第12話

体操服の上に白衣を着込んだ状態で未知枝未來は式崎荒哉の額に絆創膏を張り付けた。


「うん、これでだいじょうぶ、少しふらつく?貧血かも知れないから少し寝とく?」


そう言われて式崎荒哉はベッドの方に視線を向けた。

ベッド、と言う単語を聞いて、そう言えば、家にアリサ・シルプス・アルビオンが寝ている事を思い出した。


(あいつ、今なにしてんだろうなぁ……)


そんな事を考えていた矢先に、未知枝未來が私物のバックから袋を取り出す。

それは、鉄分補給用のグミであり、コーラ味のグミを式崎荒哉の方に向ける。

人差し指と中指で摘まんだ状態で式崎荒哉の方に差し出した。


「はい、あーん、して?」


式崎荒哉は口を開くと、グミを口の中に放り込まれた。

口を閉ざしてグミを噛んでいる時、未知枝未來は式崎荒哉をベッドの方へと向かわせる。


「それじゃあ、御安静にね?動いたらダメ、だから」


念を押されながら、式崎荒哉は横になる。

保健室のベッドは三つしか無く、その内の二つは既に埋まっている状態だった。

男子生徒の咳き込む声を聞くに、風邪でも引いたのだろうかと式崎荒哉は考えながら目を瞑る。

少し体を休めれば、体力は十全に回復すると、そう思いながら昼寝をしようとした最中。


「ん」


しゃ、と言う音と共にカーテンが開かれる。

そして式崎荒哉は視線をカーテンの方に向けると、其処には先程、顔を合わせた少女の姿があった。


「あ?お前、……幸無、だっけか?」


幸無ゆきなししずく

天性の虚弱体質にして、薄幸の美少女である。

根暗な性格でもあるのか、良くイジメの対象であった。

中学の頃は中高一貫の女学院に在籍していたが。

イジメが原因で、現在の式崎荒哉が通う鬼月きさらぎ高校へと転校して来た。

それでも、女性達からの陰湿なイジメは止まらず。

不良グループにも目を付けられていた。


「……式崎、くん、でしたっけ?」


式崎荒哉の顔を見ながら、幸無雫は首を傾げる。

彼ほどの不良の有名人ならば、少なからず名前は知られている様子だった。


「体調が優れないので、……変わって貰って良いですか?」


他のベッドは、体調が優れない生徒が占領している。

なので、比較的、健康そうな式崎荒哉に話し掛けていた。


「嫌だね、俺もさっきまで血ィドバドバ流してたんだよ、貧血だ、貧血」


式崎荒哉はそう言いながら顔を背けて寝直そうとするのだが。


「ありがとう、ございます」


そう言いながら、半分空いたベッドに向かい、幸無雫が式崎荒哉の隣に寝転んだ。


「おいっ、寝ても良いなんて……」


そう言い掛けた時。

幸無雫の姿を見て仰天する。

先程まで学生服を着用していた幸無雫は。

衣服を脱いでキャミソール姿になっていた。


「わたし、制服のままでは、眠れないのです」


青白い不健康そうな肌は死体の様に蒼褪めている。

学生服を脱いだ事で、彼女の豊満な胸が谷間を作っていた。

意外にも幸無雫は、着やせするタイプだった。


「仕方ねぇなァ!!」


式崎荒哉は彼女の姿を凝視しながら一緒に寝る事を許可した。

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