第2話 「せっかく祝ってあげたのに」
改札の列が、途中で止まった。
前にいるご老人が、スマホを両手で持って、
画面を近づけたり、遠ざけたりしている。
後ろが少し詰まる。
でも、誰も声を出さない。
足が止まる。
手の中に、スマホの重さ。
そのまま待っているあいだに、震えた。
黒川くんからの返信。
「ありがとうございます」
短い。
間違ってはいない。
ちゃんとしている。
ご老人が係員に声をかけて、横にずれる。
列が、ゆっくり動き出す。
一歩、前に出たところで、
もう一度、震えた。
「でも、親に負担かけるのが申し訳なくて」
歩きながら目を通す。
立ち止まるほどでもない。
でも、流してしまうほどでもない。
改札を抜ける。
読み取りの音が鳴る。
人の流れに押されて、
歩く速度が少し上がる。
画面を見たまま、端に寄る。
親に負担。
申し訳ない。
合格の話の続きを、
そこから始める気にはなれなかった。
返信欄を開いて、
少し考えてから、打つ。
「気にしすぎじゃない?」
送信。
すぐに、画面を閉じる。
階段を降りる。
ホームに着く。
電車が来る音がする。
風が抜ける。
その音を聞きながら、
スマホを持ったまま、立っている。
黒川くんは、
こういう返しをする人で、
それで、終わる。
電車が、目の前で止まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます