第13話
緊張感を滾らせる式崎荒哉。
何せ隣には女性が横たわっている。
例え、悪い噂しか聞かない女性であろうとも。
(やべぇ、肌と肌の間が暖けぇ)
興奮が冷めやらぬ状態だった。
当然寝付ける事もなく、式崎荒哉は身体の位置を正す。
すると、少しだけ二人の距離が離れるので、それを感じ取った幸無雫は静かに目を開けて、式崎荒哉に聞いた。
「……におう?」
微かな反応を察してか、幸無雫は式崎荒哉の方に視線を促す。
彼女の疑問符に対して、式崎荒哉は大きく目を血走らせながら。
(良い匂いしかしねえよ、コンチクショウ)
その様に彼女から放たれる植物のような甘い匂いを嗅ぎとった。
「別に、良い匂いしかしねぇけど?」
表情を平然としながら、式崎荒哉は幸無雫に対して異臭がしないと断言する。
すると、幸無雫は少し安堵したかの様な、柔和な表情で呟いた。
「良かった……男臭とか、そういう、生々しい臭いが、するのかと思った」
その言葉の意味を式崎荒哉は理解しない筈が無かった。
真面目な表情をした末に、式崎荒哉は彼女に向けて話し出す。
「お前よ、もう光ツ宮とか、ああいう連中に絡むなよ」
彼らとの繋がりは、彼女のためにはならない。
他でもない、式崎荒哉だからこそ言える台詞だった。
「心配してくれるの?それとも……」
腕を重ねて胸部を圧迫する。
こなれた動作に何度もそういった経験があるかのようだ。
「カラダが目当て?」
「違うに決まってんだろ」
しかし。
式崎荒哉の視線は彼女の胸部に釘付けだった。
「……ふふ、素直、ね」
笑みを綻ばせる。
式崎荒哉の言動には不快感が無いように。
少しだけ、興味を抱いた幸無雫は彼の手に向けて指を這わせた。
「ちょっとだけ、腕を貸して、貰って良い?」
寝付けないのか、幸無雫のお願いに式崎荒哉は片腕を彼女の前に出す。
わき、わき、と。
五指を開閉しながら、下手をすれば、色んな所を触るぞ、とジェスチャーを交える。
そんな式崎荒哉の仕草に、悲しそうに笑みを綻ばせた。
「何処を触っても、気にしない、わ、こんな、穢れた女で良ければ……」
達観した声色だった。
最早、人との触れ合いに慣れきっているのだろう。
その言葉に式崎荒哉は胸部を鷲掴みにする。
「あーあ、お前穢れちまったなあ、俺の手にゃ、沢山の返り血で汚れちまってるからよ、もう洗い流せねぇぞ?」
式崎荒哉は暴力沙汰が絶えない問題児である。
その拳で多くの不良を殴り、その拳を血に染めた。
彼女が男性関係で汚れていると言うのならば。
式崎荒哉も同じく、血で汚れた男であった。
「 は、」
幸無雫は式崎荒哉の言葉に感銘を受け。
彼女の脳裏には―――走馬燈めいた記憶が甦った。
生き残りを懸けたバトルロワイヤルで突如として存在しない記憶がヒロインに発生した事で主人公との恋愛感情が発展するが、主人公は何も知らない、現代ファンタジー 三流木青二斎無一門 @itisyou
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