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玄道
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以下の小説は、あるアドレスから複数のメールで送信されてきた小説『割れた水瓶から、血が』の全文です。
タイトルを検索したところ、ネット上でも未発表の作品らしいので、著作権上の問題は無いと考えられます。
また、ルビ・注釈は付けず、原文のまま掲載します。
『割れた水瓶から、血が』
1
※以下は、かつてWeb上に存在した個人HP『あなたにだって居場所はあるはず』に投稿された詩・書き込みのログである。
『blood』by H2O
汚い汚い汚い、血。
僕の血。
手首から流れて
流れ尽くしてしまえ
†††
掲示板ログ
kana 2008/03/12 00:25
H2Oくん、いる?
H2O 2008/03/12 00:27
はい。kanaさん今晩は。
kana 2008/03/12 00:29
今夜も病んでるね、またやった?
kana 2008/03/12 00:42
H2Oくん?
H2O 2008/03/12 00:43
ごめんなさい、しました。
kana 2008/03/12 00:46
辛かったね、周りに誰かいる?
H2O 2008/03/12 00:47
いいえ
kana 2008/03/12 00:52
ごめん、あたしも今日ガッコだから寝ないと。だけど、H2Oくんは一人じゃないよ。また何かあったら書いてね。
H2O 2008/03/12 00:55
すみません、お休みなさい。
kana 2008/03/12 00:57
うん。おやすみ。
†††
『42化生』by H2O
42回おしろいを塗る
42回口紅を直す
42回マニキュアを直す
42回着物を選ぶ
42回携帯をチェックする
42階から飛ぶ
†††
掲示板ログ
kana 2008/03/12 16:12
H2Oくん!?
haiji 2008/03/12 16:18
kana、どうした
kana 2008/03/12 16:20
H2Oくんがいなくて、ヤバイのあげてて
haiji 2008/03/12 16:29
42化生?
kana 2008/03/12 16:31
うん
rika(管理人) 2008/03/12 16:37
すみません、失礼します。rikaです。
H2Oさんは、詩の投稿以降、何も書き込まれていません。
心配です。
†††
※ハンドルネームH2Oは、詩『42化生』投稿後、サイトへのアクセスが途絶えた。
2.Bコレクション
以下は、地方紙のアーカイブを大量に所蔵する、B氏に依頼して入手した記事の抜粋である。
†††
平成二十年三月十三日 築川日報
三月十二日午後二時頃、福岡県福岡市○○のマンションから、男性が飛び下り、病院に搬送された。飛び下りたのは、市内の高校三年生(一八)とみられる。
†††
平成二十年三月十五日 築川日報
福岡市○○の、○○総合病院に入院中の水川朔也さん(十八)が、十四日午後二時頃、病室から突然いなくなり、病院が通報。警察では水川さんの行方を探している。
†††
同日 築川日報
三月十四日午後四時すぎ、福岡市××の交差点で、軽乗用車と歩行者の接触事故が発生した。歩行者はそのまま現場を立ち去り、警察は情報提供を求めている。
†††
平成二十年四月十日 新広島新聞 朝刊
四月九日午後八時すぎ、広島市○○の路上で、市内に住む香取洋一さん(一六)が、何者かに襲われ、所持品と服を奪われた。犯人は逃走中。香取さんは軽傷。警察が強盗傷害事件として、犯人の行方を追っている。
†††
平成二十年六月十三日 東和新聞
六月十二日午後六時頃、神奈川県横須賀市内で、市内に住む三原香里奈さん(一八)が、刃物を持った男に切り付けられた。三原さんは、通りかかった男性に助けを求め、無事。横須賀署は、市内の飲食業・兼田智充容疑者(三八)を銃刀法違反などの現行犯で逮捕した。
†††
三原香里奈は私の姉だ。
かつて、あまり家族仲が良くなかった頃、先に紹介した詩の投稿サイトにのめり込んでいた。
姉は、事件後に「H2O君が助けてくれた」と、私にだけ話した。「彼は死なない」とも。卒業後、姉は結婚し、実家を出た。
3.水瓶文庫
私のH2O氏の消息についての調査は、姉がストーカーに刺殺された事件から始まった。
不死身の守護者などいない。
なら、姉の言うH2Oとは何者なのか。
それで私は、雲を掴むような調査を始めた。
私は、個人で小説を投稿していた『水瓶』という人物に目を付けた。
単純に"H2O=水"、文筆家という発想からだけではない。
生前、姉のスマホに、水瓶氏のページのブックマークを見つけていたからだ。
水瓶氏は、暴力的な小説を数多く発表していた。
以下は、作品の一部のあらすじと、私の感想である。(※著作権の関係上、本文は掲載できなかった)
†††
『夜の時計、L』
(あらすじ)午前三時だけに犯行に及ぶシリアルキラーについての作品。
(感想)最初期の作品で、筆致が荒々しい。
犯人である恒四郎(こうしろう)の動機が幼少期のトラウマなのは、時代的なものか。
『破瓜場.com』
(あらすじ)ポルノサイトに投稿された一枚の写真が、殺人事件に発展するスリラー。
(感想)性描写がきつい。マンディアルグを参考にしたと、コメントにあったが、確かにピエール・マンディアルグの影響を感じる。
『蛆』
(あらすじ)少女が拷問・殺害され腐敗していく様子を記録調で描く。『未成年の閲覧を禁止する』旨の警告文あり。
(感想)ここまで徹底して書く必要があったのかと思われるような描写多数。途中で読むのを諦めそうになった。
†††
私は、水瓶氏に接触を試みた。
水瓶氏は、ページ内に一対一のチャットルームを設けていた。
以下はそのやり取りである。
†††
mana:初めまして。kanaの妹です。
水瓶:初めましてmanaさん。お姉様からはいつもコメントを頂戴しています。
mana:姉の件で、お話があります。
水瓶:伺いましょう。
mana:姉は、先日亡くなりまして。
水瓶:御愁傷様です。
mana:姉は、ストーカーに刺されて亡くなりました。
水瓶:痛ましいことです。
mana:姉から、何か相談されていませんでしたか?
水瓶さんなら、防犯にもお詳しいと思いましたので。
水瓶:いえ。そのようなお話は、何も。
mana:不躾とは思いますが、水瓶さんは昔、別の名義で詩を投稿していませんでしたか?
【水瓶がログアウトしました】
†††
この直後、トップページに以下の文言が掲載された。
†††
暫く作品製作に集中します。チャットや掲示板、メールでのやり取りができなくなりますがご了承ください。
†††
これ以後、水瓶氏の動向は、本当に作品の更新のみとなった。
私の、鎌かけのタイミングが早かったのだろう。
だが、何となくの手応えはあった。
4.事件記事
令和七年九月二十日 新潟合同新聞
九月十九日午前三時、長岡拘置支所で拘留中の、古谷一樹被告(四五)が死亡しているのを刑務官が発見した。古谷被告は、今年五月に発生した殺人事件の公判中だった。
5.それから
姉を殺した男が、拘置所で死亡した。
その後、週刊誌に一本の記事が掲載された。
†††
『Light』2025年11月3日号より抜粋
『拘置所内で猟奇殺人!!?』
新潟県の新潟刑務所長岡拘置支所で、ストーカー殺人の古谷一樹元被告が死亡した事件で、妙な噂がまことしやかに囁かれている。
死亡した元被告は、凄惨な殺人の犠牲になったというのだ。
「骨は出るわ腕は捥がれてるわ、正直人間のできる事じゃないですね」(消息筋)
†††
その間も、水瓶文庫の更新は続いた。
そして先程、水瓶文庫最後の作品が投稿された。
それは、一篇の詩だった。
『42化生』と題したそれは、"42"という数字を使った作品で、水瓶にしてはシンプルなものだった。
恐らく、タイトルの由来は死化粧だ。
その末尾に、作者のコメントがあった。
†††
最後の更新となります。先日のトップページ更新からこれまで、予約投稿機能を使用して作品を発表していました。
それではみなさん、さようなら。
†††
最後の一文に、私は見覚えがあった。
私は、危うくPCを殴り付けそうになった。
「死なねえんだろ、あんたは!! 姉さんと違ってさぁ! 今さら復讐かよふざけんな!」
完
以上が、『割れた水瓶から、血が』の全文です。スパムメールかとも思われましたが、あまりに薄気味悪いので、当該アドレス
aquari_us_0516@×××××.ne.jp
と、『割れた水瓶から、血が』に関する情報を求め、これを投稿します。
では、何卒よろしくお願いいたします。
玄道(gen_do8918)
<了>
情報提供をお願いします。 玄道 @gen-do09
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