chapter04

 ダンジョンに入る為には、ライセンスが必要になる。

 所謂、探索者資格という奴だ。


 満十六歳以上でなければ取得できない国家資格。


 国家資格と聞くといささか大仰に聞こえるが、下級ライセンスであれば取得は難しくない。

 簡単な試験と講習を受けるだけで発行される。


 それこそ、僕のような人間でも取得できるのだ。


 世の中、何が必要になるか分からないからと、ダンジョンには縁がないだろうと思いつつも、念のため取得しておいた。


 まさか、自殺をするために使うことになるとは思わなかったが。


 しかし、簡単に取得できるのはあくまでも下級ライセンスのみ。

 最上級ライセンスと呼ばれるS級探索者資格の合格率は一パーセント未満という超難関だ。


 司法試験に合格する方が余程簡単だと言われている。

 国内でも持っているのは数人らしい。


 神に選ばれたスーパーエリートというわけだ。

 僕程度の人間では、中級ライセンスであるD級探索者資格でさえも取得するのは困難だろう。


 最低ランクのダンジョンを選んだのも、そもそもG級以上のダンジョンには、僕のライセンスでは入れないからだ。


 財布に入れておいたライセンスカードをかざすと、自動ドアが静かに開く。

 ダンジョンへと繋がるゲートがあるのはこの先だ。


 ゴクリと息をのみ、僕はドアを潜る。


 そこにあったのは、一つの門だった。



「これが、ダンジョンゲート……」



 資格取得の際、資料で見たことはあったが、実物は初めて見た。

 写真では感じられない異質な雰囲気を纏っている。


 小部屋の中に、まるで世界から取り残されてしまったかのように置かれた緑色の門。

 門というか、造り的には神社にある鳥居に似ているという印象を受けた。


 鳥居に扉がついているような、外では見かけない変わった造りだ。


 この先に、ダンジョンがある。


 恐る恐る扉に触れた手は、ひどく震えていた。

 情けない。ことここに至っても、僕はまだ怖気付いているのだ。


 いっそ止めてしまおうか。

 今ならまだ、引き返せる。


 よぎる言葉を振り払うようにかぶりを振って、扉を勢いよく開く。



「──……これは……」



 気が付くと、目の前には鬱蒼とした森が広がっていた。



「ここがダンジョン……」



 僕は屋内にいたはずだ。

 しかしそこには澄み渡る空があり、燦々と輝く太陽があった。


 なるほど。異次元に繋がっていると言われるのも納得だ。

 空も太陽も、そしてこの森も全て本物に見える。

 偽物だとは到底思えない。


 背後には、今しがた通って来た扉がある。

 扉だけが静かに佇んでいる。

 反対側に回り込んでみると、当然の様に森が続いていた。


 だが開いてみると、そこには先程までいた小部屋が確かにあるのだ。

 何とも不思議な光景だった。


 どうなっているのか全く理解できない。


 さりとてそれがダンジョンというものなのだろう。

 僕如きが考えたところで無駄だ。



「さて、とりあえず適当にぶらついてみるかな」



 アテなんてない。

 ただ死ねればそれでいい。


 しかし行き着く先がせめて天国であることを願いながら──僕のダンジョン探索が始まった。


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