第13話 非公式
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ダンジョンを出た時点で、違和感は確信に近かった。
被弾していない。
避けた、というより――避けさせられた。
足を踏み出す前に、
身体がわずかに引かれる感覚があった。
視界の端で、人形が動いた。
歩いた。
止まり、振り返り、
そこに落ちていたドロップ品を見つめていた。
偶然ではない。
少なくとも、
今日一日の挙動を「たまたま」で片付けるのは、無理があった。
帰宅後、
人形の服を脱がせ、
埃を払い、
同じ色合いのワンピースを自分も畳む。
指先が、まだ少し震えている。
怖かったわけじゃない。
むしろ逆だ。
守られていた。
そう感じてしまったことが、
一番、落ち着かない。
端末を開く。
書くつもりはなかった。
書く理由も、義務もない。
けれど、
この感覚を抱えたままにするのは、
どうしても無理だった。
画像を載せて、文字を打つ。
・今日もこの子と攻略しました。
ダンジョンの中で
案内してくれたり、
護ってくれたりしました。
流石に気のせいじゃないと思います。…大事にしてたからかな?
一呼吸置いて、送信する。
送った瞬間、
少し後悔した。
証拠もない。
何か批判が来るかもしれない。
それでも――
言ってしまった。
通知が鳴る。
人形回廊情報(非公式)
RT。
添えられた文は、淡白だった。
体験談の共有です。
非公式なので参考程度に。
それだけ。
画面を見つめ、
彼女は小さく息を吐いた。
「……やっぱり、変じゃないんだ」
納得ではない。
安心でもない。
ただ、
自分だけじゃないと分かった。
それで十分だった。
人形を抱き上げ、
そっと撫でる。
「ありがとね」
理由は分からない。
仕組みも知らない。
でも、
今日は確かに、助けられた。
その投稿は、
非公式という名の場所で、
静かに固定される。
誰かが読み、
誰かが信じ、
誰かが試し、
誰かが条件を満たす。
母体は、
その全てを観測している。
効果は、認識された。
だが、正体には至らない。
工程は、問題なく進行している。
母体として、
続行する。
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