記憶だけでなく「感情」までも失った主人公レイが、自身の正体を探る異世界ファンタジーだ。圧倒的な戦闘能力を持ちながらも、感情がないために周囲の傭兵に不当に利用される不遇な状況から物語は始まる。彼を救い出した謎の青年オウロとの出会いを機に、舞台は小さな村から活気ある町へと移り変わる。戦闘時の鋭い勘や頑丈な肉体など、レイの過去に隠された謎を解き明かしていく過程が本作の大きな魅力である。
感情の欠落したクールなキャラクターと、彼を支える仲間との交流を好む層。モンスターとの戦いやギルドといった王道のファンタジー要素を楽しみたい層におすすめできる。
記憶を失った主人公が「おいしい」という感覚から少しずつ人間性を取り戻していく、その手触りを感じられる物語でした。
まず、「香り」を手がかりにした伏線の設計が見事です。 レイがある人物と対峙した際に感じた「微かに甘い香り」。それが別の場面で再び現れたとき、私の中で二つの存在がひとつに重なりました。 言葉での説明ではなく、読者の「嗅覚」を信頼して仕掛けられたこの伏線に、作者の構成力の高さを感じます。 五感の記憶で真実に辿り着かせる物語の運び方は、本当に素晴らしかったです。
次に、セレジアがレイのパンケーキを「言葉で欲しいとは言わず、視線だけで訴える」シーンについてです。 そこには、プライドと甘えの狭間にある彼女の魅力が凝縮されていました。 命のやり取りをした直後のふたりが、食卓で見せる不器用な親密さがとても良かったです。
記憶を失った青年が、味覚との出会いを通じて「自分」を取り戻していく。そんな過程を丁寧に描いた、美しい物語です。
記憶と感情、その両方を失った最強傭兵レイ。
そんな彼が「自分」を見つけるための旅を描く、静かな熱を秘めた自分探しファンタジー。
特に面白いと感じたのは、「感情の欠如」を逆手に取ったキャラクター造形。
戦闘では死すら恐れず圧倒的に強いのに、日常では報酬を誤魔化されても無抵抗なレイ。そんな彼の「危うさ」を、お節介で王子様のようなオウロが強引に救い出すバディの構図が実に見事です。
感情がないはずの彼が、甘いカフェオレを「好き」だと感じる……。
そんな小さな「心」の欠片を拾い集めるような丁寧な描写に、思わず胸が熱くなります。
クールなアクションと、じわじわと温まる心の交流。
その絶妙な温度感に、続きが気になる作品です。
読んでいてずっと胸がざわつく物語でした。レイって、ただ「感情がない主人公」じゃなくて、まるで世界と自分の境界線が曖昧なまま歩き出した存在なんですよね。だからこそ、一つ一つの出会いが彼の輪郭を描いていくみたいで、オウロとの関係なんて特に、読んでる方の心までそっと温めてくれる感じがします。
カラマタに来てからのレイは、何気ないご飯の温かさとか、誰かに心配されることの重さとか、普通なら気づかない“人としての当たり前”にゆっくり触れていくのがたまらなく美しい。戦闘シーンも迫力があるのに、その奥に「レイ自身の奥底に眠る何か」がちらついていて、その伏線の気配にドキッとする瞬間があるんです。
赤い花、白い女性、そしてレイが初めて感じた「楽しい」という言葉。その全部が、彼の未来の扉を静かにノックしているようで、続きを見守りたくなる作品です。
本作は、ただの異世界アクションではありません。
記憶の空白を抱えた主人公レイが、自分の正体に迫りながら仲間と絆を育み、そして時に絶望的な強敵に挑む……そんな成長劇と謎解きが絶妙に絡み合う物語です。
特にバトル描写の迫力が圧巻で、技の名前ひとつ取っても美しく、読者の脳裏に映像として焼き付くほど。
一方で、ギルドや町の人々との温かい交流がしっかり描かれており、戦いと日常のバランスが心地よいのが本作の魅力です。
さらに、王族と騎士団に絡む正体不明の存在や、世界の根幹を揺るがす異変など、読み進めるほど謎が増え、止まらなくなる中毒性があります。
「強さ」「優しさ」「秘密」が絶妙に混ざり合った、読み応えバツグンの作品です(๑•̀ㅂ•́)و✧