写真を戻そうとすると、和菓子に使われているような薄紙に包まれた紙が一枚入っていた。


開いてみてみるとこれもまた写真だ。

3人の家族写真だった。それもきちんと写真館で撮ってもらったようなやつ。

僕も家族で撮ったことがあるのでわかる。


3歳くらいの息子を抱っこしているのが先ほどの男だった。

余程の苦難があって今に至るのかと考えると、心苦しい気もした。


そのまま一枚の家族写真を箪笥の上に置き右の方の引き出しを開けた。

さっきとは打って変わってすんなり開いた。



その引き出しの中身に全身に緊張感が走る。



免許証・住民票等、大量の身分を証明するものが入っていた。顔写真はどれも同一人物で、さっきの人物と同じ。それに年齢はどれも30代のいずれかで設定されていた。



やっぱり



吉田の殺人鬼という言葉が脳裏をよぎる。


「何してんだ」


ドアの開く音と共に男の声が聞こえた。


反射的に箪笥を閉め、上に置いた写真を背中に隠し、振り返った。


僕は咄嗟の出来事に言葉も出なかったが、男の雰囲気からはあまり恐怖を感じなかった。


「そうビビるな。誰もお前なんか殺さねえよ」


男は余裕綽々といった感じだ。


「肝試しだろ。ふもとでビビってる奴らはお前のつれか?それにしても小屋にまで入ったのはお前が初めてだな」


男は笑みを浮かべる。小屋を訪れてくるの人には慣れているのだろう。


「まあとにk・・・」


「おじさんは何者なんですか」


思わず発した言葉が被ってしまった。


「ああ、ホームレスだよホームレス」


「箪笥の中のものは盗んだんですか?」


「は?プライバシーってもんがあるだろぉ・・・俺んだよわかったら今日は帰れ」


「ほ、本当ですか。」


「本当だってば、そんなに欲しいならくれてやるから帰れって」


「あの偽造の身分証は・・・」


「しつけぇないいから帰れよ、関係ないだろ」


「おじいちゃんの山なんですここ。殺人鬼だったら困ります」


食い気味の掛け合いが終わると、男は全てを諦めた表情になった。


「俺は殺人鬼じゃないさ。信じてくれ」


さっきの勢いを無くし、諦め切ったような感じで僕に訴えかけた。


「とにかく。今日は帰ってくれ、もうとっくに日が暮れてる。お前を心配したへっぽこ二人が山で遭難する前に帰れ。一ヶ月以内にはここを出ていくから。いいな?」


僕はここで二人を待たせていることに気がついた。

聞きたいことはもっとあったが、今は無事に帰ることが何より最優先だ。


それにしても男が気の毒に感じてしまった。ホームレスなのだから、また追い出されたりしたら、大変なのだろうか。


僕は足早に男を通り過ぎ、急いで入り口から出て山を下った。



ふもとに戻ると、二人はすごく心配していたようだ。


「おおおおおおおお!お前大丈夫か?無事で良かったよ」


ゴンは涙さえ浮かべていた。


「お前が死んだら俺、俺一生罪の意識で生きていけないところだったぞ」


吉田はどこまでも吉田だった。


「それでどうだったよ」


吉田に言ったらもっと広まるんだろうな。あの感じでは僕も殺人鬼とは到底思えなかった。広まったらまた嫌がらせを受けるのだろうか。


一ヶ月後には出ていくんだろうし言わなくてもいいのか。


「いや、ただのじいちゃんの物置小屋に落書きされてただけだった。」


「おーいそれだけかよ。でもなんでそれだけで殺人鬼なんだ?」


吉田は変な勘だけ鋭い。


「物置小屋にはノコギリとか狩用の道具とかあったからそれでだとおもう。」


「なんだ!さっきまで怖かったけどなんかがっかりもするな!」


吉田の納得が行ったみたいで良かった


「今日はもう帰ろう」


「そうだな!」


「俺こっちだから。また」


「ほいじゃまた〜!

 よし、ゴンちゃん駅まで頼んだ」




















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スダジイ ぱい焼き太郎 @taketaman

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