くつした
川下さな
くつした
「寒い寒い……」
素早く靴を脱ぎ、コートを脱ぐ。
冷たい部屋に、明かりが灯る。
ヒーターをつけて、温まるのを待つ。
汗でびしゃびしゃになった靴下は、冷たく感じた。
「ただいま」
ヒーターに微笑みかける。
冷たい夜は、私の時間。
とりあえずお風呂に入ろう。
そう思いながらも、ヒーターの前から動けない。
この温かいリビングを抜けて、寒い寒い脱衣所まで行くことは、
人間にとって至難の技だった。
少しずつ、少しずつ、じりじりとヒーターから離れ、やっぱり寒いと
ヒーターまで戻る。
そんなことを繰り返していくうちに、部屋中が温まり、
冷たい靴下を履いているのが不快になる。
「風呂入るかー」
やっと動き出した体を脱衣所まで連れて行く。
するすると服を脱ぎ、風呂場に入る。
濡れた風呂場の床はキンと冷えていた。
シャワーの水が、ちゃんとお湯になったか、足元で確認する。
冷たい水で、ぶるっと震える。
ザブン
お風呂は温かくて気持ち良かった。
今日あった嫌なこと、泣きたくなること、全て帳消しにしてくれる。
そんな気がした。
お風呂を上がって、素早くヒーターの前に座り込む。
まだ濡れている髪は、ポタポタと水滴を垂らしている
足元が冷たくなってきたから、靴下を履こう。
温かくて、ふわふわの。
じりじりとタンスまで移動する。
タンスから取り出した靴下は、私の宝物。
冬の相棒。パートナー。
これがあったら、冬も怖くない。
「今年の冬もよろしくね」
靴下に向けて、独り言。
くつした 川下さな @kawasita_sana
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