第3話 「やっぱり、そういうことだよね」

学食は混んでいた。

日替わり定食の列にならぶ。


通路側の狭い席を取って、座る。

食べ始める前に言った。

「黒川くん、大学院に受かったって」


美緒が顔を上げる。

「え、すごい」


玲奈は一度だけこっちを見て、

「そう」

と言って、そのまま食べ始めた。


テーブルのわきを、男子学生が二人、並んで通り過ぎる。

声が大きい。

「金貸して。じゃなきゃ奢って」

「ばーか。そんな義理ねぇよ」

笑いながら歩いていて、

一人が私の椅子にぶつかる。

「あ、ごめん」

もう通り過ぎている。


美緒が、箸を咥えたまま。

「学費とか、どうするんだろ」


私は味噌汁を飲む。

少し熱い。

「親に頼るって」


「自分で出せたら、気楽なのにね」

美緒はそう言った。


玲奈は、箸を止める。

「現実的じゃないでしょ。学費をバイトで稼いだら、勉強する時間ないよ」

ふうん、と思う。

玲奈は、そういうことを言う。


美緒が、うなずく。


「分かるけど」

私は、一度だけ動きを止めた。

ほんの一瞬。

「どうだろう」

声は小さい。


「何が?」

「どこが?」

二人に聞かれて、


「いや」

と曖昧に笑う。

それ以上は、言わなかった。

味噌汁が冷める前に、飲む。


そのあと、

話題はゆっくり別のほうへ流れていった。

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