第4話

 薄力粉と片栗粉を先ほどのポリ袋に入れる。空気を入れて袋を膨らまして振り、粉を鶏肉全体にまぶす。


一口しかないコンロにおいた鍋にサラダ油を注ぎ、ちょうどよい温度まで熱する。


「あっ……」


揚げ物するから、ここ通る時気を付けてね!と声を上げかけてやめた。注意を促す相手など、この部屋にはいないのだ。


「気楽でいいわぁ」


天井を仰ぎ見てまたすぐ鍋に視線を戻した。油の準備はできた。


菜箸を使ってポリ袋から鶏肉を取り出し、油がはねないよう慎重に鍋に入れる。気泡が上がりおいしそうに弾ける音がする。


「揚げ物の音って食欲そそるよね。俺それでごはん一杯いけるわ」

「じゃあ、やってみて」

「……」


何とも言えない顔をしてしまった彼を見て笑った私を見て、遅れて彼も笑っていた。



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