紅のタトゥー 第一章 ほんの小さな巡り合わせが…

 1987年の……季節は既に2月に入っていた頃だったろうか……

 1月に……あやさんとの別れが決定的となってしまい……

 それ故の、相当重症な傷心を抱えたままだった僕は……

 再び、ツバキへ……ヘヴィメタル・ナイトへと通うようにはなっていた。


 その頃のツバキは……あやさんと愛し合っていた頃のメンバーとは異なり……

 即ち……マサヤさんやその仲間たちもいつの間にかいなくなり、一部は新しいメンバーへと入れ替わっていた。


 それでも……21時にホワイトパイソンの“アイ・ウィッシュ・ユー・ウェル”が流れ、ヘヴィメタル・ナイトが終わった後の『二次会』と称する飲み会は、変わらず青龍だった。


 その夜は……3月に入って最初の日曜日のヘヴィメタル・ナイト……

 二次会の後も……三次会だか四次会だか……もう判らないまま解散となり……

 その早朝、僕は……歌舞伎町ではなく、靖国通りを挟んで新宿駅側のマックの二階で……

 同じメタル仲間の男の子と二人で、始発が動くのを待っていた。

 彼は、みんなから“キャンディ”と呼ばれていた、当時18歳で……僕の一つ年下だった。


 そのマックのトイレは……出入口が一つ、入ると洗面化粧台があり、中で男女に別れるという造りだった。



 僕が手を洗っていると……


「あのぉ、すみません……」


 最初に声をかけて来たのは……アカネ……17歳。

 いかにも『ヤンキー』という感じで……

 普段から交流のある『メタルねえちゃん』とは、全然違うタイプだった。


 続いて……


「そちらの席へ行ってもいいですかぁ?」


 と……スズカ……同じく17歳。


 続いて、再度アカネから……


「お二人、とってもオシャレですよね~」

「あ……ありがとう」


『オシャレ』……ですか。


 みおさんのお蔭で、すっかりサイゴン・シェイクス大好きになった僕は当時……

 サイゴン・シェイクスをリスペクトしたような格好をしていた。キャンディも同様。


 これっていわゆる『逆ナン』と言うことなのか?


 いわゆる『元ヤン』な彼女はそれまでにもいたけれど……

 『現役さん』は初めてだぞ。


 それにしても……

 二人とも美人で可愛いけれど、残念ながら……はっきり言って、僕の好みのタイプではなかったんだ。

 それ以前に……どう見ても自分より年下と言う段階で、いわゆる『圏外』だったのだが……


 どうしよう・・・?


 とは一考しつつも……女の人にはやっぱり逆らえない僕だった。


「あ、どうぞ……よろしければ……連れも多分OKです」


 その当時の僕は……既にあやさんとは別れて……

 否、正確には……ミサコとの関係をあやさんから誤解されたまま、引っ叩かれて別れを告げられたまま……その誤解を解くことができないまま、あやさんは何処かへ引っ越してしまい……追うことも出来ず仕舞いで……


 結果的に、事実上『独り身』だった。


 故に……始発を待つ間、楽しく過ごせればそれでいい……くらいの気持ちでいたんだ。


 二人を連れて席へ戻り、キャンディにも経緯を話し、彼女たちを紹介した。

 すると……僕の耳元で囁くキャンディ。


「こんな一瞬で二人もゲットって、流石っスね!」

「違~う! 今説明しただろ……向こうから、この席に来たいって言って来たの!」

「それってもっと、流石っス!」


 男同士でコソコソ耳打ちしているのを、アカネに突っ込まれた。


「なんか、企んでんですか~?」


 企んでねぇよ。


 お互いに自己紹介をして……各々の十代を抱えて集まった、早朝の新宿……マックだった。

 集まろうと予定して集まったのでは、勿論なかった。

 ほんの小さな巡り合わせが……『縁』となり……この十代の4人を……出逢わせたのだろう。


 このあと……アカネとスズカが語った、二人の『現状』に対するキャンディの『ご提案』が……

 その後の僕に……トンデモナイ『縁』を齎すことになるとは……

 この時点では、知る由も無かったんだ。

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紅のタトゥー 薄川 零 @reisusukigawa

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