怖がーる少女の数奇な人生
サトウ・レン
お前は、とても怖がり。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
まずお前は父親が怖かった。お前の父親は普段は物静かで、絵を描くことに情熱を捧げる男だった。才能はひとつもなかったが、それを自覚することができない哀れな男だった。お前の父親は、自身を評価しない世界を憎んだ。お前の父親の怒りは、つねにうちに向いていた。うち、は、内であり、家でもあった。お前の父親自身の心の内側のみで暴れ回って終わる怒りもあったが、残念ながらそれだけでは終わらないこともあった。その時は大抵、怒りは、家に向いた。
つまり家族だ。
お前の父親はときおり、家族に暴力を振るった。殴られたのは、大抵、お前の母親だった。お前の年の離れた兄の場合もあった。お前に暴力が向かうことはほとんどなかったが、ゼロではなかった。何度かお前を殴ることもあった。なぜ殴られるのか、お前は理解できなかった。理解できる年齢ではなかったのだ。ただ年齢を重ねていても、お前は理解できなかったかもしれない。理解できないものは怖い。怖くて怖くて仕方ない。枯れ尾花は別に怖くない。お前は願った。理解できないものは消えて欲しい、と。
お前の父親は殺された。死体があったのは自宅の敷地内にある納屋で、首を斬られた状態で見つかった。犯人はすぐに捕まった。隣の家に住む男が逮捕されたのだ。当時、二十代なかばくらいの青年だった。首を斬るために使った道具はチェーンソーだった、とお前は後になって知った。
お前の父親が殺される、という痛ましい事件が起こったのは、お前が小学五年生の時だった。父親の死に快哉をあげながらも、お前は驚いていた。
『隣の家の男は、お前の父親を恨んでいた』『何度も、隣の家の男とトラブルになっていた』『いつかこんなことになる、と思っていた』周囲は口々にそう言ったが、それを聞くたび、お前は心の中で首を傾げていた。お前の知るお前の父親は、いつも怒りを、うち、に向けていた。隣の家の男はたとえ近くに住んでいたとしても、そと、の人間だ。そと、に対して、お前の父親は穏やかで優しいひと、という仮面を付けていた。そんな父が近所の人間とトラブルなんて起こすだろうか、と。しかし隣の家の男は罪を認めているので、どれだけお前が不思議に思おうと、この世界ではそれが真実なのだ。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
お前の父親の事件もあり、お前は別の小学校に転校することになった。山梨にあるちいさな小学校だ。先生たちの間では箝口令が敷かれていて、お前が殺人事件の被害者家族だと知る児童はいなかった。一部の週刊誌ではお前の父親が悪く書かれていたので、その事実を周りが知らない環境がありがたかった。お前の兄は山梨には行かなかった。ちょうど高校卒業と重なる時期だったので、寮のある会社に入り、そのままお前たち家族と関わることはなくなってしまった。
小学六年生の時、お前のクラスにSちゃんという女の子がいた。Sちゃんは物を共有したがる女の子だ。
「ねぇ、それ貸して」「あっ、ねぇ、それ頂戴」「ねぇ、いいじゃん、友達でしょ」
ねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇねぇ。この口癖のような、「ねぇ」がお前にはプレッシャーで、とても不快だった。
自分の物は自分の物で、他人の物は他人の物だ。それが本来普通のことだが、その辺の境界がSちゃんは曖昧だった。そしてSちゃんは共有し合えることが友達の証だと考えていた。
転校してきた時、誰よりも人懐っこくお前に話しかけてきたのはSちゃんだった。お前はそれを嬉しく感じていたが、友達だから、と物を共有しなければならない、ということには違和感を覚えていた。
「ねぇ、それ貸して」
とSちゃんがお前の隣の席だった時、お前にそう言った。それは消しゴムだった。お前は消しゴムを貸すこと自体は別に嫌ではなかった。ただ自分も持っているのに相手の物を借りようとしてくるのが変に思えて、「自分のがあるんだから、自分の使えばいいんじゃない」と伝えた。
その時のSちゃんの鬼の形相が、お前はいまも忘れられない。たかだか物を貸さなかっただけでそんな態度を取られるのは理不尽だ、とお前は思った。
その日からお前は嫌がらせを受けるようになった。物を隠されたり物がなくなったり、ノートに落書きされたなんてのもあった。古典的と言えば古典的なやり口だ。お前の心は深く傷を負った。何よりも怖かった。なんでこんなちょっとしたことで、ひとはこんなにも変わってしまうんだろう。
お前はSちゃんが理解できなくなった。理解できないものはこの世から消えて欲しい。お前はまた願った。
そんなSちゃんも、死んでしまった。ひとは案外、簡単に死んでしまう。学校の屋上から飛び降りて、ひしゃげた頭部からは脳漿が飛び散っていた。自慢の可愛い顔は、死と同時にあまりにも醜くなった。お前は彼女の死に方を知って、不思議だった。なんで立ち入り禁止の屋上に彼女は行くことができたのだろう。本当にSちゃんしかいなかったのかな。誰かが突き落としたのではないだろうか、と。
大抵の小学生にとって身近なものではない。だからクラスメート全員がその死自体にはとても驚いていたし悲しんでいたが、お前も含めて、クラスメートの中に『Sちゃんの死』を悲しむ者はいなかった。Sちゃんは共有を許してくれるすべての子を友達だと思っていたが、Sちゃんが友達だと思っていた子たちの中で、Sちゃんを友達と思っている子はひとりもいなかったのだ。みんなほっとした顔をしているのを見て、あぁ私がみんなを怖いものから救ったんだ、と安心した。やっぱり理解できないものは、消えたほうがいい、と。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
お前の入った中学は、近くの公立中学校だった。小学校から同じ人間関係が続くような環境の中学だったので、比較的、居心地が良かった。この頃になると、さすがに秘密はどこかから漏れてしまって、お前の父親のことを知っている同級生も何人かいた。ただお前の把握している限りは信頼のできる相手ばかりだったので、周囲に言い触らされることはなかった。お前の知らないところで知っている者もいたのかもしれないが、表立ってお前を馬鹿にする者はいなかった。
その中学校でお前には大嫌いな教師がいた。
Rという教師だ。まだ若い教師で、第一印象はとても好感の持てる男性の教師だった。基本的に人格者の多かったその中学校の教師の中で、Rは悪い意味で異彩を放っていた。ハラスメントの化身みたいな男だ。彼は男子生徒にしろ女子生徒にしろ、気弱な生徒を見つけると、高圧的な態度を取り、時には暴言を投げつけることもあった。お前自身が実際に見たわけではないが、時には暴力を振るうこともあったそうだ。強い者に媚び、弱い者を挫く教師の姿に憧れを持つ生徒はひとりもいなかった。生徒の中には親に訴える者もいたが、親と話す時には態度を別人のように変えるので、「あんたのほうが悪かったんじゃないの」という話になってしまう。
そしてRは生徒へのボディタッチも多かった。これも男女問わず、スキンシップと称して。お前がRから恨みを買ったのも、このスキンシップが原因だ。一度、お前はRから肩を叩かれたことがあった。これはRからしてみれば、嫌がらせのつもりはなかったはずだ。『最近、頑張っているか』程度のものだ。それでも気安く触られることが不快で、お前は思わずRの手を邪険に振り払ってしまった。
「ふーん、ほう。そうか、そうか。お前はそういう奴なんだな」
とその時はそれだけ言って、Rはいなくなってしまった。元々そんなに会話が多かったわけではないが、Rはそれ以来、お前にまったく話しかけてこなくなった。それ自体は、Rが嫌いなお前にとっては嬉しいことだったのだが、ときおり、お前はこちらをじっと見てくる視線に気付いて、嫌な感じを覚えた。
お前の自宅までの帰り道には、お寺がある。下校中、その前あたりで、一台の車が駆けてきて、歩いているお前の横でとまった。運転席の窓を開けて声を掛けてきたのが、Rだった。お前は走って逃げたくなったが、これからも関わりのある先生に対して、そんなことはできなかった。それに怖くて、足が竦んでいたのもある。
「ちょっと話したいことがあって、助手席に乗ってくれ」
「い、嫌です」
「なんで?」
「だって」
「別に知らないひとでもないんだ。それにお前のためを思っての話だよ、これは。大丈夫。素直な生徒には何もしないよ。素直な生徒には」
押し問答になり、Rは明らかにいらつきを顔に出してきた。その表情に怖くなり、お前は車に乗った。乗った瞬間、嫌なにおいがする、とお前は思った。本当ににおい自体が嫌だったのか、Rが近くにいるのが嫌すぎて、車内のにおいまで不快に感じたのかは分からない。
「私は、ね。たまに思うんだ。たとえ反抗期であっても、おとなに逆らってはいけない、って。おとなってのは、子どもの弱いところをすごく知ってるんだ。なんで知ってるか、って?」何も答えないお前に語り掛けているはずなのに、まるでお前が不在かのように、お前の反応を無視してRがしゃべり続ける。「それは、だよ。おとなはみんな、子どもだったからだ。だから子どもの時に自分が弱かった部分を考えれば、自然と弱点に想像が付くようになっているんだ。よっぽど想像力のない人間以外は、ね。たとえば、そうだね。きみの場合はお父さんのことだろうか。殺されたきみのお父さんは、とても酷いお父さんだったそうだね。私も、週刊誌の内容は読んだよ。古くてもバックナンバーなんて簡単に取り寄せられるんだ。家庭内暴力も酷かったって話じゃないか。つらかったんだろうね、きみも。そんなお父さんだったら、いくら被害者だから、って家族というのを隠したがるのは当然だ。分かるよ、本当に分かる。きみの友達の中にも知らない子は多いんだろ。知っているひとはみんな優しいからね。みんな黙ってくれているわけだ。私も優しい人間だから、もちろん黙っているわけだけど、人間だから、つい口が滑ってしまうこともある。それが反抗的な子のことだったら、特に、ね。やっぱりね。素直な子はいいよ。先生は素直な子が大好きなんだ」
こんな饒舌なRを、お前は初めて見た。元々嫌いではあったけれど、こんなにおかしな言動を繰り返す人間だと思っていなかったので、Rは何かに憑かれてしまったのかもしれない、とお前は考えた。
恐怖に震えながらも、お前は何度も頷いた。するとRは満足したように笑い、「素直な子は大好きだよ」とまた言って、車から降ろしてくれた。こんな頭のおかしいひとがいるわけがない。しかも学校の先生がこんなこと言うなんて信じられない。理解できない。怖い。理解できないものはこの世から消えて欲しい。お前は願った。
すると走り出したRの車は信じられない猛スピードとなり、電信柱に激突した。お前は車の中を見なくても、Rが死んでいる、と分かってしまった。関わりたくなかったお前はその場から逃げ出した。翌日、校長先生が全校生徒を集めて、Rが死んだことを悲しげに話していた。
泣いている生徒が何人もいた。その泣いている生徒の数を、お前は心の中で数えた。そしてその顔を見ながら、Rの標的になっていた子はひとりもいないな、と思った。全員、負けん気の強そうな生徒ばかりだ。つまりはそういうことなんだな、と。気弱なお前たちが、Rの死に心の底から安堵したことを表明することは許されない。Rが死んで喜ぶ顔を外に出すことも許されない。死んで当然の奴が死んだだけなのに、神妙な顔をしていなければならない。理不尽な世の中だ、とお前は憤った。怖いものがなくなったことを、なんで喜んではいけないのだろう。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
中学三年生の時、お前に初めての彼氏ができた。Tは物静かなタイプの男子生徒で、つねに話題の中心からは逸れた場所で斜に構えているようなタイプだった。当時のお前にはそれがおとなびて見えて、魅力的に映ったのだろう。言葉数のすくない彼とぽつりぽつりと会話を交わすところからはじまり、どちらかが明確な言葉にしたわけではないが、やがて付き合うようになった。
Tはプライドが高く、相手を束縛したがった。そして熱しやすく冷めやすかった。もちろん付き合う前から、彼のそういう側面には気付いていたが、マイナスな面には意識的に目を逸らしていた。付き合ってから、その辺りがより顕著になってきたのは、お前が、『所有物になった』という感覚がTにあったからかもしれない。お前が誰か別の男子生徒と話すだけで、暴言を吐くようになった。
付き合うような関係になる前、お前の中で隠し事をしてはいけない、という感覚があり、父親のことはTに話していた。それを言った時、Tはお前を抱きしめて、「ありがとう、言ってくれて。そんなの、俺、何も気にしないよ。きみはきみだから」とお前以上に、涙を流した。Tの言葉を聞いて、お前は嬉しく思った。このひとは信用できるひとだ。でもTは自分自身に酔っているだけだったのだ。ドラマの脇役から主役に躍り出ることができたのだ、と酔いしれていただけでしかなかったのだ。
ただお前はTを信じていた。信じたかった。
「あぁそういう親だから、お前みたいな女が生まれるんだろうな。周りをイライラさせる人間っているんだよ。きっとお前の親父もそういう奴だったんだろうな。俺、逮捕された奴に同情するよ。どうしようもない社会のゴミを捨てただけで、人生が狂ってしまうんだから」
どんどんTのお前に対する言葉はひどくなっていった。
正直、お前は悲しかった。だけどTを悪くは思うことができなかった。自分が悪いのだ、とただただおのれを責め続けた。みんな優しいから気を遣って言ってくれなかっただけで、彼の言葉は正しいのだ、と。心を鬼にしてくれているのだ。Tの言葉はきついけれど、これは自分がのみ込まなければいけないことなのだ、と。それにお前はまだ愛されている、と信じていたから、その言葉を耐えた先に何らかの光が見える、と思いたかったのかもしれない。
「俺たち別れよう。好きな子ができた。ごめんな」
Tの口調は軽かった。
なんで、とお前は思わず叫んだ。心の中で、だけ。
「そもそも、俺も初めてだったから、あんまり自分の気持ちがよく分かってなかったんだ。きみのことなんて対して、好きでもなかったんだと思う。ほら、クラスの奴が初体験済ませた話をしたりしてたから、俺も早く終わらせたいな、って焦ってたんだよ。感情と性欲がごちゃごちゃになってたんだ。あっ、別にこれは俺だけの話じゃなくて、男ってそういうもんなんだよ。だから仕方ないんだ。きみと彼女はやっぱり違ってて、本当に大切にしたい、って彼女を見てると、心が洗われていくんだ。彼女っていう本物を扱うために、きみ、っていう練習があったんだ。その意味では、とても感謝してるよ」
わざわざ口にする必要もない言葉を、彼は重ねていく。それを言ったところでどうなるのだろう、とお前は思った。あと、ただの中学生のガキが、知ったように『男』を語るな、とも。
不愉快で、理解できないし、理解したくもなかった。
理解できないものは消えて欲しい。お前は願った。
消えてくれ、消えてくれ、消えてくれ。何度も願った。いつものように。
Tは殺された。新しく好きになった、というその女の子に刺されて殺されてしまった。詳しいことをお前は知らなかったが、とりあえず事実としてその女の子が逮捕されたのだから、まぁ何かトラブルがあってその子に殺されたことは間違いないのだ、とお前は思った。どうしようもない社会のゴミを捨てただけで、人生が狂ってしまうんだから、お前はその女の子に同情してしまった。ただ世間は見る目がないのか、Tが殺されたことを大変悲しんでいた。クラスにも結構泣いている子がいた。お前以外の全員が悲しんでいるように思えた。「あいつ、良い奴だったのになぁ」と生きている時は、Tとしゃべっている姿を一度も見たこともなかった男子生徒が遠い目をしながらつぶやいていて、お前は虫唾が走った。ただ死んだというだけで必要以上に人間性を美化するな、とお前は叫びたかった。
嫌いだ。全員、嫌いだ嫌いだ嫌いだ。
お前ら全員、なんにも理解できない。
お前は願った。全員、消えてしまえ。
修学旅行中のバスにクラス全員で乗っていた時、事故が起こった。突然、急スピードになったバスは木製のガードレールを突き破り、バスは崖下へと落ちていった。お前以外のクラスの生徒全員が死んだ。担任の先生も運転手も、ガイドの女性も死んだ。ただひとり、お前だけが生き残った。『奇跡の生還者』とSNSでちょっとした話題になった。お前の生について、馬鹿にしたり崇めたりする人間がSNS上にいたことをお前は知っている。見る気はなかったが、それでも偶然目に入ってきたからだ。
お前はまた願った。そういう奴らも消えてしまえ、と。
ただそれは匿名だったので、本当に消えたかどうか、お前に知るすべはない。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
お前の周りからは、どんどんひとが減っていく。それでもお前は良かった。お前自身が望んだことなのだから。
お前に関わりのある人間ばかりが死んでいく。その事実に何よりも怯えたのは、お前の母親だった。お前の母親は、怖がりなお前を何よりも怖がっていた。愛していたはずの娘を、いつからか化け物のように扱いはじめた。
お前はそれがどうしても許せなかった。
お前が母親に怒りをぶつけたのは、高校に入学する直前のことだ。
「お母さん、なんで私のことを愛してくれないの!」
「何言っているの。愛しているよ。誰よりも」
母親の声音には、明らかに怯えが含まれていた。
「嘘だ。私を遠ざけようとしている」
「そんなわけないじゃない」
「嘘だ。本当のことを言ってよ」
「……分かった。正直に言う。愛していたのよ。愛したかったの。だから私なりに努力はしたんだよ。生んだ以上は、それがどんな娘であっても。もしもあなたがあのひとの子どもじゃなかったら、もうすこしは愛せたのかな、って思う時もあるんだけど、ね」
でもそのお父さんじゃなかったら私生まれてない、とお前は叫びたくなった。
お前の目から涙がこぼれた。なんでお前は生まれてしまったんだろう。そもそも不幸のはじまりは、お前の母親がお前の父親と出会ったことだった。その結果が、お前だ。そう、最初からお前は不幸の象徴だったのだ。お前だって、心のどこかでは分かっていたのだ。それでも母親にだけは、違う、と言って欲しかったのだ。愛しているよ、お前の存在は私の幸せだ、とお前は抱きしめてもらいたかったのだ。
お前に祝福が降り注いだことなど、一度もなかった。これからもないのだろう。
それを突きつける母親が、お前には理解できなかった。
いや、理解したくなかった。消えてしまえ、とお前は願った。
母親は自ら命を絶った。遺書も何も残っていなかった。
理解できないもののほとんどは消えてしまった。だけどお前はもっとも理解できなくて、嫌いな存在を、まだ残したままだ。
俺は、
お前の願いによって作られた。
俺を作れるお前こそ、お前にとってもっとも理解できない存在だったはずだ。お前自身がもっとも怖い存在は、お前のはずだ。お前はその事実から目を背け続けてきた。怖がり少女よ。そろそろ直視するべき時が来たんじゃないのか。どうすればいい、って。分からない振りをしても無駄だよ。お前は知っているはずだ。
願うだけ。ただ、それだけだ。
お前は怖がり少女。
お前の人生には、いままで怖いことしかなかった。
怖がーる少女の数奇な人生 サトウ・レン @ryose
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