明日も晴れない

龍羽

ハレの日の甘いハニーミルク



「今日は素敵なお茶をご用意しましたの」


 ごきげんよう。

 私の名前はジュエルリータ・ナイヴス。

 偉〜い大臣のお父様の娘です。


 今日は私のお気に入りの花を集めた庭園で陛下とティータイムを楽しむ日です。昨日レディに招待状を送らせたのですが、今朝はお仕事があるからとダメでした。朝食をご一緒したかったのに残念です。

 なので午後になってしまいましたが、私のために陛下が時間を作ってくれたことが嬉しいですわ。だって素敵なティータイムになりますもの。

 私は用意させたティーセットに近寄ります。私お気に入りの可愛い逸品ですの。二つで一つのお揃いセットなのです。ああ、胸が高鳴りますわ。


 私が立ったままなのを心配して陛下がお声をかけてくださりました。

「其方が淹れるのか。珍しいな」

「市井では美味しいお茶を己で入れる風習があるそうですわ。それを聞いて私もやってみたくって———陛下もきっと気に入ってくださると思いますわ」


 ああ緊張する。

 でも大丈夫。

 全部レディが用意してくれたもの。

 あとはカップに注ぐだけ———なんて簡単なんでしょう。これができない方がいらっしゃるなんて信じられません。


 でもレディったら蜂蜜を入れ忘れていましたわ。

 どのくらい入れれば良いのでしょう?

 そうね、いつもカップに入れるより多めにしましょう。

 二人分ですもの。それが良いですわ。


 たっぷりの蜂蜜を注ぎ、そこに用意されていたティースプーンでかき混ぜて準備万端。まずは私のカップに淹れて、次に陛下のものへ———お茶は最後の一滴が一番なのですって!素敵な事を聞きましたわ。

 カップに注ぎ終わってから陛下のご様子をそっと伺うと、お花を眺めているようでした。陛下も私と同じ花が好きなのでしょう。思わず可愛く声が出てしまいました。


「綺麗なピンクのお花でしょう?」

「ああ。そうだな———明るく照らされ瑞々しく咲いているようだ」

 その一言で天にも昇る心地になります。

「お分かりいただけましたか!もう大変でしたのよ!」


 私は陛下に包み隠さずこの花園を作った時の話をいたしました。

 毎日毎日薄暗い曇りの日なんですもの。レディに言って発光石をかき集めさせたのですわ。このほんのり青みを帯びた色合いを出させるのに苦労しました。石に明かりを灯すのにあんなに手間取るなんて信じられません。

 てんやく?の管理するやくえん?から持ってきたお花をまあるくなるように整えて、私の好きなピンクが引き立つようにしたのですわ。素敵なものは引き立てるものが必要だと先生に習いましたもの。今日はそれがとてもよく活かせていると思いますの。

 それにしても やくえんの者たちの使えない事———あんなにたくさん咲いているものを取るなというのですわ。お父様とお友達のてんやくの偉いお爺様のおかげでここまで立派に取ってくる事ができました。やはりお父様は素晴らしい方です。

「それは・・・大変な事だったようだな」

「でしょう!?」


 やはり陛下も分かってくださる!

 ほんとあのの者たちときたら、雑草までそれは薬だとか言ってそこをどけとか言うのですもの!可笑しな事を———私ちゃんとお薬は粉末か液体だと知っていますのよ。草や土がお薬の筈がありませんわ。


 でも幸せな時間はあっという間です。

「陛下」

 厳しいお顔の騎士が陛下を迎えにきてしまいました。

「……もう時間か」

 陛下も惜しんでくださいますわ。確か陛下とは幼い頃から親しいとお父様がおっしゃっていました。言われてみればお顔立ちに見覚えがあるような・・・一時お城を離れていた事もあると仰っていましたからそのせいでしょうか。

 陛下をお守りする方なら私の事も守ってくれる方という事ですものね!


「ジュエルリータ殿」


 ———陛下が私の名を呼んでくださいましたわ!


「どうやら用事ができてしまったようです。名残惜しいですがこれにて」

「いえいえ構いませんわ。とても楽しい時間でしたもの」


 名残惜しいですって!

 まあ陛下ったら!

 礼をしてくるりと飜る外套が愛おしいですわ。


「またお相手してくださいまし」

 陛下の後を追う騎士の方が黙礼して、かの方の背に続いていきます。


 ———ああ、あの騎士の方に守られる私と陛下の姿が見えるようですわ!


 私はもう夢見心地でテーブルに戻ります。

 ふと置かれたカップに目を落とすと、半分ほど残されたキャラメルホワイトが目に入りました。今日も陛下は私のために時間を作ってくれたと思うと頬が温かくなります。


 カップを手に取る。


 こくりと一口———ああ 甘い。

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明日も晴れない 龍羽 @tatsuba

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