chapter05
探索を始めて三十分ほど。
すでにモンスターとの遭遇は果たしていた。
しかしながら、最低ランクのダンジョンなだけあって、出会うモンスターは全て小物ばかり。
人を警戒しているのか、僕の姿を見ると逃げていくのだ。
モンスターと一口に言っても、種類は様々だ。
凶暴な奴もいれば、大人しい気弱な奴もいる。
ここにいるのは、後者ばかりらしい。
まいったな、これじゃあとても僕を殺してくれそうにない。
違う意味でダンジョンを嘗めていた。
ダンジョンから産出されるお宝と呼ばれる物の大半は、モンスターの素材だ。
時には貴金属や宝石が見付かることもあるらしいのだが、そんな物が見付かるのは稀。
何故なら、この五十年で粗方掘り尽くされてしまったからだ。
それこそ、人が立ち入っていない区域にでもいかなければ、そんな物には出会えない。
しかし人が立ち入っていない区域とは即ち超危険区域である。
そこまでの危険を犯してまで、貴金属や宝石を狙う者は少ないだろう。
モンスターの素材だけで十分な収入になるからだ。
その他の植物も金にはなるが、モンスター素材と比べれば微々たるものらしい。
それ故に多くの探索者は倒したモンスターの素材を売ることで生計を立てているのだが、これだけ逃げ足が速いと倒すのは困難だろう。
そして仮に倒せたとしても、ここのモンスターでは二束三文の価値しかない。
人気がない理由がよく分かる。
場所を間違えたか。
とは言え、僕のライセンスで入れる場所はどこも同じようなものだろう。
「誰でも……誰でもいいから……僕を殺してくれ……」
餓死だけはごめんだ。
しかし、そんな僕の願いも虚しくそこから更に一時間が過ぎた。
「もうダメだ……」
デブの僕では、これ以上歩けん。
これでも頑張った方だ。
膝が痛い。
僕は持っていたペットボトルの水を呷り、息を吐き出した。
このままだと、本当に餓死になりかねない。
デブにとって、餓死ほど辛い死に方はない。
一度出直そうかとも思ったが、もう帰り道が分からなかった。
普通の探索者はマップを購入したりして迷わないように対策するのだが、帰るつもりの無い僕にそんな用意はない。
だから、突き進むしかないのだ。
「しかし広いな」
どれだけ歩いても森の終わりが見えない。
一体どこまで続いているのか。
そして僕以外の探索者は誰もいない。
余程人気がないのだろう。
そんな時だった。
僕は視界にあるものを捉える。
「あれは……」
鳥居……か?
神社を彷彿とさせる赤い鳥居。
それが地面から浮かび上がるように、木々の隙間に佇んでいた。
どうしてこんな所に鳥居が……?
明らかに場違いだ。
しかし、ダンジョンの入り口も鳥居を彷彿とさせた。
全くの無関係というわけではなさそうな気がする。
そう思いながら、僕は鳥居に近付いた。
「小さいな……」
見た目に変わった様子はないが、とにかく小さい。
子供はともかく、大人が通るには厳しそうだ。
身を屈めてどうにかといった所だろうか。
デブな僕ではつっかえてしまいそうだ。
「まぁ、通ったからってどうということはないんだろうけど」
これがダンジョンじゃなければ特に気にしなかっただろう。
しかし、ここは謎多き未知の領域。
もしかしたら何かがあるのかも知れない。
そう思いながら、恐る恐る鳥居の間に手を入れてみると──。
「うおっ……!」
僕は鳥居から慌てて手を引き抜いた。
鳥居を潜らせた手が消えたのだ。
しかし、引き抜いた手は無事。
特に痛みもない。
「なんなんだよ、これ……」
流石ダンジョンだ。
本当に、意味が分からない。
次の更新予定
不完全者達の悠久論──空白のダンジョンで僕は── 白黒めんま @ren0218
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。不完全者達の悠久論──空白のダンジョンで僕は──の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます