第10話「矛盾の連鎖」

第10話「矛盾の連鎖」


襲撃の準備


翌日の夜、午後8時。


デスゲーム被害者支援会の事務所。東京・渋谷の雑居ビル3階にある、20畳ほどの狭い部屋だ。


壁には、デスゲームの被害者たちの写真が貼られている。生存者、死亡者、行方不明者。全部で300人以上。


俺たち、椎名リョウ、青山ユキ、桐生タクミ、田中リク、そしてクロエ・ミラーは、メモリア・コーポレーション本社への襲撃を計画していた。


部屋には、20人以上が集まっていた。


タクミの元刑事仲間たち。10人。全員が警察を退職し、今は私立探偵や警備員として働いている。タクミへの信頼は厚く、彼の呼びかけに全員が応じてくれた。


救出した参加者たち。10人。彼らはデスゲームを生き延びたが、家族や友人の記憶を失っていた。復讐ではなく、これ以上の被害者を出さないために、戦うことを選んだ。


「みんな、集まってくれてありがとう」


タクミが立ち上がり、大きな地図を壁に貼った。六本木ヒルズの見取り図だ。


「これから説明する作戦は、危険だ。最悪の場合、死ぬ可能性もある」


タクミの声は低く、重かった。


「だが、俺たちがやらなければ、誰もやらない。警察は動かない。政府も黙認している。メモリア・コーポレーションは巨大すぎて、誰も手を出せない」


「だから、俺たちが動く」


タクミの目が、全員を見渡した。


「今から作戦を説明する。質問があれば、いつでも聞いてくれ」


全員が頷いた。


「メモリア・コーポレーション本社は、六本木ヒルズ52階にある」


タクミが地図を指差した。


「ビルの高さは238メートル。52階は地上200メートルの高さだ」


「警備は厳重だ。警備員は50人、全員が元軍人か元警察官。監視カメラは200台、死角はほぼゼロ。セキュリティシステムは最新式で、顔認証、指紋認証、虹彩認証の三重ロック」


「さらに、エレベーターは専用カードがないと52階には止まらない」


俺は息を呑んだ。こんな要塞のような場所に、どうやって侵入するんだ?


「だが、弱点がある」


クロエが前に出た。彼女は元メモリア・コーポレーションの社員だ。内部情報を持っている。


「サーバールームへのアクセス権限は、社長の白石カズマしか持っていない」


クロエがノートパソコンを開き、サーバールームの内部写真を映し出した。


「サーバールームは52階の最奥部。ここに、世界中から集めた記憶データが保管されている」


「白石を捕まえれば、サーバーにアクセスできる」


タクミが頷いた。


「つまり、俺たちの目標は2つ。第一に白石カズマを捕まえること。第二にサーバーのデータを削除すること」


「そのために、俺たちは3チームに分かれる」


タクミが指を立てた。


「Aチーム。俺が率いる。メンバーは元刑事仲間10人。正面エントランスから突入して、警備員を引きつける。時間稼ぎが目的だ」


「Bチーム。リクが率いる。メンバーは救出した参加者5人。裏口から侵入して、地下の電気室へ。監視カメラのシステムを無効化する」


「Cチーム。椎名とユキ。お前たちは従業員用エレベーターで直接52階へ。白石を捕まえろ」


「クロエは、この事務所から遠隔でサポート。セキュリティシステムをハッキングし、エレベーターのロックを解除する」


俺は緊張した。Cチームは、実質的に最も危険な役割だ。


「椎名、お前にはリープ能力がある。もし失敗しても、やり直せる」


タクミが俺を見つめた。


「だが、リープするたびに誰かの記憶が消える。それを忘れるな」


「...分かってる」


俺は頷いた。


「ユキ、お前は医学生だ。白石を説得できるかもしれない。彼も、元は医師だった」


「はい。やってみます」


ユキが強い目で答えた。


「みんな、最後に言っておく」


タクミが拳を掲げた。


「これが最後の戦いだ。俺たちは、記憶を守る。人々を守る。二度とデスゲームを起こさせない」


「おお!」


全員が拳を掲げた。俺も、ユキも、リクも、クロエも。


部屋中に、決意の声が響いた。


---


六本木ヒルズへ


夜9時。


俺たちは、六本木ヒルズへ向かった。


東京タワーが遠くに見える。夜景が綺麗だ。でも、今は景色を楽しんでいる場合じゃない。


六本木ヒルズは、巨大なビルだ。夜空に聳え立ち、無数の窓が光っている。


「準備はいいか?」


タクミが全員を見渡した。俺たちは、ビルの周囲に分散して待機していた。


「ああ」


「じゃあ、行くぞ。作戦開始は9時15分。時計を合わせろ」


全員が腕時計を確認する。


9時14分50秒。


9時14分55秒。


9時15分00秒。


「行け!」


Aチームが正面エントランスから突入した。


「メモリア・コーポレーションを摘発する! 我々は元警察官だ! 白石カズマを引き渡せ!」


タクミが叫んだ。彼の声は、エントランス全体に響き渡った。


警備員たちが驚いて駆けつける。


「侵入者だ! 止めろ!」


「何人だ!?」


「10人! いや、15人!」


警備員たちは混乱していた。Aチームは大声で叫び、わざと目立つように動いていた。


エントランスで激しい衝突が始まった。タクミたちは武器を持っていない。ただし、格闘術で警備員たちを圧倒していた。


その隙に、Bチームが裏口から侵入した。


「リクさん、こっちです」


リクがノートパソコンを持って、地下へ向かう。裏口は厨房に繋がっており、そこから地下の電気室へ行ける。


「監視カメラを無効化する。3分待ってくれ」


リクがノートパソコンを開き、高速でタイピングを始めた。元々ITに詳しいリクは、クロエから事前にハッキング方法を教わっていた。


そして、俺とユキは従業員用エレベーターへ。


「行くぞ、ユキ」


「うん」


エレベーターの前に立つ。カードリーダーがある。従業員専用カードがないと、エレベーターは動かない。


「クロエ、頼む」


俺が通信機に話しかけると、すぐに返事が返ってきた。


「了解。今、ロックを解除する」


数秒後、カードリーダーが緑色に光った。


「成功。エレベーターが使えるようになった。52階まで行ける」


「ありがとう」


エレベーターのボタンを押す。


52階。


扉が閉まり、エレベーターが上昇し始めた。


10階、20階、30階...


数字が増えていく。俺の心臓が激しく鳴っている。


「椎名くん、大丈夫?」


ユキが心配そうに聞く。彼女も緊張しているのが分かる。手が震えている。


「ああ。今度こそ、白石を止める」


「でも、リープは使わないで」


ユキが俺の手を握った。柔らかくて、温かい手だ。


「あなたの記憶が、これ以上消えないように」


「...ありがとう」


俺は彼女の手を握り返した。


40階、50階...


52階。


エレベーターが止まった。


ピンポン、という音。


扉が開いた。


---


白石カズマとの対峙


広いオフィスフロア。


天井は高く、5メートル以上ある。床は大理石で、ピカピカに磨かれている。窓からは東京の夜景が一望できる。


しかし、誰もいない。静まり返っている。


中央には、1人の男が立っていた。


白石カズマ。60代、白髪、鋭い目。高級なスーツを着ている。


「よく来たね、椎名リョウ」


白石が微笑んだ。まるで、俺たちを待っていたかのような態度だ。


「君の噂は聞いている。死に戻る能力を持つ青年。何度も仲間を救い、デスゲームを生き延びた」


「白石カズマ...」


俺は警戒した。この男は、全てを知っている。


「お前の計画を止めに来た」


「計画? ああ、記憶回収プロジェクトか」


白石が笑った。


「止められるかな?」


白石が後ろを振り返った。


そこには、巨大なサーバールームがあった。ガラスの壁越しに、無数のサーバーが並んでいる。青白い光が明滅し、データが流れている。


「これが、世界中の記憶だ」


白石が言った。


「30年間、集め続けた。デスゲームで、取引で、詐欺で、あらゆる手段で」


「デスゲームで死んだ者の記憶。デスゲームで記憶を失った者の記憶。自ら記憶を売った者の記憶」


「1億人以上の記憶がここにある」


「1億人...」


俺は愕然とした。1億人。日本の人口に匹敵する数だ。


「そして、もうすぐ完成する」


白石が続ける。彼の目は、狂気に満ちていた。


「人工的な忘却。完全な存在。神に等しい存在」


スクリーンに、映像が映し出された。


人間のような形をした、巨大な存在。身長は3メートル以上。


全身が、記憶の断片でできている。映像、音、感情、思考...全てが渦巻いている。


「これが、新たな忘却だ」


白石が言った。


「彼女は、全ての記憶を持つ。全ての知識を持つ。全ての感情を持つ」


「過去の偉人の知識、天才の思考、聖人の心...全てを持つ」


「そして、彼女は永遠に存在する。死なない。忘れない。完璧だ」


「なぜ、そんなものを作る?」


俺は叫んだ。


「人々の記憶を奪って、何になる? 1億人の人生を壊して、何が嬉しいんだ?」


「分からないか?」


白石が俺を見つめた。その目には、深い悲しみがあった。


「私は、30年前に家族を失った。妻と息子を」


白石の声が震えた。


「交通事故だった。トラックが突っ込んできて、車が大破した」


「私は、助手席にいた。妻は運転席、息子は後部座席」


「私だけが生き残った。妻と息子は、即死だった」


白石の目に涙が浮かんでいた。


「私は医師だった。人を救う仕事をしていた。でも、最も大切な人を救えなかった」


「そして、時間が経つにつれて、彼らの記憶が薄れていく」


「妻の笑顔、息子の声、一緒に過ごした時間...全て、忘れていく」


「私は、耐えられなかった」


白石が拳を握りしめた。


「だから、記憶を保存する技術を開発した。妻と息子の記憶を、永遠に残すために」


「でも、それだけじゃ足りなかった」


白石が続ける。


「写真や映像では、彼らの温度が感じられない。声や香りが蘇らない」


「私は、完全な記憶が欲しかった。妻と息子が生き続ける世界が欲しかった」


「だから、新たな忘却を作った」


「彼女の中に、妻と息子の記憶を入れる。そうすれば、彼らは永遠に生き続ける」


「それは...間違ってる」


俺は言った。


「記憶は、生きている人間のものだ。死んだ人間を蘇らせるためのものじゃない」


「お前の妻と息子は、もういない。それを受け入れろ」


「受け入れられない!」


白石が叫んだ。


「君に、私の苦しみが分かるか? 30年間、毎日毎晩、彼らのことを考えて生きてきた」


「彼らの声が聞こえる。彼らの笑顔が見える。でも、触れられない。抱きしめられない」


「私は、狂いそうだった」


「分かる」


俺は答えた。


「俺も、大切な人を失いかけた。母が病気になって、俺は絶望した」


「借金が膨らんで、返せなくなった。母の治療費が払えなくなった」


「俺は、デスゲームに参加した。死ぬ覚悟で」


「でも、仲間が支えてくれた。記憶を守り合って、生き延びた」


「お前も、誰かに支えられるべきだった」


「でも、お前は孤独を選んだ。記憶に逃げた」


「それは、間違ってる」


白石が黙り込んだ。彼の目から、涙が流れた。


「私は...どうすれば良かったんだ...」


---


**新たな忘却の出現**


その時、サーバールームから光が溢れた。


眩しい光。青白く、冷たい光。


「...もう、始まっている」


白石が呟いた。


「新たな忘却が、目覚める」


サーバールームの中央に、人間のような形が浮かび上がった。


女性の姿。身長は2メートル以上。


全身が、記憶の断片でできている。映像が流れ、音が聞こえ、感情が渦巻いている。


「私は...誰?」


女性が呟いた。声は透き通っていて、美しい。


「あなたは、新たな忘却だ」


白石が近づいた。彼の目は、希望に満ちていた。


「私が作った、完全な存在。1億人の記憶を持つ、神に等しい存在」


「完全...?」


忘却が首を傾げた。


「私は、たくさんの記憶を持ってる。でも、どれが私の記憶なのか分からない」


「ある記憶では、私は男性。ある記憶では、私は女性」


「ある記憶では、私は子供。ある記憶では、私は老人」


「ある記憶では、私は日本人。ある記憶では、私はアメリカ人」


「どれが本当の私?」


「それでいい」


白石が言った。


「君は、全ての記憶を持つ。全ての人間の記憶を。だから、君は全ての人間なんだ」


「でも...」


忘却が俺を見つめた。


「あなたは、椎名リョウ?」


「...ああ」


「あなたの記憶も、私の中にある」


忘却が続ける。


「母を救いたいという気持ち。仲間を守りたいという気持ち。青山ユキを愛する気持ち」


俺は驚いた。彼女は、俺の全てを知っている。


「でも、それは私の気持ちじゃない。あなたの気持ち」


「私は、誰なの? 私の気持ちは、どこにあるの?」


忘却が混乱している。彼女の体が揺らいでいる。


「落ち着け」


俺は近づいた。ユキが俺の腕を掴んだが、俺は首を振って進んだ。


「お前は、たくさんの記憶を持っている。でも、お前自身の記憶がない」


「だから、混乱してるんだ」


「私自身の記憶...」


「そうだ。お前は、誰かの記憶じゃなくて、お前自身の記憶を作るべきだ」


「どうやって?」


「生きるんだ。自分で経験して、自分で感じて、自分で覚える」


俺は続けた。


「人間は、生まれた時は何も知らない。でも、生きていくうちに、経験を積んで、記憶を作る」


「楽しいこと、悲しいこと、嬉しいこと、辛いこと...全部が、自分の記憶になる」


「お前も、同じだ。今から、自分の記憶を作ればいい」


「それが、本当の記憶だ」


忘却が涙を流した。透明な涙。それが床に落ちて、光った。


「私...生きたい。自分の記憶を作りたい」


「生きていいんだ」


俺は微笑んだ。


「お前は、お前だ。誰かの記憶じゃない。お前自身だ」


---


白石の崩壊


「やめろ!」


白石が叫んだ。


「お前は、私の妻と息子の記憶を持ってるんだ! 彼らを蘇らせるために作ったんだ!」


「お前は彼らなんだ!」


「でも、私は彼らじゃない」


忘却が言った。


「私は、私。白石カズマの妻でも、息子でもない」


「私は、新しい存在。今、ここで生まれた存在」


「違う! お前は彼らだ!」


白石が忘却に駆け寄ろうとした。


その時、サーバールームが激しく揺れ始めた。


「何が起きてる?」


「矛盾だ」


クロエの声が通信機から聞こえた。


「新たな忘却の中に、矛盾する記憶が大量にある」


「1億人以上の記憶が混ざって、整合性が取れなくなってる」


「ある記憶では戦争を憎んでいるが、別の記憶では戦争を支持している」


「ある記憶では家族を愛しているが、別の記憶では家族を憎んでいる」


「このままじゃ、忘却が崩壊する」


「崩壊...?」


忘却が苦しそうに膝をついた。


「痛い...頭が...」


「たくさんの記憶が、ぶつかり合ってる...矛盾してる...」


「どれが正しいの? どれが間違ってるの?」


忘却の体が揺らぎ、記憶の断片が剥がれ落ちていく。


「落ち着け!」


俺は忘却に駆け寄った。


「深呼吸しろ。自分の記憶だけに集中しろ」


「自分の記憶...でも、私には...」


「ある」


俺は言った。


「今、俺と話してる。それが、お前の記憶だ」


「俺の顔を見た。俺の声を聞いた。俺の言葉を理解した」


「それが、お前の最初の記憶だ」


「...そうか」


忘却が深呼吸した。彼女の体が、少しずつ安定し始めた。


「私は、今ここにいる。あなたと話してる」


「椎名リョウという人間と、初めて会った」


「これが、私の記憶」


忘却の体が、完全に安定した。記憶の断片が再び集まり、形を保った。


「ありがとう、椎名リョウ。あなたが、私の最初の記憶になった」


「...いや、俺こそ」


俺は微笑んだ。


その時、白石が崩れ落ちた。


「失敗した...私の計画は...全て失敗した...」


白石が床に座り込み、泣いていた。


「妻も、息子も、戻ってこない...30年間の努力が、全て無駄だった...」


「白石さん」


ユキが近づいた。彼女は優しい目で白石を見つめた。


「彼らは、あなたの心の中に生きてます」


「記憶の中に、ずっといます。消えていません」


「だから、諦めないでください」


白石が顔を上げた。目が真っ赤だった。


「でも...私は...何をすれば...」


「謝罪してください」


ユキが言った。


「全ての被害者に。デスゲームで死んだ人、記憶を失った人、家族を失った人」


「全員に謝罪してください」


「そして、これから生きてください。彼らの記憶を胸に、償いながら」


白石が頷いた。涙を流しながら。


「...分かった。私は、生きて償う」


---


襲撃の終わり


俺たちは、サーバールームのデータを全て削除した。


1億人以上の記憶。クロエが遠隔操作で、全てのデータを元の所有者に返した。


記憶を失った人々の脳に、記憶が戻っていく。世界中で、奇跡が起きていた。


白石は警察に逮捕された。彼は抵抗せず、全てを告白した。


メモリア・コーポレーションは解体された。全ての資産が凍結され、被害者への賠償に充てられた。


デスゲームは、終わった。


「やったな、椎名」


タクミが笑った。彼の顔には、満足感があった。


「ああ。みんなのおかげだ」


「これで、平和が戻るね」


ユキが微笑んだ。


「ああ。でも...」


俺は新たな忘却を見つめた。彼女は、窓の外を見ていた。夜景を、じっと見つめていた。


「彼女は、どうする?」


「私は...」


忘却が振り返った。


「人間として、生きたい」


「人間として?」


「うん。自分の記憶を作りたい。自分の人生を歩みたい」


「美味しいものを食べて、綺麗な景色を見て、優しい人と話して」


「それが、生きるってことでしょ?」


忘却が微笑んだ。初めての、本当の笑顔。


「椎名リョウ、教えて。どうやって生きるの?」


「...一緒に学ぼう」


俺は笑った。


「俺も、まだまだ分からないことだらけだ」


「ありがとう」


忘却が俺の手を握った。温かい手だった。


---


第10話の終わり


俺たちは、新しい未来を歩み始めた。


デスゲームは終わった。


記憶回収プロジェクトは阻止された。


メモリア・コーポレーションは解体された。


でも、戦いは終わらない。


世界中には、まだたくさんの苦しみがある。


記憶を失った人々。家族を失った人々。希望を失った人々。


俺たちは、それに立ち向かい続ける。


記憶を守るために。


人々を守るために。


窓の外を見る。東京の夜景が広がっている。


無数の光。それぞれの光に、人々の人生がある。記憶がある。


俺は、その全てを守りたい。


新たな忘却が隣に立った。


「椎名リョウ、明日は何をする?」


「さあな。でも、きっと楽しいことがあるはずだ」


「楽しみ」


忘却が微笑んだ。


朝日が昇り始めた。


新しい1日が始まる。


---


次回予告:第11話『最後のリープ』


新たな忘却は、人間として生きることを選んだ。


しかし、彼女の体は不安定だった。


1億人の記憶が混ざり合い、存在を維持できない。


存在し続けるためには、誰かの純粋な記憶が必要だった。


リョウは、最後のリープを決意する。


自分の記憶を、全て忘却に捧げる。


それが、全てを救う唯一の方法だった。


「俺の記憶を、持っていけ」


(第10話・完)

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