5 最後に
俺の話をここまで読んでくれて、ありがとうございました。俺は■■■鉱山も■■■興業も一切知りません。そのフィルムを見たときから何かが決定的におかしかったのです。ところどころ歴史的におかしいと思う部分もあったし、上映後に俺が「こんなものは作り物だ、■■■鉱山なんて聞いたことがない。タチの悪いイタズラだ」と言うとゼミの皆が俺のことをじっと見ました。それは恐ろしくのっぺりとした無表情の顔でした。ただ一人だけ、このテープを見つけてきた余田がものすごい勢いで笑い出したのです。
『それは傑作だ! ■■■の名前を知らないなんて、どうかしている!』
途端にゼミの皆が俺を指さして笑い始めました。S教授も一緒になって笑っています。俺は怖くて鞄を掴んでそのまま帰りました。さっきまで昼頃だと思っていたのですが、外はすっかり夕暮れになっていました。そしてその日は真っ直ぐアパートに帰って寝ました。俺は「まさか映像にあった作法を行わなかったからおかしなことが起こっているのか」と不安でした。
次の日から、俺の住む世界が変わったのだと思います。俺は■■■なんて名前を知らないのに、テレビをつけても外に出ても、スマホの広告にすら「■■■興業」の文字が踊り狂っています。俺は絶対知らないんです。■■■なんて名前は聞いたことも見たこともなかったんです。それなのに政治家や歌手、タレントにも■■■の姓を持つ人物がいます。
俺は頭がおかしくなったのだと思いました。病院に行って頭の検査をしてもらいましたが、脳に異常はないようです。カウンセラーは「それは大変ですね、■■■の素晴らしい恩恵を忘れるなんて重傷ですね。一緒に思い出していきましょう」と無表情で迫ってきました。その顔はあの日、ゼミで見た異様な無表情と一緒でした。もちろん俺は逃げました。精神科医から睡眠導入剤だけもらいました。薬品メーカーの名前は■■■です。俺に逃げ場はなくなりました。
■■■の話をしなければ、周囲は普通に接してきます。ゼミ生もS教授も、普段通りのままです。でも俺が■■■なんて知らない、という話をすると全員があの無表情になります。両親ですらあの顔になり、そのまま涙を流しながら「何かの間違いだ、頭の病気だ」と喚きました。俺は親不孝です。俺の知らない歴史は俺の不勉強になりました。
それでも確かに、俺は■■■なんて名前は知らないのです。俺は明治大正昭和平成令和の時代を生きてきて、晶和なんて年号あるはずがないと思っています。でもそれを言うと俺は笑われます。以前、地下のトンネルを潜ってから別の世界へ迷い込んでしまったという怖い話を読んだ記憶があります。もし、この状況がそれと同じであるなら俺はどうしたらいいのでしょう。今調べても、こんな話は出てきません。俺の記憶違いなのか、それとも俺が前にいた世界の怖い話だったのか。
先ほど、余田から連絡が来ました。「下流側の創始名波乃児は鏡の世界の安部礼司。俺の名前を知ってるか」だそうです。余田の下の名前は
もしこの話を読んで、俺の元いた世界についての情報がある方は俺に連絡をしてください。俺の元の世界の名前は
アギラダ:090ー罰罰×罰ー6555
M-mail:*xvre@bako.ne.jp
〈了〉
『創立百周年記念■■■興業の栄光』及び『人柱/閲覧スルベカラズ』 秋犬 @Anoni
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます