第30話 初めてのレアドロップ


竹本ゆうじは、ギルドの倉庫で軽く装備を確認していた。


今日は小林翔太と佐藤明日香と一緒に、


ランクE中層の探索に出る予定だ。


前回の研修会で、竹本が意図せず“指標”扱いされてしまった影響もあり、


後輩たちは少し慎重になっている。


「ゆうじさん、今日はレアドロップ、


 狙ってもいいですか?」小林が目を輝かせて聞く。


竹本は肩をすくめて笑った。


「いや、無理に狙う必要はない。


でも、注意深く進めば自然とチャンスはあるさ。」


明日香も頷き、探索の準備を整える。


竹本は後輩たちの装備を軽くチェックし、


軽口を交えつつ注意点を伝えた。


「昨日学んだことを活かせば、

 無理なく進めるはずだ。」竹本の言葉に、小林は胸を張った。


ダンジョン入口に到着すると、


湿った空気と微かな風の音が漂う。


中層特有の暗さに慣れた竹本は、


足元を確認しながら慎重に進む。


小林と明日香も、竹本のペースを真似てゆっくりと歩を進めた。


三層目に差し掛かった頃、


微かに金属の反射光が壁に映る。


竹本は立ち止まり、わずかに眉をひそめる。違和感があったのだ。


「ゆうじさん、ちょっと止まりましょう。」小林が声を出す。


竹本は振り返り、微笑んだ。「うん、いい判断だ。」


二人の後輩は竹本の意図せぬ指標効果もあってか、


自分たちで危険を察知する力が育っている。


竹本は静かに見守りつつ、彼らに任せた。


小部屋に入ると、


床に小さな宝箱が光を反射していた。


竹本は一歩引き、後輩たちに判断を委ねる。


「これは……触ってみてもいいですか?」小林が手を伸ばす。


「慎重にな。安全確認を忘れずに。」竹本は冷静に声をかける。


小林は宝箱を観察し、落とし穴や罠の痕跡を注意深く探る。


違和感はない。竹本は軽くうなずき、背後で見守る。


「大丈夫そうです!」小林が慎重に開錠すると、


中から小さな光があふれた。


中には見慣れない形状の武器――ランクEとしては珍しい、


攻撃力の高いレアショートソードが入っていた。


「やった……初めてのレアドロップです!」小林の声に、


明日香も目を輝かせる。


竹本は軽く笑った。「おめでとう。焦らず、慎重に行動した結果だ。」


小林は興奮しつつも、竹本の教えを思い出して慎重に宝箱を確認した。


罠はなく、傷もない。安全に回収できたことを確認して、ようやく笑顔が弾けた。


「ゆうじさんのおかげです!やっぱり、


 違和感を無視せず、慎重に進むことが大事なんですね!」


竹本は肩を叩き、少し照れながら答える。


「いや、俺はただ見守っただけだ。判断したのはお前自身だ。」


探索を終えてギルドに戻ると、


後輩たちは報告書をまとめる手を止めず、


武器の性能や状況も詳細に記録した。


竹本は静かにそれを見守る。自分のペースで進める探索が、


後輩たちの成長と成果につながったことに、少しだけ誇らしさを感じた。


「これで、次はもっと安全に、


 でも楽しんで探索できますね!」明日香が元気に言う。


竹本は微笑み、コーヒーを一口飲む。


「そうだな。無理に急ぐ必要はない。ゆっくり、確実に、だ。」


窓の外に冬の光が差し込み、


ギルドの雑踏の中で、竹本は静かに胸を満たす。


自分が意図せず後輩たちの指標となったことで、


彼らの成長が具体的に形になった瞬間――それは、


スローライフ探索者としての竹本にとって、小さな達成感となった。


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中二病スキルで、今日も定時退社 塩塚 和人 @shiotsuka_kazuto123

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