赤い風船で届けるはずだった想い
冷志の訃報を聞いてから体調が一気に悪くなった。薬の効果も薄れて体中が痛くてベッドに寝たきり状態だった。ご飯も喉を通らないから体力もどんどん低下していく。もう気力も体力もなくなっていた。冷志を跳ねた運転手も街灯に衝突し命を落とした。居眠り運転だった。その人の職場のタイムスケジュールを調べたところ月の残業時間を大幅に越えていた。結局誰を恨めばいいのかも分からなくなってしまった。願いを叶えてくれたお礼も言えず、私より先に旅立ってしまった。こんなことになるなんて思いもしなかった。もう誰にも会いたくない。私は布団の中に潜り込んだ。すると母親から声をかけられた。
森母「沙理奈、あなたに会いたいって人がいらしてるわ」
森「もう誰にも会いたくない。帰ってもらって。私に構わないで」
森母「冷志くんのお母さんよ」
森「冷志の?」
そう言って私は布団をどかした。そこには冷志のお母さんが立っていた。
冷母「あなたが沙理奈さんね。会えて嬉しいわ。実はあの子があなたに残した手紙があるの。読んでくれる?」
私は冷志のお母さんから手紙を受け取った。間違いなく冷志の字だった。
冷母「あなたが亡くなった後のことを考えて書いたみたい。それはあなたが持っていて」
冷志のお母さんは深く頭を下げると病室から出ていった。私のお母さんも見送るために一緒に出ていった。私は渡された手紙を読み始めた。
沙理奈へ
これを読んでいるということは、あなたは天国に旅立ってしまったということでしょう。あなたには伝えられなかったことがあるので手紙に書いて伝えます。まず一つ目に沢山迷惑をかけて、色々不甲斐な思いをさせてすいませんでした。あなたのことが好きだからと自分の想いを押し付けてあなたの気持ちを見ようともしなかった。好きでもない人に言い寄られて嫌な気持ちになったと思います。本当にごめんなさい。二つ目にりんたろうのことを天国から見守ってやって下さい。あいつは強がりで意地っ張りな石頭の分からず屋です。だけど誰よりも繊細で優しい奴です。高校の頃あなたに告白できたのはりんたろうが力を貸してくれたからです。あいつのおかげで私はあなたに想いを伝えることが出来ました。これから自分のお店を開くまで険しく長い道を歩いて行くことになると思います。どうかりんたろうを守ってやって下さい。最後に私は今でもあなたのことを想っています。でも今世ではこの想いが届くことはありませんでした。来世ではもっと格好良くて、もっと運動が出来て、もっと頭が良くて、もっと人の気持ちに寄り添える人に生まれ変われるように閻魔様にお願いします。だから、生まれ変わってもまた私の前に現れてください。そしたらその時は、私と一緒に生きてください。私が死ぬまでは生まれ変わらないで下さいね。天国で少しの間だけ待っていてください。この手紙を赤い風船に結んで天国に届けます。天国から赤い風船が見えたら、絶対に受け取って下さいね。それじゃあ、生まれ変わってまた会いましょうね。
縦山冷志より
涙が止まらなかった。わたしのことをこんなに想ってくれる人はいなかった。私に二回振られても、私がりんたろうに会いたいって言っても、それでも冷志は私のことを想ってくれていた。ずっとずっと私のことを好きでいてくれた。こんなに一途に想ってもらったのは初めてだった。他の誰でもない私のことを想ってくれて嬉しかった。私の為にここまでできる人はいない。私は素敵な人に想われていたんだとこの手紙で知ることが出来た。涙と一緒に感謝の気持ちが溢れてくる。布団が濡れるほど私は泣き続けた。そして私は手紙にお礼を言った。
森「ありがとう…冷志。私のことをずっとずっと好きでいてくれて。絶対に、また会おうね…」
その一ヶ月後、沙理奈は息を引き取った。まるで冷志の後を追うかのように。沙理奈の手には冷志が肌身離さず着けていたドックタグが握られていたらしい…
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