クローズド・サークルと化した孤島で一族を一人残らず皆殺しにした男。
血塗れになった男は湖で体を清めようとしたところで、後頭部に強い衝撃を受けて命を落とすことに。
島には男の他に生存者は一人も残っていないにもかかわらず……。
言わずとしれたアガサ・クリスティの名作オマージュに真正面から果敢に挑んだ本格ミステリ作品です。
丹念に読めば事件の真相は推理可能となっております。
そして忘れちゃいけないのが、この作品はお題フェス11『天気』を踏まえて書かれたということ。
本格ミステリとして面白いだけでなく、お題にマッチした真相を考案するという離れ業を成し遂げた作者は間違いなく本格ファンタジスタ!!
本格ファンはすべからく見よ!!
出てくる探偵さんがすごく濃い!
凄惨な殺人事件。犯人と思しき男の謎の死。そんな血みどろな感じを見た後、ふわふわっとした美少女探偵が出てくる。
このギャップがなんとも良いです。
冒頭から羽田健介により一族惨殺という実に禍々しい事件が起こります。歪んだ一族によって虐げられし彼。そんな彼が無事に「大量虐殺」を成功させる。
その直後、彼は頭に強い衝撃を受けて倒れることに。
……なんか、すごく怖い話が始まりそう。
そう思って読み進め、刑事による事件の検証。そして現れるは「名探偵四天王」の一人である吉野桜なるゆるふわな女の子だった。
常に肩にはマインという名前のフクロウを乗せ、「実はそっちが探偵の本体」みたいな設定もあるという。
事件の血なまぐささを一瞬にして帳消しにしてしまう、この名探偵キャラの存在感。
本格ミステリが好きな人間としては、このキャラクターの濃さにニヤリとせずにはいられませんでした。
本格はやっぱり事件や推理の楽しさもいいけれど、探偵のキャラクターの濃さなんかを見るのも同じく味わい深い点だよねえ、としみじみと思わされました。
そして、彼女によってサクっと解決される真相。なるほど、というオチがまた良かったです。
あと個人的には「名探偵四天王」として名前の挙がっている「黒蜘蛛」が気になる。一体どんなキャラなんだ……
本作はアガサクリスティの名作、「そして誰もいなくなった」をオマージュした作品です。
闐闐(どんど)という闇の深い一族がいた。彼らは至るところで不幸を振り撒き、疫病神のような扱いを受けているらしい。
現在、一族の長を務めているのが闐闐政文。彼には一人息子の穣太郎がいる。
その穣太郎の妾の子が主人公の羽田健太。母の苗字を継いでいるから闐闐姓は名乗っていないようです。
健太は一族の血を引いているせいで周囲を不幸にしてきたことや、妾の子という理由で一族から毛嫌いされたことで、闐闐一族に恨みを抱き、一家を全滅させようとします。
そして健太は絶海の孤島・浮世島にある別邸・天神館というところで自分以外の闐闐家の者を皆殺しにし、最後は自分も死のうとします。
その前に身を清めようと、島の中央にある龍神池に入っているとき、後頭部に強い衝撃を受け、彼は死んでしまいます。
なぜ彼は死んだのか?
全員殺していたはず。
池の周囲には頭を打ちつけるような物体が存在しない。
手がかりは、健太の右手のすぐ近くにあった、円の中に正三角形が入っている絵。三つの頂点が円周上にあり、健太が死ぬ直前に書いたもののようです。
もうひとつの手がかりは、島の多くの場所で、ゴルフボールの下半分を地面にねじこんだような感じの穴が見つかったこと。
さて、あなたはこれらのヒントを元に真相に辿り着けるでしょうか?
私は辿り着けませんでしたが、答えを知った時、「ああ、そっか! そういうことだったのか」と納得しました。
天気というお題とよく絡んでいるのが素晴らしいと思います。サクッと読めるので、是非読んでみてください。