第19話 世界は、続いていく


境界は、

もう

境界と

呼ばれて

いなかった。


 


線では

なく、

道になった

からだ。


 


人が

通り、

魔物が

横切る。


 


互いに

警戒は

する。


だが、

剣は

抜かれない。


 


ラストは、

その道の

脇に

立っていた。


 


相変わらず、

小柄で、

頼りない

十三歳。


 


荷を

運ぶと

息が

切れる。


 


誰かが

囁く。


 


「……あれが

 世界を

 変えた

 少年だ」


 


ラストは、

聞こえない

ふりを

した。


 


水晶板は、

まだ

持っている。


 


Lv:9999


 


数字は、

もう

気にして

いない。


 


村では、

小さな

変化が

続いていた。


 


魔物を

倒す

依頼は

減り、


話し合いを

仲介する

仕事が

増えた。


 


経験値は、

表示されない。


 


だが、

不満は

少ない。


 


「……選べる

 って、

 楽じゃ

 ないな」


 


ラストは、

井戸の

縁に

腰掛けて

呟く。


 


ミアが、

隣に

座る。


 


「でも」


 


少し

考えてから、

言う。


 


「前より

 息は

 しやすい」


 


ラストは、

頷いた。


 


遠くで、

魔物の

影が

動く。


 


かつてなら

討伐対象。


 


今は、

ただの

隣人候補。


 


世界は、

完璧では

ない。


 


争いは

残り、

選択を

誤る者も

いる。


 


それでも。


 


「壊す」

以外の

道が

ある。


 


それを

知った

だけで、

十分だった。


 


夕暮れ。


 


ラストは、

空を

見上げる。


 


星は、

以前と

同じように

瞬いている。


 


だが、

見えない

ところで、

無数の

未来が

動いている。


 


選ばれ、

選ばれなかった

可能性。


 


それらを、

誰かが

一つずつ

拾い上げる

必要は

ない。


 


ただ、

見捨てない

視線が

あれば

いい。


 


ラストは、

小さく

息を

吐いた。


 


「……明日も

 選ぶか」


 


答える

声は

ない。


 


だが、

世界は

確かに

続いている。


 


倒される

ための

物語では

なく。


 


更新され

続ける

物語として。


 


――最弱と

呼ばれた

少年は、

最後まで

最強を

名乗らなかった。


 


それでも、

彼が

歩いた

道の

先には、


 


誰かが

選べる

未来が

残っていた。


 


それで、

十分だった。


--完--

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経験値の正体を、誰も知らない 塩塚 和人 @shiotsuka_kazuto123

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