赤い風船🎈 時を超えて届いた想い

~二十年後~

 俺は冷志と沙理奈のお墓参りに来た。冷志、沙理奈、二人の葬儀には参加できなかったから俺は毎年一度、二人の墓参りに来るようにしている。二人のお墓は同じ場所に立てられた。その方がお互いさみしい想いをしなくてすむと二人の家族が考えたからだ。不思議なことに二人が亡くなってから俺の人生は大きな壁にぶつかることもなく順調に進んだ。修行も褒められることばかりではなかったが、無事終了することが出来た。日本に戻って来てから自分のお店「ルージュ」をオープンすることが出来た。ミシュランからも認められ、二ツ星を取ることができ、メディアでも三ツ星取得も秒読みと紹介された。有り難いことにお客さんも沢山訪れてくれる。上手く行き過ぎだと自分でも思う。まるで二人が俺のことを守ってくれているようだった。でも、大切な友達を二人同時になくして一緒に喜んでくれる人がいなくなってしまった。嬉しいことが続いても俺の心には二十年経った今でもポッカリ穴が空いている。あれからちゃんと笑った記憶がない。二人のお墓の前に行き俺は二人のお墓に花と線香を供えた。

 伊「冷志、沙理奈、今年はミシュラン三ツ星取れるように頑張るよ。それにしても、二人揃って俺のこと守ってくれなくてもいいんだぞ。俺は一人で大丈夫だから。それじゃ、また来るよ」

俺は二人のお墓を後にした。

 ある日お店の電話が鳴った。予約の電話だった。

 伊「もしもし、フランスレストランルージュです。ご用件はなんでしょう?」

 男「すいません、スペシャルメニューの予約をしたいんですが可能でしょうか?」

うちのお店では嬉しいことがあった人やサプライズをしたい人用にスペシャルメニューを出している。

 伊「何かおめでたいことがありましたか?」

 男「実は彼女にプロポーズしたくて、サプライズをしてあげたいんです」

 伊「分かりました、ご来店の希望日はございますか?」

 男「来週彼女の誕生日なのでその日にお願いします」

 伊「承りました。ご来店お待ちしております」

一週間後、予約のカップルがお店に来店した。ウェイターが席まで案内する。俺はキッチンにいるので顔が見えなかったが、声を聞いた所二十代位だろうと思った。俺はスペシャルメニューの料理を作り、従業員にどんどん運ばせる。美味しい料理を作り提供する。それが俺の仕事だからだ。二人は楽しく会話をしているようだった。

 女「こんなお店良く予約出来たね。しかも美味しい料理ばっかり。高かったんじゃない?」

 男「大切な彼女の誕生日だからね。奮発しちゃった」

 女「その上プレゼントまで用意してくれて本当にありがとう」

 男「実はもう一つプレゼントがあるんだ」

 女「え?なになに?」

男は小さな箱を取り出し、想いを語り出した。

 男「私はあなたの隣にいられて本当に良かったと思っています。あなたがいるから頑張れるし、あなたがいるからどんなことも乗り越えられます。私はこれからもあなたの隣にいたいし、ずっと隣にいて欲しいと思ってます。ダメな所も沢山ありますが、私と結婚して下さい。お願いします」

 女「嬉しい。私もあなたの隣にずっといたいです。宜しくお願いします」

男は女に婚約指輪をつけた。サプライズは大成功だった。俺はサプライズ成功と彼女の誕生日、二つの想いが詰まったケーキを席まで運んだ。

 伊「おめでとうございます。え………」

カップルの顔を見て俺は言葉を失った。二人の顔は冷志と沙理奈に瓜二つだった。あまりの驚きに俺はしばらく黙ってしまった。

 男「あの、どうかしましたか?」

 伊「いえ、すいません。あなた達二人が昔亡くなった親友に似ていたものですからつい。すいません」

二人は不思議そうな顔で顔を見合わせて笑った。

 女「料理凄く美味しかったです。私ここのお店凄く気に入りました」

 男「シェフの亡くなったご友人と俺たちが似てるのは何かの縁かもしれませんね。結婚記念日はここのお店に来てもいいですか?」

 伊「はい、お待ちしております。二人の顔を見てると友人達のことを思い出せるので記念日だけとは言わず、いつでもいらして下さい」

 男「今日はありがとうございました。美味しかったです。」

 伊「ありがとうございました」

深く頭を下げて二人を見送った。二人は手を繋いで帰っていった。外は満点の星空だった。俺は夜空に向かって語りかけた。

 伊「やっと想いが届いたんだな。良かったな冷志、大好きな人と決して切れない繋がりを結べて。幸せになるんだぞ」

そして時は流れ、協会の鐘が鳴り響いた。協会から大空へ幸せが詰まった沢山の赤い風船が飛んでいった。


                   fin

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