祝い重ねて
花沫雪月🌸❄🌒
祝い重ねて
「実際のとこさ。お祝いが重なるのってなんか損した気分になると思わん?」
「あ~わかるわ~」
迎えた年末休み。
田舎に帰省中のタツキは、幼馴染みで遠距離恋愛中のアザミと、がら空きのファミレスで落ち合うと久しぶりの再会に喜び話に花を咲かせていた。
「うち誕生日が12月25日やん? 誕生日とクリスマスどっちのプレゼントって。昔は2つ貰えてたんやけどねー」
「俺も1月2日生まれだから誕生日プレゼント買うのにお年玉使われてん!」
互いの誕生日が年の瀬近くの2人の話題は愚痴とも文句とも、あるいは世の無情を儚む……そんな話題。
すなわち誕生日が何か記念日と被ると損する問題についての討論……とも言えないような、やっぱりそれはただの愚痴だった。
「モチロン祝ってくれるのは有難いわよ? それはそれとして……こう……あるじゃない?」
「うんうん。まぁ俺はもうお年玉あげる側やけどな。初詣とか色々重なってお誕生日祝いって雰囲気じゃないよなぁ」
内容こそしみったれた話ではあったが雰囲気はすこぶる明るい。
遠距離の2人にとって話せることそのこと自体が嬉しいのだ。
「あ、そうだ忘れんうちに……アザミ、誕生日おめでとうな。4日遅れだけど」
「ん……ありがと。じゃーうちからも! はい! 誕生日おめでとう……4日早いけど」
12月29日……クリスマス後で年の瀬前の何もない日。
2人は決まってこの日に、互いの誕生日を祝うことにしていた。
包装紙に包まれたプレゼントの箱を交換するように手渡すとアザミはニシシと笑う。
いつもなら同じように笑うタツキは、真面目腐った顔でアザミに改まったように声をかけた。
「アザミ……」
「ん?」
「実は俺、こっち帰ってくることなったんよ。転職先も見つけてん」
「ほんまに! なんや嬉しいやん!」
「それで……その……アザミ! 俺と結婚してくれんか!」
ばっと、指輪の入った小箱を突き出して真っ直ぐなプロポーズをするタツキにアザミは目を白黒とさせたが、満面の笑みを浮かべて「うん!」と頷いて指輪を嵌めて見せた。
「はぁあああ~……よかったわぁ。これで断られたら目も当てられんわ」
「へへ……捻りもなんもないプロポーズやん」
「なんや。ダチにでも頼んでフラッシュモブとかしたほが良かったんか」
「それは勘弁やわ!」
「あいたっ」
緊張から解放され軽口を叩くタツキを、アザミが軽く小突く。
アッサリと普段通りの雰囲気に戻り、ニシシと2人は笑った。
「そしたらさ。籍入れたりせんといかんよね」
「あーそやな。い、今からでもええんかな?」
「なんや判子とかいるんやない?」
「それもそうか……なら明日にでも役所いこか」
「ちょい待ち」
「ん?」
アザミは何かに気付いたようにハッとした顔でタツキに告げた。
「結婚記念日て……籍入れた日になるん?」
「そう――なるんやないか?」
「だったら! これ以上色々重なるんは勘弁やわ! クリスマスと誕生日来て結婚記念日きてすぐ正月きてすぐタツキの誕生日になるやん!」
「うーわ! マジやん! ナイスやアザミ!」
舞い上がって重大な事実を見落としていたタツキは気づいたアザミを親指を立てて褒め讃えた。
「んま……正月ゆっくりしてさ……それから日取りは決めたらええんやない? 結婚式とかも……したいし」
「それもそやな……。んじゃ、まぁ、なんや。よろしくな。アザミ」
「こっちこそ。よろしくね。タツキ」
少し気恥ずかしくなったのか、「ドリンク取ってくる」と席を外したタツキの背を見送るアザミもまた赤らんだ頬のまま小声でこんなことを呟くのだった。
「プロポーズの日も……記念日やと思うんやけどなぁ」
祝い重ねて 花沫雪月🌸❄🌒 @Yutuki4324
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