遥か昔にもリア充は存在していた【Maya Estiva氏の作品】


【まず最初に】


 話の進行をする羽鐘司令の言葉は「」、スマホ少尉の言葉は『』で表示します。


 ――――――――――


 第2回

 作戦名 :遥か昔からリア充は存在していた

 支援作品:時駆≪ときかけ≫の邪馬台国~少女王と少年暗殺者、滅亡ルートからのやり直し~

 作品著者:Maya Estiva


 作品支援部隊司令室で、羽鐘は地図とにらめっこしていた。

 目元には優秀な参謀であるローガン卿が、小さな文字を読めない羽鐘のために逐次拡大していく。


『司令、読めもしない地図を広げてどうしたんですか?』

「おいおい、私は地図を見るのが好きだぞ。邪馬台国はどの辺にあったのかなと、考えていたんだよ」

『今回紹介する作品の舞台ですね。学説上、畿内説(奈良県)と九州説(北九州から佐賀辺り)が有力とされていますが、どちらも決定的な根拠に乏しいようです』

「作中に筑紫平原とあるから、この作品では九州説を採用しているな。一応、邪馬台国のことをざっくり説明しておいたほうがいいかな?」

『司令のミジンコ並の知能で説明できるものなら、説明してみてください』

 羽鐘は『そこはスマホの仕事だよ』と喉まで出かかった言葉を、ビンタマシン怖さにぎりぎりで飲み込んだ。


「そもそも邪馬台国は、日本の歴史書ではなく『魏志倭人伝』という中国の書物に残された国の名だ。当時、卑弥呼という女王が統治し、狗奴国との戦いに苦慮していたらしい。この辺は歴史の授業で習うものだな。その後、卑弥呼から男性の王を経て壱与へと国は引き継がれたらしいが、そこからの歴史は不明だ」

『日本初の歴史書である『日本書紀』や『古事記』でも触れられていないようですし、謎の存在ですよね』

「両方の歴史書は、天皇家のルーツを神話として描いたものだが、そこに邪馬台国を含めると矛盾が生じるようだからな。と、ここまで邪馬台国についてざっくり説明したが、重要なのは邪馬台国の結末を誰も知らないということなんだ」

『謎に包まれた存在、ということですね』

「そこで、ようやく今回の作品に触れられるわけだ。主人公は壱与。狗奴国との争いで滅亡の危機に瀕している状況から物語は始まる」

 羽鐘は、我が意を得たりといった感じで指パッチンをした。音は鳴らない。

『司令、作者から『冒頭で邪馬台国を滅ぼしたのは狗奴国ではなく、投馬国と大倭の連合軍』とクレームが入りました。ちゃんとしてください!』

「なんと! すみま……ふべぇ!」

 スマホは、罰則のビンタマシンを起動し、羽鐘の首の骨が折れんばかりの衝撃を与えた。


『その戦闘で、壱与に仕えていたアケビという少女の従士、ヒイラギという美丈夫の剣士、ナシリという壱与の想い人が次々と斃れる光景から始まりましたね』

「絶望的な状況に涙する壱与だが、生前の卑弥呼から伝えられた秘技『時駆』により、時間を巻き戻すことに成功する。まだ邪馬台国を受け継いだばかりの壱与に戻ったわけだ」

『そして、まだ従者となる前のナシリと出会う。運命ですね』

「元々、ナリシ……ふべぇ!」

『作者から『ナリシではなくナシリだ』とクレームがありました』

「先に間違えたのはスマホだろ……。しかも自分の発言はしれっと直してる……。申し訳ない。で、ナシリは狗奴国が放った壱与の暗殺者だったのだが、若い二人は恋に落ちるんだな。運命がそうさせたのか、それともDNAレベルで相性が良かったのかはわからないが、まぁ、仕方ないよな、若いから」

『……司令、どうして拳をそんなに固く握りしめているのですか?』

 スマホの目に、爪が食い込み血を流しそうになっている羽鐘の拳が映る。

 わなわなと震えるそれが伝えるのは、嫉妬の炎か、それとも己のモテなさへの絶望か?

 色々考えたすえ、スマホは『老化』だと判断することにした。


「こうして、ナシリと壱与はリア充になるわけだ。溺れる壱与を助けたついでにキスをするナシリ。腕の中で眠る壱与をそっと抱き締めるナシリ。壱与の懐ならぐっすり寝れちゃうナシリ。羨ましくない。私は羨ましくないが、リア充爆発しないかな?」

『爆発したら物語が終わってしまうので却下です。その代わり、司令が大事にとっておいてある草大福を爆発させておきます』

「やめて、おやつを傷つけないで。さてさて、前置きを長くした理由だが、邪馬台国の結末は誰にもわからない。滅亡したのか、繁栄したのか、歴史の謎だ。であれば、どんな設定を盛り込んでも歴史改ざんにならないのが素晴らしい。ここに目を付けたのは作者の慧眼だな」

『歴史フィクションとはいえ、史実に矛盾する設定は避けたいですからね』

「そのとおり。その点、この物語は矛盾しようがないから好きに歴史を作れる。これは作者としては楽しくて仕方ないだろうし、読んでいる側も楽しめる。なにせ、作品に込められた熱を感じることができるからな」

『その結果、瑞々しく描かれたリア充っぷりを見せつけられて、司令は涙を飲んでいるのですね』

 スマホの言葉に、またも拳を震わせる羽鐘だったが、それをスマホは『寒さ』だと解釈した。


「確かに、ナシリと壱与の心情を描く作者の力量は凄い。女性ならではの女性心理の描写はもちろん、男性目線でみても男心をわかっている描写が多い。おそらく、読者層も男性が多いかもしれんぞ」

『アケビとヒイラギの関係もいいですよね』

「アケビは自然と応援したくなるキャラだ。とてもいい。ヒイラギも、素晴らしいキャラ付けがされていて、とてもいい」

『と、ここまで司令にとってつらい状況が続いてますが、この作品は恋愛小説ではありませんよね?』

「それはそうだ。実際には狗奴国との緊張感のある駆け引きが物語の主軸だ。この中で、壱与は、かつて目の前で失った愛する者たちを助けるために奔走する。幸い、狗奴国の王も、争いは好んでいないのだが、運命はそれを許さない」

『張り巡らされた陰謀も、この物語の注目ポイントですよね』

「しっかり歴史考証されているため、人々の生活や戦闘についても描写にリアリティがある。しかも文章も読みやすく美しいので、物語の質としてとても高い。多くの星をもらえているのも納得なんだ」

『作中で、狗奴国の王が歌った歌詞も美しいものでしたね』

「そうだ。支援したい点が多いこの作品。支援砲の準備はいいか?」

「もちろんです!」



 リア充への複雑な気持ちを堪えつつ、鋼は応援ハートの一斉射撃を令した。

 作品が無事に支援されることを祈りながら。



 作品リンク

 https://kakuyomu.jp/works/822139840168248493


 次回予告

 作戦名 :魔女と光の少年にもリア充の匂いがする

 支援作品:『森の魔女見習いは、光の少年に恋をした』~光と旅し、奪われた光を取り戻す物語~

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次の更新予定

2026年1月11日 20:30
2026年1月13日 20:30

【第二期】羽鐘司令とスマホ少尉 ~読んだ作品を紹介してみよう~ 羽鐘 @STEEL_npl

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