第9話「記憶回収プロジェクト」

第9話「記憶回収プロジェクト」


母を救うために


「椎名、どうする?」


タクミが聞いた。


俺は母の映像を見つめた。母は眠っている。首には、あの忌まわしい首輪がつけられていた。


病室のモニターには、残り時間が表示されている。


3:00:00


3時間。それが母の命のタイムリミットだ。


「母を救う」


俺は答えた。


「でも、参加者も見捨てない」


「両方は無理だぞ。制限時間は3時間しかない」


タクミが冷静に分析した。


「母さんがいる病院まで車で1時間。戻ってくるのに1時間。残り1時間で参加者全員を救うのは不可能だ」


「それに、首輪を外す方法も分からない」


リクが付け加えた。


「これまでのデスゲームでは、課題をクリアすれば自動的に首輪が外れた。でも今回は違う」


「首輪は遠隔操作されている。解除コードがなければ外せない」


タクミは正しい。


でも、俺には切り札がある。


「なら、リープする」


俺は決意した。


「まず母を救う。失敗したら、リープして最初からやり直す」


「でも、リープすれば...」


ユキが心配そうに見つめる。


彼女は知っている。俺がリープするたびに、誰かの記憶が消えることを。


「誰かの記憶が消える。分かってる」


俺は続けた。


「でも、それしか方法がない。母も、参加者も、全員救うにはリープするしかない」


「椎名...」


ユキの目に涙が浮かんでいた。


「ユキ、お前たちは参加者を守ってくれ。俺は母を救いに行く」


俺は走り出した。


---


病院への道


廃ビルを出て、車に飛び乗った。


タクミの車だ。鍵は刺さったままだった。


「すまない、タクミ。車、借りるぞ」


俺はエンジンをかけ、病院へ向かった。


夜の東京を、全速力で走る。


信号無視。スピード違反。


対向車がクラクションを鳴らす。


でも、止まれない。


母を救わなければ。


俺は、母との記憶を思い返していた。


小学生の頃、母が作ってくれた弁当。


中学の入学式で、母が笑顔で写真を撮ってくれたこと。


高校受験で落ち込んだ時、母が「大丈夫よ」と励ましてくれたこと。


母は、いつも俺を支えてくれた。


だから今度は、俺が母を守る番だ。


---


30分後、病院に着いた。


母がいる病室は3階の305号室だ。


俺は階段を駆け上がった。


1階、2階、3階。


息が切れる。でも、止まらない。


廊下を走る。看護師が「走らないでください!」と叫んだが、無視した。


305号室。


母の病室のドアを開けた。


「母さん!」


母はベッドに横たわっている。首輪がついている。


ALSの進行で、母はもうほとんど動けない。でも、目だけは俺を捉えていた。


「リョウ...」


母が微かに笑った。


「大丈夫...心配しないで」


「母さん、今すぐその首輪を外す」


俺は首輪に手をかけた。


金属製で、頑丈だ。ロックがかかっている。


「くそ、どうやって外すんだ...」


その時、首輪が赤く点滅し始めた。


ピピピピピ——


「やばい!」


俺は母を抱きかかえようとした。


ドンッ!


首輪が爆発した。


---


母を救えなかった


視界が真っ白になる。


激痛。


そして、暗転。


---


1回目のリープ。


気づいたら、廃ビルのホールに戻っていた。


スクリーンにクロエの顔が映る直前。


「はあ、はあ...」


息が荒い。心臓が激しく鼓動している。


母を救えなかった。


爆発を止められなかった。


首輪を外す時間がなかった。


「椎名くん、大丈夫?」


ユキが心配そうに見つめる。


「...もう一度だ」


俺は立ち上がった。


拳を握りしめる。手が震えている。


「今度は、首輪を外す方法を見つける」


---


2回目の挑戦:首輪の解除方法


スクリーンが点灯した。


クロエの顔が映る。


「さあ、選択して。参加者を救うか、母親を救うか」


「待て、クロエ」


俺は叫んだ。


「首輪を外す方法を教えろ」


「あら、リープしたのね」


クロエが冷たく笑った。


「何回リープしても、無駄よ。首輪は私たちのサーバーで管理されてる。解除コードなしでは外せない」


「解除コード...」


「そうよ。メモリア・コーポレーションの本社サーバーにアクセスしなければ、首輪は外せない」


「しかも、サーバールームは最高レベルのセキュリティで守られてる。あなたたちには絶対に侵入できないわ」


「本社はどこだ?」


「教えるわけないでしょ」


クロエの映像が消えた。


くそ。


どうすればいい。


「椎名」


タクミが俺の肩を叩いた。


「俺が調べる。メモリア・コーポレーションの本社を」


タクミがノートパソコンを取り出した。


「元刑事の人脈がある。警察のデータベースにもアクセスできる。10分待ってくれ」


「頼む」


---


10分後。


タクミが叫んだ。


「見つけた。本社は六本木ヒルズ52階だ」


画面には、メモリア・コーポレーションの企業情報が表示されている。


所在地:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階


「六本木ヒルズ...ここから車で30分か」


俺は決断した。


「タクミ、ユキ、リク。お前たちは参加者を守ってくれ。俺は本社へ行く」


「分かった。気をつけろ」


「椎名くん...」


ユキが俺の手を握った。


「無理しないで。死んだら、また記憶が消える」


「ああ。でも、行くしかない」


俺は再び廃ビルを飛び出した。


---


メモリア・コーポレーション本社へ


六本木ヒルズ。


夜空に聳え立つ、52階建ての巨大なビル。


東京のランドマークの1つだ。


俺はビルのエントランスに入った。


警備員が2人、受付カウンターにいる。


「すみません、メモリア・コーポレーションに用事が...」


「予約はありますか?」


若い警備員が無表情で聞いた。


「いえ、緊急で...」


「予約がない方は入館できません。お帰りください」


警備員が俺を追い払おうとする。


くそ。


正面から入るのは無理か。


俺は一旦、ビルの外に出た。


裏口はないか。非常階段は。


ビルの周りを歩き回る。


その時、警報が鳴り響いた。


「火災発生! 全員避難してください!」


自動音声が繰り返される。


警備員たちが慌てて走り出す。


今だ。


俺は混乱に紛れてエントランスに戻り、エレベーターに飛び込んだ。


52階のボタンを押す。


エレベーターが上昇する。


10階、20階、30階...


表示される数字を見ながら、俺は心の準備をした。


クロエがいる。


彼女は、俺たちを苦しめてきた張本人だ。


でも、彼女も誰かに操られているのかもしれない。


---


52階。


エレベーターの扉が開いた。


広いオフィスフロア。


高級な家具。大きな窓からは、東京の夜景が一望できる。


中央には、ガラス張りのサーバールームがある。


無数のサーバーが並び、青い光を放っている。


「そこまでよ、椎名リョウ」


クロエが現れた。


彼女は黒いスーツを着て、手には銃を持っている。


「よく来たわね。でも、無駄よ」


クロエが銃を向けてきた。


「ここで死になさい」


パンッ!


銃声が響いた。


俺の胸に、激痛が走る。


「うっ...」


倒れる。


血が流れる。視界が暗くなる。


---


2回目のリープ。


---


2回目のリープ:別のアプローチ


廃ビルのホールに戻った。


「はあ、はあ...」


息が荒い。胸を押さえる。傷はない。でも、痛みの記憶が残っている。


2回リープした。


つまり、2人の記憶が消えた。


クロエに撃たれた。


直接本社に行くのは無理だ。


「椎名くん...」


ユキが心配そうに見つめる。


「大丈夫。今度は別の方法を試す」


俺は考えた。


サーバーにアクセスする方法。


直接本社に行っても、警備が厳重すぎる。


そうだ。ハッキングだ。


「タクミ、ハッカーの知り合いはいるか?」


「ハッカー...?」


タクミが考え込む。


「元刑事の人脈にはいないな。捕まえる側だったから」


「俺、少しできます」


リクが手を挙げた。


「前の会社でシステムエンジニアをやってました。ハッキングも少し勉強しました」


「頼む。メモリア・コーポレーションのサーバーに侵入して、首輪の解除コードを見つけてくれ」


「分かりました。やってみます」


リクがノートパソコンを取り出し、作業を始めた。


キーボードを叩く音。


画面には、複雑なコードが流れている。


```

Accessing server...

IP: 203.104.52.1

Port: 8080

Status: Connection refused

```


「ファイアウォールが強固です...別のポートを試します」


リクが汗を拭いながら作業を続ける。


10分後。


「...ダメです」


リクが諦めた表情を浮かべた。


「セキュリティが強固すぎて、侵入できません。軍事レベルの暗号化がされています」


「くそ...」


俺は頭を抱えた。


どうすればいい。


母のタイムリミットは、あと2時間を切っている。


その時、参加者の1人が叫んだ。


「あと2時間で、全員死ぬぞ! 何とかしろ!」


「そうだ! 俺たちを助けろ!」


参加者たちがパニックになっている。


「落ち着け!」


タクミが叫ぶ。


でも、参加者たちは聞かない。数人が出口に向かって走り出した。


その時、スクリーンが再び点灯した。


クロエが映っている。


「時間がないわね。残り2時間よ」


クロエが冷たく笑った。


「椎名リョウ、あなたは何回リープしても、無駄よ。私たちのシステムは完璧なの」


「ふざけるな!」


「でも、1つだけ方法がある」


クロエが続ける。


「私と取引しない?」


---


取引の提案


「取引...?」


俺は警戒した。


「そう。あなたのリープ能力を、私たちに提供して」


クロエが続ける。


「あなたの能力は貴重よ。死に戻れる能力。それを研究させてくれれば、お母さんも参加者も全員助ける」


「どういうことだ」


「簡単よ。あなたの脳を研究させてもらうの。どうやってリープできるのか、メカニズムを解明する」


「そして、その技術を商品化する。そうすれば、私たちは莫大な利益を得られる」


クロエの目が光っている。


「どう? 悪くない取引でしょ?」


俺は考えた。


リープ能力を渡せば、全員が助かる。


母も、参加者も。


でも、俺の能力が悪用される。


デスゲームがさらに拡大する。


世界中で、もっと多くの人が苦しむことになる。


「断る」


俺は答えた。


「俺の能力を、お前たちには渡さない」


「そう。残念ね」


クロエの表情が冷たくなった。


「では、お母さんも参加者も、全員死ぬわ」


クロエの映像が消えた。


俺は、また行き詰まった。


どうすればいい。


---


「椎名くん」


ユキが俺の手を握った。


「私に、考えがある」


「何だ?」


「私が、クロエに会いに行く」


「え?」


俺は驚いた。


「危険すぎる」


「大丈夫。私は医学生。人体実験の倫理を学んでる」


ユキが続ける。


「メモリア・コーポレーションがやってることは、明らかに違法。記憶の売買、人体実験、デスゲーム...全て、医療倫理に反してる」


「それを指摘すれば、クロエも動揺するかもしれない」


「でも、クロエは聞く耳を持たないかもしれない」


「それでも、試す価値はある」


ユキが真剣な目で俺を見つめた。


「椎名くんがリープして記憶を失うより、私が説得を試みる方がいい」


「...」


俺は迷った。


ユキを危険に晒したくない。


でも、他に方法がない。


「分かった。でも、俺も一緒に行く」


「ありがとう」


ユキが微笑んだ。


「タクミ、リク。お前たちは参加者を守ってくれ」


「分かった。気をつけろ」


俺とユキは、再び六本木ヒルズへ向かった。


---


ユキの説得:第1ラウンド


メモリア・コーポレーション本社。


52階。


今度は、前回のリープの経験を活かして、非常階段から侵入した。


警備員に見つからないよう、慎重に進む。


サーバールームの前に着いた。


クロエが待っていた。


「あら、椎名リョウと...青山ユキね」


クロエが冷たく笑った。


「前回のリープで学習したのね。でも、無駄よ」


クロエが銃を構える。


「待ってください」


ユキが一歩前に出た。


「私たちは、戦いに来たわけじゃありません」


「じゃあ、何?」


「話をしに来ました。あなたのやってることは、違法です」


ユキが言った。


「記憶の売買、人体実験、デスゲーム...全て、人権侵害です」


「そうかしら? 参加者は自分の意志で参加してるわ」


クロエが反論した。


「契約書にもサインしてる。全て合法よ」


「違います」


ユキが反論した。


「借金や病気で追い詰められて、選択肢がない人たちです。そんな状態でのサインは、法的に無効です」


「強要による契約は、民法第96条で取り消せます」


ユキが続ける。


「それに、記憶を奪うことは、人格を破壊することです。人格権の侵害で、許されません」


「綺麗事ね」


クロエが冷たく笑った。


「この世界は、金がすべて。私たちは、金を稼いでるだけ」


「弱者から搾取して?」


「そうよ。それが資本主義よ」


クロエが銃を向けた。


「もう話は終わり。帰りなさい」


---


ユキの説得:第2ラウンド


「待ってください」


ユキが叫んだ。


「あなたは、本当にそれでいいんですか?」


「何が言いたいの?」


「あなたも、かつては普通の人間だったはずです」


ユキが続ける。


「医療関係の仕事をしていたんでしょう? 記憶の研究をしていたと聞きました」


「...どうして、それを」


クロエの表情が変わった。


「調べました」


ユキが答えた。


「クロエ・ミラー。元神経科学者。ハーバード大学で記憶のメカニズムを研究していた」


「10年前、画期的な論文を発表しましたね。『記憶の保存と復元に関する新理論』」


「でも、その後、研究から姿を消した」


ユキが続ける。


「何があったんですか?」


「...」


クロエが黙り込んだ。


銃を下ろす。


「あなたには...関係ない」


「いいえ、関係あります」


ユキが一歩近づいた。


「あなたが今やってることは、あなたの研究を冒涜してます」


「記憶は、人を救うための技術だったはずです。でも、今は人を苦しめてる」


「...」


クロエの手が震えていた。


「私だって...」


クロエの声が震えた。


「私だって、最初は人を救いたかった」


---


クロエの過去


クロエが語り始めた。


「10年前、私には家族がいた。夫と、5歳の息子」


「夫の名前はデイヴィッド。息子はトーマス」


「私たちは幸せだった。普通の、でも幸せな家族」


クロエの目に涙が浮かんでいた。


「でも、ある日、交通事故が起きた」


「夫と息子は、即死だった」


「私だけが、生き残った」


「...」


俺とユキは、黙って聞いていた。


「私は、彼らの記憶にすがって生きてきた」


クロエが続ける。


「夫の笑顔。息子の笑い声。一緒に過ごした時間」


「でも、時間が経つにつれて、記憶が薄れていく」


「夫の声が思い出せなくなった。息子の顔が曖昧になった」


「それが、恐ろしかった」


クロエが涙を流した。


「だから、メモリア・コーポレーションに入った」


「記憶を保存する技術を学ぶために。失われた記憶を取り戻すために」


「社長の白石カズマも、家族を失っていた。私たちは、同じ痛みを抱えていた」


「だから、一緒に研究を始めた」


「最初の1年は、本当に純粋な研究だった。記憶のメカニズムを解明し、記憶障害を持つ人々を救う技術を開発していた」


「でも、2年目から変わった」


クロエが続ける。


「白石は、資金不足に悩んでいた。研究には莫大な資金が必要だった」


「そして、ある投資家が現れた。記憶の商業化を提案してきた」


「『記憶を売買すれば、莫大な利益が得られる』と」


「白石は、最初は反対していた。でも、研究を続けるためには資金が必要だった」


「だから、彼は妥協した」


「そして、デスゲームが始まった」


「私は、止めようとした。『これは間違ってる』と何度も言った」


クロエの声が震えた。


「でも、白石は聞かなかった。『研究のためだ。多少の犠牲は仕方ない』と」


「そして、私も...いつの間にか、同じように考えるようになっていた」


「記憶を集めれば、夫と息子の記憶を復元できるかもしれない。そう思った」


「だから、デスゲームを容認した。手伝った。運営した」


「何百人もの人々を苦しめながら」


クロエが俯いた。


「私は、もう取り返しがつかない」


---


ユキの言葉


「クロエさん...」


ユキが近づいた。


「あなたは、被害者じゃありません」


「え...?」


クロエが顔を上げた。


「あなたは、加害者です」


ユキがはっきりと言った。


「家族を失った悲しみは理解します。でも、それを理由に他人を苦しめることは許されません」


「あなたは、何百人もの人々を苦しめてきました。記憶を奪い、命を奪い、家族を引き裂いてきました」


「それは、あなたの選択です。被害者のふりをして、責任から逃げないでください」


「...」


クロエが震えた。


「私は...私は...」


「でも、まだ遅くありません」


ユキが続けた。


「今から、やり直せます。償えます」


「やり直す...? こんな私が...?」


「はい。首輪の解除コードを教えてください。そうすれば、椎名くんのお母さんも、参加者たちも、全員が助かります」


「それが、あなたの償いの第一歩です」


「でも...会社に逆らえば、私が...白石に殺される」


クロエが震えた。


「彼は、裏切り者を許さない。私の家族のように、殺される」


「大丈夫。私たちが守ります」


ユキが微笑んだ。


「椎名くんも、タクミさんも、みんなで守ります」


「でも、あなたたちは普通の人間でしょ? 白石には、武装した部下が何十人もいる」


「ああ」


俺が言った。


「でも、俺にはリープ能力がある。何度でも失敗できる」


「そして、タクミには元刑事の人脈がある。警察を動かせる」


「お前が内部告発すれば、白石を逮捕できる」


クロエが目を見開いた。


「本当に...私を守ってくれるの?」


「ああ」


俺は頷いた。


「お前も、被害者だ。白石に利用されてきた」


「今から、一緒に戦おう」


---


クロエの葛藤


クロエが震えた。


銃を床に落とす。


「私は...どうすれば...」


クロエが泣き崩れた。


「私は、もう何が正しいのか分からない」


「夫と息子を取り戻したい。でも、それは不可能だ」


「だから、せめて記憶だけでも...」


「でも、そのために何百人も苦しめてきた」


ユキがクロエの肩に手を置いた。


「あなたの夫と息子は、あなたが他人を苦しめることを望んでいますか?」


「...いいえ」


クロエが答えた。


「彼らは優しかった。人を傷つけることを嫌っていた」


「デイヴィッドは、いつも言っていた。『人には親切にしなさい』って」


「トーマスは、虫も殺せない優しい子だった」


「なら、彼らのために、正しいことをしてください」


ユキが続ける。


「それが、彼らへの一番の供養です。彼らの記憶を汚さないために」


クロエが長い沈黙の後、頷いた。


「...分かった」


クロエが立ち上がった。


「解除コードを教える。でも、それだけじゃない」


クロエがサーバールームのドアを開けた。


「白石カズマの計画も教える。記憶回収プロジェクトの全貌も」


「全て、暴露する。それが、私の償いの始まり」


「クロエさん...」


ユキが微笑んだ。


「ありがとうございます」


---


解除コードの入手


クロエがパソコンを操作した。


サーバールームの巨大なモニターに、複数の解除コードが表示された。


「これが、全ての首輪の解除コード」


クロエが説明する。


「お母さんの首輪は、コード: M-305。参加者たちは、コード: P-001からP-050」


「これを入力すれば、全員の首輪が外れる」


「ありがとう、クロエさん」


俺は、急いで病院へ電話をかけた。


「もしもし、305号室の椎名ミチルの首輪を外してください。解除コードは、M-305です」


「分かりました。今すぐ対応します」


看護師の声が聞こえた。


数分後。


「外れました。お母さんは無事です」


「良かった...」


俺は安堵した。涙が溢れてきた。


母を救えた。


次は、参加者たちだ。


---


廃ビルへ戻る


俺とユキとクロエは、廃ビルへ戻った。


「みんな、大丈夫か?」


タクミが安堵の表情を浮かべた。


「椎名、どうだった?」


「解除コードを手に入れた。そして...」


俺はクロエを見た。


「クロエさんが、協力してくれることになった」


「クロエが...?」


タクミが驚いた。


参加者たちも、警戒の目でクロエを見ている。


「ああ。彼女も、白石カズマに利用されてた」


「いいえ」


クロエが首を振った。


「私は加害者です。でも、今から償います」


クロエが参加者たちに近づいた。


「皆さん、本当に申し訳ありませんでした」


クロエが深く頭を下げた。


「私が、あなたたちをこの地獄に引きずり込みました。許してとは言いません。でも、償わせてください」


参加者たちが、驚いた表情で見ている。


「今から、全員の首輪を外します」


クロエが1人ずつ、解除コードを入力していった。


ピピッ。


首輪が外れる音。


「外れた...!」


「助かった...!」


参加者たちが泣き崩れた。


「ありがとう...本当に、ありがとう...」


30代の男性が、俺の手を握った。


「あなたが、俺たちを救ってくれた」


「いや、みんなで協力したんだ」


俺は笑った。


「ユキが説得してくれた。クロエさんが勇気を出して協力してくれた。みんなのおかげだ」


---


メモリア・コーポレーションの真実


全員の首輪を外した後、クロエが俺たちに言った。


「あなたたちに、伝えなければならないことがある」


クロエがノートパソコンを開いた。


画面には、機密文書が表示されている。


『記憶回収プロジェクト』


「これが、メモリア・コーポレーションの真の目的」


クロエが説明を始めた。


「私たちは、世界中の記憶を集めて、新たな忘却を作り出そうとしてる」


「新たな忘却...?」


「そう。人工的に作り出された、完全な存在」


クロエが資料を見せた。


プロジェクト概要:

目的:人工知能型忘却の創造

必要記憶数:10億人分

現在の収集数:1億人分(進捗10%)

完成予定:2038年


「世界中のデスゲームで記憶を集め、巨大なデータベースを構築する」


「そして、そのデータベースから、人工知能のような存在を作り出す」


クロエが続ける。


「これが完成すれば、人類の全ての記憶を支配できる」


「記憶を自由に書き換え、消去し、新たに植え付けることができる」


「つまり、人類の思考と行動を完全にコントロールできる」


「くそ...」


タクミが呟いた。


「それは、人類の終わりだ」


「ええ。白石カズマは、それを目指してる」


クロエが続ける。


「彼は、30年前に家族を交通事故で失った。妻と娘を」


「それ以来、彼は記憶に取り憑かれてる。家族の記憶を取り戻すため、あらゆる手段を使ってきた」


「でも、失われた記憶は戻らなかった」


「だから、彼は新たな目標を立てた。『記憶を支配すれば、二度と大切なものを失わない』と」


「俺たちは、彼を止めなければならない」


タクミが言った。


「ああ。でも、どうやって?」


「本社を襲撃する」


タクミが続ける。


「俺の元刑事の仲間を集める。警察も動かす」


「でも、証拠が...」


「ある」


クロエが言った。


「私が、内部告発する。全てのデータを警察に渡す」


「デスゲームの記録、参加者のリスト、記憶売買の取引履歴、記憶回収プロジェクトの資料...全て」


「クロエさん...」


「これが、私の贖罪よ」


クロエが微笑んだ。


「夫と息子に、顔向けできるように」


---


俺たちは、新たな決意を固めた。


メモリア・コーポレーションを倒す。


白石カズマを止める。


記憶回収プロジェクトを阻止する。


窓の外を見る。夜明けが近づいている。


オレンジ色の光が、東京の街を照らし始めている。


「みんな、準備はいいか?」


俺は仲間たちを見渡した。


ユキ、タクミ、リク、クロエ、そして救出した参加者たち。


「ああ」


全員が頷いた。


「じゃあ、行くぞ。最後の戦いに」


次回予告:第10話『矛盾の連鎖』


メモリア・コーポレーション本社への襲撃。


白石カズマとの対決。


そして、新たな忘却が出現する。


1億人以上の記憶が混ざり合い、矛盾が崩壊の危機に。


リョウは、究極の選択を迫られる。


世界中の記憶を守るために。


【第9話・完】

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