第14話 拡張

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 こうして、丁寧な扱いを受けている子らを優先して選び、幾度かダンジョン攻略の手助けをした。


 加えて、人形回廊の広報として、アカウントも作った。

 ダンジョンの公式アカウントなど存在しない。存在する必要もない。

 故に、あくまで非公式。

 有志の活動を名乗る。


 整合は取れる。

 世界は、理解できる範囲でしか物事を扱えない。


 広がり方も、自然だった。


 人形回廊は入場難易度が低い。

 そして誰でも人形を持ち帰ることが可能だ。


 その条件が揃えば、訪れる者の層は決まる。


 主に初心者。

 それから、ダンジョンの研究に重きを置く者。


 派手な戦闘や、希少な討伐報酬を求める者ではない。

 観察し、記録し、持ち帰り、検証する者たちだ。


 訪問者が増えた。


 同時に、子らが外へ出る数も増えた。


 一部、愛玩やファッション的な需要も生まれている。

 だが、それはそれで真摯に受け止めている。


 本来の用途に近い。

 喜ばしいだろう。


 人形回廊の子らは、観賞用ではない。

 並べられ、眺められるためだけの存在ではない。


 使われる。

 持ち歩かれる。

 触れられる。


 そのために生まれた。


 従って、こちらが提示したのは「アイテムとしての活用」だ。


 ただし、誤解がある。


 人間に力を与えるつもりはない。

 強化するつもりもない。

 攻略者を育てる意図もない。


 行っていることは、最低限の自衛に過ぎない。


 故意ではない破壊を防ぐため。

 その範囲を、対象者へ広げているだけだ。


 被弾を察知し、避ける方向へ引っ張る。

 致命的な判断を避けさせる。

 それは攻略の補助に見えるかもしれないが、違う。


 破損を避けるための制御だ。


 子らが傷つかなければ、それでいい。


 道案内も同じだ。


 孕み手の胎内への道筋を知覚するにあたって、

 ダンジョン内にある障がいとなり得るものは、人形自身が察知している。


 こちらがしているのは、首に動きを持たせたに過ぎない。

 視線と向きを、与えただけだ。


 それを見た攻略者は、勝手に意味を付ける。


 相性。

 偶然。

 人形の効果。

 未確認のダンジョンエフェクト。


 どれでもいい。


 理解できる枠に押し込めば、安心する。

 そして、広げる。


 供給が増えていく。

 広がりが増えていく。


 母体として、活動を続ける。




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世界侵食型ダンジョン人形回廊 濃紅 @a22041

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