灰の世界に立ち向かう男たちに敬礼を【青羽イオ氏の作品】
【まず最初に】
話の進行をする羽鐘司令の言葉は「」、スマホ少尉の言葉は『』で表示します。
――――――――――
第1回
作戦名 :灰の世界に立ち向かう男たちに敬礼を
支援作品:灰の傭兵と光の園
作品著者:青羽イオ
「さて、我々のホームグラウンドだ。スマホ、気合は入っているか?」
『私は司令と違い、感情によって動きませんから通常どおりです。が、しかし、我が家みたいなものですから、特別には感じます』
「そうだろうな。なにせ、私たちが生まれるきっかけになった作品だ」
『正確には、現在公開中のリブート版ではなく前作となるものですけどね。コメント欄で支援砲を撃ったのが最初でしたね』
「青羽隊長が近況ノートに『応援が兵站になる』的なことを書いていたから、それに合わせた感じのコメントを作ってみたかったんだよ。それが今では、作戦支援部隊として成立しているのだから、人生はわからんな」
『しかし、なぜこの作品に支援砲を撃とうと考えたのですか? きちんとした理由がなければ青羽隊長が送ってきた強化ビンタマシンの餌食にしますからね』
スマホが遠隔操縦で運んできたビンタマシンを見て、羽鐘は思わず唾を飲み込む。
「第一期の最後に、私がカクヨムで尊敬している作家を五人挙げたが、そのうちの一人が青羽隊長だ。文学的表現の文章に打ちのめされてファンになったのだが、その人が硬派なSFロボ小説を書くのいうのだから、注目せざるを得ないだろう」
『それだけですか? ビンタマシン起動しますよ』
「いやいやちょっと待て、そんな単純な理由で応援していないよ。ちょっと箇条書きにするから待ってて」
ビンタマシンが動くたびにブンと空気を切り裂く音が聞こえてきて、羽鐘はすっかり気圧されている。
震える手で、なんとかメモ用紙に応援する理由をしたためた。
・重厚な世界観
・練り込まれた設定
・群像劇と子どもたちとの温かい交流の落差
・RF(ロボット)のカッコよさ
・伝わる音と匂い
『私としても納得できる理由ではありますが、説明してもらえますか?』
「まず、世界観だけど、約三十年前に起きたとされる、レゾナンスシティでの事故をきっかけに、この世界は灰に覆われるようになったんだ。そして、ミュータントが出現し、人々は生活圏を失っていく。これが基本設定だな?」
『そのとおりですね。そして灰の世界で生き抜くため人々はRFを作り、生きるための道となる白帯を築く。前作では、この白帯を傭兵たちが如何にして守っていくかに主眼が置かれていましたね』
「そうだな。灰の世界については色々とまだ謎が多いし、触れられてきた歴史も多岐に渡る。掘っても掘っても底にたどり着かない深さが、この作品の魅力だ」
羽鐘はフンと鼻を鳴らす。鼻毛が揺れてくしゃみをしてしまう。
飛んでいく飛沫の汚さにスマホの顔が歪む。
『その世界観を活かすための設定がしっかり練られていますよね。灰の世界の謎、ミュータント、RF,企業の思惑、傭兵たちの行動理念や葛藤。登場キャラクターは多いのに、どれも物語にすんなり溶け込んでいますよね』
「それが設定の妙技だ。私はこの作品の二次創作を二本書いているが、既存の設定に少しだけ手を加えてもびくともしないほど深く練り込まれているから、読者としては信頼できるんだ。外しがないな……と」
『物語を彩るキャラたちも、本当に魅力的です。主人公のアキヒト、アキヒトが所属する傭兵部隊VOLKの傭兵たち、母艦であるグレイランスのクルーたちは、厳しい現実のなかでも明るく、力強く、たまには毒を吐きながらも戦う姿を見せますよね』
「私の推しのゴーシュも良い味を出している。そして、グレイランスに保護されている『光の園』の子どもたちと保護者となるサキ。この存在こそが、この物語に深みを与えている。ただの群像劇だけでは読んでいて疲れることもあるが、子どもたちとサキは、傭兵たちと読者にとって癒しなんだよ。おそらく、青羽隊長にとってもな」
羽鐘はモニターに、子どもたちの愛らしい姿を描写したシーンを映し、笑顔を浮かべた。
スマホは、暗闇に気持ち悪く浮かぶ羽鐘の顔を撮影し、心霊写真として投稿した。
すぐさま拡散され、羽鐘の顔は、SNSで『キモい』と評判になった。
『そして、なんといってもRFです。どれもカッコよく描かれていますね。そして、擬音などの直接的な表現はないものの、映像として動きを描写しているので、読者には音と匂いも伝わってきますね』
「ロボットものでもっとも気を配る必要があるのは、カッコよさだ。ヘンテコなロボットで戦っても興味はないからな。しかし、灰の傭兵に出てくるRFはどれもカッコいい。元々、青羽隊長は映像を描写する力に長けているから、カッコよさに拍車がかかっている。どうだ? 私が推す理由がわかっただろ?」
『確かに理解しました。私も読んでいるので大いに納得できるところです……』
スマホが悔しそうにビンタマシンを片付けたので、羽鐘は胸を撫でおろした。
『では最後に、現行版と前作との違いを教えてください。ストーリー展開は大きく変わっていますが、リブート版が正史であると考えれば、ストーリーの変更は重要じゃないでしょう。それ以外で何かありますか?』
「個人的には、覚悟だと思っている」
『おっと、よくわからないことを言いますね。ビンタマシンの出番ですか?』
「それ、使いたいだけでしょ? 現在連載されているものは、世界観がより鮮明になっている。さらに、戦術顧問を付けたことにより、より戦闘の説得力が増している。ストーリーも前作の前日譚的な立ち位置となっているが、スマホの言う通り、重要な点ではない。私が言う覚悟というのは、青羽隊長の心境のことだ」
『青羽隊長の何がわかるのですか? ストーカーですか?』
「違うから。描写一つ、物語の説得力一つ、キャラクターの心情一つ、スムースでありながらも、どれを取っても丁寧になっている。それは何故か? 前作も大変素晴らしい作品だったが、おそらく青羽隊長には焦りに似たものがあったはずだ。終わらせた後で残ったのは、満足感ではなく、悔いに似たものではないかと思う。だからこそ今回は焦りを捨て、腰を据えて新たに描き直していると思う」
『焦らずに向き合う覚悟、ですか』
「もちろん、これは私の勝手な思い込みだけど、そう感じるんだ。死の描写、読者の反応、描きたいもの、ぶれずに大事にしたいもの。覚悟を決めたからこそ、真っ正面から描く。そんな感じがひしひしと伝わるのだよ、現在の灰の傭兵からは。だから私は、応援するんだ。覚悟を決めた者を応援しないわけにはいかないじゃないか」
『司令の言うことが本当かどうか、これからも見守りましょう。支援砲準備よし!』
「よし、撃て! と言いたいところだが、なぜビンタマシンまで準備できてるの?」
『発射!』
スマホは、自分の生まれ故郷たる作品を支援するため、応援ハートの一斉射撃を実施した。
支援砲が無事に作者に届き、羽鐘の頬がバンバンに腫れることを祈りながら。
作品リンク
https://kakuyomu.jp/works/822139840392255235
次回予告
作戦名 :遥か昔からリア充は存在していた
支援作品:時駆≪ときかけ≫の邪馬台国~少女王と少年暗殺者、滅亡ルートからのやり直し~
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