父はサキュバス、母は死霊、義父は勇者で首がない。
mono-zo
父はサキュバス、母は死霊、義父は勇者で首がない。
冒険者ギルドにやってきた。
目的は身分証。目標は殺さないこと。
「まーた子供かよ!ほらさっさと帰りな!」
「馬鹿言うなって!まずは教育だろうが、おら、金出せや」
「「「ギャハハハハハ」」」
予想通り荒っぽいな。
ニヤつく男が目の前に出てきた。
教わったとおりこのまま行けばカツアゲされる。
「あん、ビビってんのか?まぁ金のことなら気にすんな。俺達が有効活用してやイ ギ ギ ギ ギ ギ !!!??」
胸ぐらを掴まれたので手に触れると同時に従順な死霊を数体送り込む。
生者の身体を手に入れたがっていた厄介な彼らが手から伝わって……チンピラの体を乗っ取っていく。
「お、おい!どうした?」
「…………なんでもない。おい、行くぞ」
「あ、あぁ大丈夫か?」
「もんだいない。……ついて来い」
ゾロゾロとチンピラが立ち上がった。
率いるのは口角を限界まで釣り上げたままのチンピラ。
きっと何体かいれたし、目立たない場所で彼らは体を乗っ取ってくれるだろう。部下ゲットだ!
<はぁ……やっちゃったねぇ>
<なんてことを……>
<悪党は世にいらん!良くやった>
<…………>
お父さんたちは満足そうだ。お母さんも微笑んでくれている。
僕からお金を手に入れようとしたんだ。そのツケはちゃんと払ってもらわないとね!
❖❖❖
世界に魔王が生まれた時、神々は多くの勇者を認定した。
炎剣の勇者、氷槍の勇者、光りし弓矢の勇者。戦える勇者もいれば、そうでない勇者もたくさんいた。
馬車の勇者、聖剣作りの勇者、ドワーフの勇者、岩石の勇者、異界の勇者、大盾の勇者、精霊使いの勇者……何十も選ばれた勇者。
多くの勇者が強さに強弱はあれど、彼らは勇者となり魔王を打ち倒した。
その中でもとある勇者がいた。
悪魔使いの勇者と死霊使いの勇者。
二人は世間的には偏見にさらされる職についていた。
悪魔使いは悪魔祓いを生業に、死霊使いは魂が惑わぬように案内する役目があった。
魔王討伐の旅では悪魔と死霊を使い、その旅路の助けとなった。
二人はやがて惹かれ合い、魔王討伐後に子供を作った。
――――しかし、彼らは殺された。
国の命令で、大盾勇者が抹殺した。
大盾勇者はかつての仲間とはいえ、魔王を召喚しようとする二人を許してはおけず……無慈悲に殺した。
しかし、見つけた二人の子供に罪はない。
引き取って義理の息子とした。
彼は元々男爵の四男で跡取りでもなかったはずだが……魔王討伐の旅の間に上の三人は流行病で死亡。魔王討伐の功績もあって伯爵になった。
彼には妻が三人いた。それぞれ力を持つ貴族の家の女性だ。
誰の子供が伯爵という上級貴族の後を継ぐのか、日々家庭内で争っていた。そこに、伯爵家当主である旦那が息子といって赤子を連れてきた。
……赤子は大盾勇者の目の届かない場所で苛烈にいじめ抜かれた。
泥をすすらされ、虫を食わされて、何度も毒を盛られた。
ただ、神によって勇者と勇者の子として生まれた彼は頑丈で……しぶとかった。
❖❖❖
無念のまま死んだ親がいた。
仲間に裏切られ、騙し討ちのように殺されてしまった。
正しい行動をとってはいたものの自分たちの職は偏見を持たれていることはわかっていた。辺境の地でひっそりと生きたかっただけなのに……。
二人には悪魔使いと死霊使いとしての力もあり、神から与えられた力で死後別のものに変わった。
悪魔使いの男性は悪魔になり、死霊使いだった女性は高位の死霊になった。
――――そこまでする理由があった。
愛すべき子が、憎き仇に連れて行かれ、毎日命を失ってもおかしくない程に甚振られている。
絶対に許すべきではない。なんとしても取り返すべきだ。
「取り返そう、絶対に」
「…………」
まだ妻は言葉を発することが出来ないでいる。高位死霊に変化するなんて数百年の時間が必要でもおかしくはない。
死んで数年。身体はまだ完璧ではない。
それでも、毎日悪魔と死霊から届けられる我が子への扱いをどうにかしないといけない。
まずは親友だと思っていた大盾勇者を処理した。
一瞬で首を切り落としてやった。
次いで大盾勇者の館の人間は皆殺しにした。
そして我が子だけど……魂が壊れていた。
仕方なく、魂を埋めるためにも、異界の勇者の魂を入れた。
彼は異世界人だけど、勇者として召喚されて旅についてきた。
そして死んだ。元々戦闘に慣れていなかったのに、魔物に襲われた村人を見つけて走って向かっていって木の根で足を引っ掛けて転けて死んだ。
死んで……帰り道がわからず、彼の魂を導こうとした妻。
だけど異世界の魂とかどうすれば扱いに困った。誰もこないような辺境の地で彼の魂をどうするか研究していた。
彼は我が子が生まれた時、自分のことのように喜んでいた。
今この場には材料がなく、穢れた自分たちの魂では補填できなかった。
だから彼はこの場で唯一穢れていない自分の魂を使えと言ってくれて……我が子の魂のために親友の魂を使った。
そうして我が子は生き返った。
我が子は、まともに教育されていなくて……それでも大盾勇者のクソゴミを親として認識していた。
たしかに子供からすれば家で唯一の味方だった大盾勇者は親で、家の人間を皆殺しにした悪魔と死霊である自分たちは敵に見えるはず。
だから仕方なく、子供の守護者として大盾勇者をデュラハンにした。
なんの因果か、サキュバスになった自分では我が子の近くにいればそれだけで精気を奪ってしまう。ネックレスに自らを封印し、妻に養育を任せることにした。敵が来れば大盾勇者を使えば良い。
我が子の健康と未来を願って……理不尽には一〇〇〇倍返し、恩には等倍返しと教えた。
しかし……どうしたものか。
生前、自分の使い魔だったサキュバスを見て、嫉妬深い妻は貞操の呪いをかけた。
なのにサキュバスになってしまった自分。死霊である妻からは精気を吸うことは当然出来ないし、男として、息子から精気を吸うのは凄く微妙な気がする。今はサキュバスだが。
っていうかせめてインキュバスになれよ自分。悪魔化は資料も少なくて良くわからなかったし、急に死んだから仕方ないかもしれないが……。
結果としてネックレスのトップで我が子から出る生命力の過剰分だけ頂いて生きているが……サキュバスとしての本能がやばい。もうちょっと封印強めにしてもらうことにしよう。
息子からしても、出てるとこが出て引っ込むとこが引っ込んでる超絶美女が父親だとか性癖が狂いかねない。
❖❖❖
息子の育成を楽しみに日々を過ごしているのだけど……息子は倫理観がない。
周囲で養育しているメンバーがそもそもまともではない。人間から悪魔や死霊やデュラハンになったことで人間時代の理性が少し減ったし。息子には悪魔使いと死霊使いとしての才能があったらしく、悪魔と死霊から教育を受けている。
たまに封印の確認の時に様子を知れるが……異界の勇者が嘆いていた。
彼は息子に完全には吸収されず、自我があるらしい。
完全に自我までなくなると思っていたそうだが……まぁ息子が生きてくれればそれでいいさ。しかし、主人格である息子の教育がやばすぎると嘆いているあたりなにか申し訳なく思う。
せめて成人ぐらいまで息子が育ってくれればもう少し外に出ることも出来るかもしれないが……今のままでは栄養がなさすぎて消滅しそうだ。頑張ってくれ。
だってこのままじゃ――――息子が国を滅ぼしてしまいそうだ。
父はサキュバス、母は死霊、義父は勇者で首がない。 mono-zo @mono-zo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます