第6話「記憶の迷路」
第6話「記憶の迷路」
朝:6日目の始まり
朝、俺は母の写真を見つめていた。
「この人...誰だっけ?」
写真の女性は、優しく笑っている。大切な人だった気がする。でも、名前も、関係も、思い出せない。
「椎名くん」
ユキが声をかけてきた。
「それ、お母さんの写真だよ。あなたは、お母さんを救うためにこのゲームに参加したの」
「母...さん?」
俺は写真を見つめた。
「そうだったのか...」
でも、記憶がない。母との思い出が、全て消えている。
「椎名くん、大丈夫。今日の課題で、記憶を取り戻せるかもしれない」
ユキが励ましてくれた。
「...ああ」
その時、スピーカーからクロエの声が流れた。
「おはよう。6日目の課題を始めるわ」
第6日目の課題:記憶の迷路
俺たちは中央ホールへ集められた。
中央には、巨大な迷路の入り口が現れていた。壁は鏡でできていて、自分の姿が無数に映り込んでいる。
「今日の課題は『記憶の迷路』よ」
クロエが説明を始める。
「この迷路の中には、あなたたち一人一人の『失われた記憶』が散らばっている」
ざわめきが広がる。
「家族の顔、恋人との思い出、子供の名前...全て、迷路のどこかにある」
クロエが続ける。
「制限時間は6時間。迷路のゴールに辿り着けば、あなたの記憶が1つ戻る。失敗すれば...全ての記憶を失う」
「全ての記憶...?」
タクミが聞く。
「その通り。自分が誰なのかも分からなくなる。廃人よ」
クロエが笑った。
「さあ、記憶を取り戻すために、迷路を攻略して」
迷路の開始:分岐と罠
俺たちは迷路に入った。
入り口から、すぐに4つの道に分かれている。
「別々に進むしかないな」
タクミが言った。
「ああ。6時間後、ゴールで会おう」
俺は左の道を選んだ。
迷路の壁は鏡でできている。自分の姿が無数に映る。
歩き始めて5分。
壁に、映像が浮かび上がった。
幼い俺と、母が一緒にいる映像だ。
公園で、母が俺にアイスを買ってくれている。
「リョウ、何味がいい?」
「チョコレート!」
幼い俺が笑っている。
母も笑っている。
「これ...俺の記憶か?」
映像が消えた。
そして、壁に文字が浮かび上がった。
『右へ進め』
右の道へ進むと、また映像が現れた。
今度は、中学生の俺と母だ。
「リョウ、勉強頑張ってるね」
「うん。母さんのために、いい高校に入る」
「ありがとう」
母が俺の頭を撫でている。
映像が消えた。
『左へ進め』
俺は迷路を進み続けた。
1回目の失敗:時間切れ
2時間後。
俺はまだゴールに辿り着けていなかった。
迷路は複雑で、何度も同じ場所に戻ってしまう。
「くそ...どこがゴールなんだ...」
3時間後。
壁に、新しい映像が現れた。
高校生の俺と母だ。
「リョウ、大学に行きたいの?」
「ああ。でも、お金が...」
「大丈夫。私が働くから」
母が微笑んでいる。
「ありがとう、母さん」
映像が消えた。
でも、ゴールはまだ見えない。
4時間後。
壁に、また映像が現れた。
今度は、母が病院のベッドに横たわっている。
「母さん...」
俺が母の手を握っている。
「リョウ...ありがとう...」
母が涙を流している。
「母さん、大丈夫。治療費、必ず払うから」
「無理しないで...」
「俺は、母さんを救う」
映像が消えた。
5時間後。
俺はまだ、ゴールに辿り着けない。
「どこだ...どこにゴールがあるんだ...」
6時間後。
ピピピピピ——
首輪が赤く点滅し始めた。
「やばい...」
ドンッ!
首輪が爆発した。
1回目のリープ:朝に戻る
視界が暗転する。
朝に戻った。
「はあ、はあ...」
息が荒い。
迷路を攻略できなかった。
でも、迷路の構造は覚えた。
2回目〜13回目:繰り返される挑戦
俺は、何度もリープした。
2回目:右ばかり進んだが、行き止まりだった。
3回目:左ばかり進んだが、同じ場所に戻った。
4回目:直進したが、罠に引っかかって時間切れ。
5回目:タクミと一緒に進んだが、途中で道が分かれた。
6回目:ユキの助言を受けたが、やはり時間切れ。
7回目:リクと協力したが、ゴールは見つからなかった。
8回目:全員で協力したが、迷路が変化した。
9回目:迷路の法則を見つけようとしたが、法則がなかった。
10回目:記憶の映像を全て追ったが、時間が足りなかった。
11回目:最短ルートを探したが、罠だらけだった。
12回目:ゴールに辿り着いたが、最後の扉が開かなかった。
13回目...
13回目のリープ:全てを把握する
朝に戻った。
「はあ、はあ、はあ...」
息が荒い。全身が震えている。
13回リープした。
つまり、13人分の記憶が消えた。
「椎名くん...」
ユキが俺に駆け寄った。
でも、俺にはユキの名前が思い出せなかった。
「お前...名前、何だっけ?」
「青山ユキだよ」
「ああ...そうだった...」
俺は頭を抱えた。
俺自身の記憶が、ほとんど消えている。
自分の名前は覚えている。椎名リョウ。
でも、それ以外が曖昧だ。
母の顔、母との思い出、友人のこと、学校のこと...
全て、断片的にしか思い出せない。
「でも...迷路の構造は、全て把握した」
俺は立ち上がった。
「みんなを、ゴールへ導ける」
14回目の挑戦:全員をゴールへ
6日目の課題。記憶の迷路。
「みんな、俺についてこい」
俺は言った。
「迷路の構造を、全て把握してる」
「本当か?」
タクミが聞く。
「ああ。13回、繰り返した」
俺は迷路に入った。
「最初は左。次は右。3つ目の分岐は直進」
俺は迷わず進んだ。
「すごい...」
ユキが呟いた。
「椎名、お前...何回リープしたんだ?」
タクミが聞く。
「...数えてない。でも、たぶん20回以上だ」
俺は続けた。
「ここを右。次は左。罠があるから注意しろ」
俺たちは順調に進んだ。
1時間後。
「もうすぐゴールだ」
2時間後。
俺たちは、巨大な扉の前に辿り着いた。
「これが...ゴールか?」
タクミが扉に触れた。
扉が開いた。
中には、4つの箱が置かれている。
それぞれに、俺たちの名前が書かれている。
「これが...俺たちの記憶か」
俺は自分の名前が書かれた箱を開けた。
中には、写真が何枚も入っていた。
母との写真。幼少期、中学、高校、そして今。
写真を見た瞬間、記憶が蘇った。
「母さん...」
母の顔が、思い出せる。
母との思い出が、戻ってくる。
「母さんを、救うために...」
涙が流れた。
「俺は、ここにいるんだ」
ユキも箱を開けた。
「患者さん...ごめんなさい...」
ユキが泣いている。
医療ミスで亡くなった患者の記憶が戻ったのだ。
タクミも箱を開けた。
「ミク...娘の名前は、ミクだ...」
タクミが娘の写真を見つめている。
リクも箱を開けた。
「娘の名前は...ユイだ」
リクが涙を流している。
ピピッ!
全員の首輪が緑色に光った。
『課題クリア』
ゴールでの対話
ゴールの部屋で、俺たちは座り込んだ。
「椎名...お前、本当に20回以上リープしたのか?」
タクミが聞いた。
「...ああ」
「つまり、20人以上の記憶が消えた」
「ああ。お前たち、そして俺自身の記憶が」
「...すまない」
タクミが頭を下げた。
「お前のせいじゃない。俺が選んだことだ」
俺は続けた。
「俺は、お前たちを守りたかった。だから、リープした」
「椎名くん...」
ユキが俺の手を握った。
「ありがとう。あなたのおかげで、私たちは生きてる」
「...ああ」
その時、部屋の中央に、新しい映像が現れた。
巨大なスクリーンに、忘却の姿が映し出された。
忘却の出現
「よくやったね、椎名リョウ」
忘却の声が響いた。
「20回以上のリープ。素晴らしい。お前のおかげで、たくさんの記憶を集められた」
「忘却...!」
俺は立ち上がった。
「お前を倒す。必ず」
「できるかな?」
忘却が笑った。
「お前は、もう限界だ。記憶がボロボロになっている」
「それでも、戦う」
「面白い。では、最後の試練を与えよう」
忘却の声が変わった。
「7日目。最終日だ。お前たちは、選択を迫られる」
「選択...?」
「自分の命か、仲間の記憶か」
忘却が続けた。
「赤いボタンを押せば、全員が生き残る。でも、押した者は死ぬ」
「青いボタンを押せば、押した者は生き残る。でも、全員の記憶が消える」
「選択しろ。7日目に」
忘却の映像が消えた。
夜:仲間との誓い
夜、俺たちは共同生活エリアに戻った。
「明日が、最終日か」
タクミが呟いた。
「ああ。忘却との最終決戦だ」
「椎名くん、どうする?」
ユキが聞く。
「...赤いボタンを押す」
俺は答えた。
「俺が死ぬ。お前たちは、生き残れ」
「ダメだ!」
タクミが叫んだ。
「お前が死んだら、誰が忘却を倒すんだ?」
「...」
「俺が押す。俺は、もう娘の顔を何度も忘れた。これ以上、記憶を失いたくない」
「タクミ...」
「いや、俺が押す」
リクが言った。
「俺も、娘の名前を忘れた。でも、お前たちは生きてくれ」
「リクさん...」
「ダメだよ、みんな」
ユキが涙を流した。
「誰も死なないで。一緒に、忘却を倒そう」
「でも、どうやって...」
その時、俺は気づいた。
「待て...忘却の言葉を思い出せ」
「何だ?」
「『赤いボタンを押せば、全員が生き残る。でも、押した者は死ぬ』」
俺は続けた。
「もし、俺がリープ能力を使って、死んだ後に時間を戻せば...」
「つまり、お前が赤いボタンを押して死んだ後、リープで戻れば、全員が助かる...?」
タクミが目を見開いた。
「でも、リープすれば、また誰かの記憶が消える」
「ああ。でも、それしか方法がない」
俺は決意した。
「明日、俺が赤いボタンを押す。そして、リープする。お前たちの記憶を守るために」
「椎名くん...」
ユキが俺を抱きしめた。
「ありがとう。でも、無理しないで」
「...大丈夫だ」
嘘だ。全然大丈夫じゃない。
でも、これが最後の戦いだ。
翌朝、俺は目を覚ました。
窓の外を見る。朝日が昇っている。
7日目。最終日が始まる。
俺は、赤いボタンを押す。
そして、忘却を倒す。
仲間の記憶を守るために。
母を救うために。
次回予告:第7話『選択』
「自分の命か、仲間の記憶か」
最終日。リョウは赤いボタンを押す決意をする。
そして、忘却の世界へ。
真実が明らかになる。
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