第10話 ショタ属性の大魔王と怖いもの知らずの狂戦士
メイドに案内されたのは、この広い城の中でも最も広い謁見の間。
大きな玉座に不似合いの、水鏡で見た銀髪の少年がそこで不満そうに頬杖をついていた。
「かっ――」
挨拶をしようと一歩前に出た俺よりも先にリリアが声を上げる。
「可愛い可愛い可愛い! なんて可愛いの‼」
おい。
相手はこの世界のではないが、王だぞ。
その態度はかーなーりー失礼に当たるぞ……?
「お、おいリリア‼」
片手を斜めに突き出して制止するも、お構いなしにずんずん玉座の大魔王へと突き進むリリア。
「ほんっとうに可愛いですぅ、食べちゃいたいくらい」
壁ドンならぬ王座ドン? を決めさらには顎クイまで。
――終わったわ、俺もこの国も。ついでに多分世界も。
この後大魔王が激怒してまずリリアを、次いで俺を瞬殺。
その後人間は無礼だ、失礼だと国中を血の海で染め、更には国外へと向いていく……そんな未来が容易に想像できる。
真っ青な顔で、俺はどうする事も出来ず玉座の前で立ち尽くして審判の時を待つ。
「ふむ、余もそなたのような強く度胸のあるレディは好きであるぞ」
明らかに美声、声変わりもしていない少年声が自分を『余』と指し示すのは聞きなれていないせいか妙に違和感がある。
いや、俺が美少年=貴族の玩具という図式に拘り過ぎているだけだろうか?
「ふふ、まさか
歓迎だって?
いや無礼な事しかしてなくないか?
「なぁそこの貴族よ。この国の王がこれほど余を待たせたのは魔界の作法についてよくよく勉強し失礼の無いようにと慎重に慎重を重ねた結果であろう?」
美少年は不敵な笑みを浮かべ、宝石のような赤い両目で俺を見つめる。
「え、はい、いやまぁ――なんと言いますか……」
正直、面と向かって話しかけられてもそのフレンドリーさに慣れる事は出来ない。
魔法使いと対面した時、恐らく溢れる魔力のせいだろうが胸の奥がざわざわする感覚を覚えるのだけど、そのざわつきが普通の魔法使いの時と比べて格段に強い。
魔王の上に大の字が付く存在が人間の魔法使い等取るに足らない存在なのだと体感してしまった俺はこのように受け答えすらしどろもどろになってしまう。
もちろん、質問に対しての答えなど持ち合わせていないので返答に詰まっているというのもあるが。
「ふふ、よいよい。水鏡が余を映し出した時に全て察しておる。今のは余が悪かった。ちと悪戯が過ぎたようだの」
リリアを隣に座らせ、頭をわしゃわしゃさせながら種明かしをする大魔王。
「アレを見られていたのですか……」
まぁアホ貴族共が机の下でナニをしていたかまでは見られていまい。
「魔術で余を出し抜こうなど無理な話なのでな」
そりゃそうだ。
「だが、何故余が映し出されたのかは分からぬ。おおよそその件でここに来たのであろうが。さっそくだが、話してはもらえぬかの?」
リリアに頭を抱きしめられながらも全く動じる様子を見せず、淡々とこちらの用件を見抜く大魔王。
何をされても動じないのは慣れているからか、それとも大魔王としての威厳か。
そして俺はこの時点で一つ、確信した事がある。
この大魔王という人物、話の出来る相手だ。魔物や妖魔のような言葉の通じない相手でも、アズミヤ王国の政治を司る貴族共のような他者の話を理解しない無能どもとも違う。
意思疎通ができるのなら――。
「失礼ながら、大魔王は勇者という存在をご存じでしょうか?」
「勇者だと? 知っているとも。かつて我々の中でも飛び切りの馬鹿が挑み、敗北した人間の英雄であろうよ」
昔々の、後の人々がその功績を称え、感謝と敬意を込めた称号としての勇者は確かにそうだけど、そんな勇者は、何千年も前のまさに伝説の存在。
今の勇者は国難だとかの解決に最適な人物を選出し、先んじて勇者と名乗らせているのが通例で、伝説オタクの俺としては全くの別物だと認識している。
「それは随分と大昔の話でございます大魔王。今の勇者とは国などが存続の危機に陥った際、それを救う力を持つ者にございます」
「ふぅむ、時代と共に定義は変わるモノという事か。して、その勇者がどうしたのだ?」
その質問を待っていた。
「大魔王が王国の水鏡に映し出された件、あれこそが――」
垂れていた頭を上げ、正面から大魔王に視線を送って、俺ははっきりと次の言葉を口にする。
「勇者選定の儀、つまり大魔王こそが次の勇者と認められたのです」
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勇者になりたい俺と、勇者に選定された大魔王 紅玉 @KTpresents
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