第6話 福笑い、世界の再起動

家族で福笑いをする。目隠しで、顔のパーツを置く。

だいたい変になる。鼻が額に行く。口が頬に乗る。

そして笑う。笑いすぎて涙が出る。


祖父が言う。

「正月に笑うのはね、今年一年の“顔”を先に作るんだよ」


子は、へんてこな顔を見て言う。

「これ、僕の今年?」

「そう。大事なのは、上手い顔じゃない。笑って始まることだ」


すると不思議なことに、その後の家の空気が軽くなる。

掃除もはかどる。挨拶が丁寧になる。失敗しても「まあいっか」が言える。


福笑いは、世界の再起動ボタンだ。

一年の最初に、完璧じゃない自分を笑えると、運は粘り強くなる。


最後に祖母が一言。

「縁起ってね、神さまへのゴマすりじゃないの。自分の機嫌を自分で取る技よ」


その日、家の玄関のしめ縄が少しだけ誇らしげに見えた。

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福が渋滞するお正月 縁起短編集 Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter

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